見上げるようなビルはなく、周囲を走る車の音も聞こえず、街灯も水道もないけれど、何もないこの広場には、音楽があった。
抜けるような青空には飛行機が飛び交い、対岸には東京の都心部のパノラマが広がる、 “東京都名無し区” 。まだ住所も決まっていない東京の開発地で開かれた初めてのイベント。「TOKYO ISLAND」と名付けられたフリー音楽フェスの、第0回に参加してきました。
住所のない東京都・開発中の埋立地にて
イベントが開催されたのは、東京港の中心・中央防波堤内側埋立地の「海の森公園」予定地。昭和後期に埋め立てられた1000万トンものゴミの上に立地し、2007年から30年をかけて完成させる計画の公園だそうな。2020年東京オリンピックの競技会場としても利用予定*1。
お台場の目と鼻の先にありながら、いまだ住所も決まっていない、だだっ広い空間。たまたまネット上でその存在を知り、調べていくうちに目に留まったのが本イベント「TOKYO ISLAND」でした。
企画したのは、ロック観光協会株式会社と株式会社ディスクガレージ。入場無料の音楽フェスとして、同公園で開催される初のイベントとなったそうです。
イベント内のトークタイムで主催者さんたちが話していたことによれば、
- 東京に新しい遊び場を作りたい
- 音楽に限らない、カルチャーフェスの開催・発信地としたい
- 来年以降、万単位のイベントを開催するための第一歩としてフリーにした
という思いから始まったという本企画。音楽を楽しんでいる人はもちろんのこと、対岸に見える東京の風景を写真に収めている人なども多く、意外に広い層を集めていたような実感を受けました。僕自身、知っているアーティストは2組だけ、「無料」に釣られて訪れたくらいなので。
実際問題、本当は目的のアーティストの演奏を聴いて、周辺の写真を撮影したらパパっと退散する予定だったんですよ。なのに結局、最後まで残ってしまうくらいには楽しかったという。
ステージ前でヒャッハーせずとも、ちょっと離れた場所に座り込んでまったりと聞くだけでも大満足。涼しげな海風を感じながらビールを一杯、しかもバックには生演奏……最高の休日じゃないですか! うっほー!
最後にトリとして叫びまくっていた、神聖かまってちゃんをはじめ、主催者さんも他のアーティストさんたちも「来年もやるぞー!」と意気込んでいたので、早くも次回が楽しみなイベント。ボランティアか何かの形でも、協力できたらいいな。
海の森公園(建設中)に、青空と苗木と飛行機と
左手にパレットタウン、右手に東京ビッグサイト。こちらはお台場・ゆりかもめの青海駅前でござる。さすが祝日だけあって、パレットタウン内は混雑しておりました。
イベント会場の海の森公園までは、駅前のシャトルバスで向かいます。「無料」と謳ってはいるものの、実際はバスの往復料金として1,000円が必要。それでも超格安。だって、普段は立ち入り禁止の空間に入れるわけですしおすし。
ほとんど大型トラックしか走っていない、海を渡るトンネルを抜け、どこもゲートが閉じられている関係施設の隙間を縫うように進み、明らかに手付かずの雑草が脇でぼーぼーに生えまくっている砂利道を抜け、「はい、着きましたよ〜」と運転手さんに送られて外に出たら、これ。
……なんかもう、 “広場” としか形容できない、だだっ広い空間。
右手に目を移せば、植林されたばかりの苗木がポツポツ立っている先に、お台場と都心のビル群が辛うじて見える。
……なんかアレだ。アニメか何かで、「現世」と「異世界」を分かつちょうど境界部分から見慣れた街を幻視しているような感じ。なにこれこわい。
しばらく歩くと、人がたくさんいる空間にたどり着いて、ホッと安心。
こちらには露店とトイレ、休憩スペースが集中しており、ライブ会場はちょっとした丘を上に行ったところにあるらしい。露店は、ビフテキ丼、ケバブ、オムライスなど、意外と種類がありました。
会場方面。
ちょっとした坂道程度ですが車は奥まで入れないため、資材搬入の際にはすべて人力で持っていった……なんて苦労話もトークタイムで出ておりました。主催者さん曰く「ゴルゴダの丘」。
足元にピンピンと突っ立っているのは、先程も見かけた苗木。
これが30年も経てば育って、どのように風景が変わるのか楽しみでもある。……そう考えると、ちょっと特別なイベントに参加しているような気分にもなりますね。
会場に到着。
右手の小さなテントがDJステージ。中央の大きなほうがライブステージ。この写真では見えませんが、左手にはレジャーシートOKのゾーンがあり、早くも大勢の音楽ファンが酒盛りをしているようでした。まざりたい。
ステージ近くまで行くとこんな感じ。
こーんな広々とした空間で、東京のビル群を背景に音楽を聞くって、なんかそれこそ “異世界” な感じがすごい。空は驚くほどに青く、無意識に何度も見上げてしまうくらいだけれど、それ以上にあづい。
会場部分から見たお台場方面の景色と、露店方面。
海の手前にちょろっとゴミ山が写っているのが、何とも言えぬリアリティを醸し出していると言いますか。露店のほうで左手に見える大きな橋は、東京ゲートブリッジ。2012年開通。
それにしても、この空の青さっすよ。気温が高いとはいえ海風が感じられるので、建物に囲まれた某ビッグサイトの某コミックマーケットの待機列よりは全然マシでござる。
そして、上空をたびたび通過する飛行機の近さに驚く。どのくらい近いかと言えば、前情報なしで、ポケモンジェットに描かれているポケモンを肉眼で確認できるくらい。
夕方近くになると都心方面には雲が出てきて、かなり涼しく過ごしやすい空気に。空の色の変化を眺めているだけでも時間を潰せそう……。
ステージの右手と左手、どちらから撮影するかによって、こうも写真の色合いが変わる時間帯。「青」が徐々に「橙」に染め上げられていく途中の、中間色っぽい感じが素敵。
最後の演奏と主催者さんの挨拶が終わり、バス乗り場に引き上げる途中。「ここから見る夜景はマジパねえ」というお話でしたが、今回は叶わず。
まだまだ根付く途中の苗木と、夕焼け。来年またここを通ったら、ちょっとは大きくなっているのかしら。タイミングが合えば、次回も参加したいですね。