無職説明会で目にした“オンリーワン”であることの意味


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2014年 無職説明会~むしょくだっていいじゃないか にんげんだもの~

 

 阿佐ヶ谷ロフトAで開催された、無職説明会に行ってきました。好評だった昨年に続く、2回目の開催になるらしいです。無職デビューした身としては、参加しない手はないかと。いやはや、ひっじょーにぐだぐだかつゆるゆるとした進行で、とんでもなかったですね!(褒め言葉)

 

(前回→「無職は夢職」 活況の「無職説明会」ルポ :日本経済新聞

 

 そこで交わされた、本当にどうしようもないやり取りや、笑いどころなどは他の方が詳細なレポートを書かれるんじゃないでしょうか。ちらほらとメモってる人もいたし。なので、僕はその辺の見どころはスルーして、考えたことをてけとーにつらつらとまとめてみようと思います。

 

 

〈無職〉と〈フリーランス〉の境界

 イベントの序盤では、〈無職〉〈フリーランス〉の定義と違いについて、それとなーく話題になっていました。それとなーく。曰く、次のような差別化ができるんじゃないかと。

 

  • 〈無職〉:毎月、安定して得られる収入がない&どこにも所属していない
  • 〈フリーランス〉:労働に対して対価を得ることのできる人
  • 〈生活保護受給者〉:国を顧客としたフリーランス

 

 こうして見ると、無職とフリーランスは紙一重のような気もするけれど。とは言え、誰がどう見ても金銭的に不安定な状態である無職と比べれば、ある程度の技術を有し、それを行使することで換金できるフリーランスは、「安定している」と言っても差し支えはなさそう。あくまで、「ノージョブです(キリッ」な人と比較すれば。

 

 出演者の大川竜弥*1さん(フリー素材の人。イケメン)と、黒田勇樹*2さん(ハイパーメディアフリーター。ニーサン)が〈無職〉である所以は、その活動が世間一般に認知されている「プロ」のものではなく、不安定なものであるため、と理解したのだけれど、合ってるのかな?いや、お二方、いろいろな意味で「プロ」なんでしょうけれど、とりあえず。

 

 言うなれば、話の中で「3大無職あるある」として挙げられていた、〈役者〉〈絵描き〉〈バンドマン〉の範疇である、と。プロならば高収入、その肩書きも名誉なものとなるけれど、それまでは稼ぎも中途半端で微妙な立ち位置。暮らしていくには、別の場所からの収入――バイトなど――が必要となってくるもの。

 

 そういう意味では今回、登壇していた4人の出演者さんはみなさん、言わば〈プロ無職〉と呼べるような存在なのかもしれない。定職はないが、自分の能力を活かせる場所を探して、収入を得る。……と考えると、あれ?やっぱりフリーター?って思わなくもないけれど、まあこまけぇこたぁいいんだよ!たぶん!

 

“オンリーワン”であり続けること

 此度の出演者のみなさん。何の下調べもせずに行ったこともあり、ぶっちゃけ僕は大川さんくらいしか知りませんでした。お話を聞いているうちに、黒田さんはなんかすげえ人(語彙貧)だと分かり、岡田紘樹*3さんはヤフオクの人だと理解し、シマヅ*4さんはとんでもなくやべえ人(褒め言葉)として認識しました。なにこれこわい。

 

 で、そんなみなさんが、〈無職〉としてお話をされていたわけですが、言うまでもなく、全員が全員、ものっそいスペックの持ち主なんですよね。

 

  • 岡田紘樹さん:学生&会社員時代に鍛えた企画力と行動力
  • 大川竜弥さん:フリー素材としての知名度、文章力とトーク力
  • 黒田勇樹さん:なんかいろいろ規格外
  • シマヅさん:ソーシャルビッチ

 

 大川さんが、「セルフブランディングとか、自己啓発っぽいのはクソだと思ってる」的なことを仰っていたけれど、僕から見れば、出演者のみなさんがみなさん、意識するまでもなく自然と自分をメディア化、プロモーションしている方であるとしか思えなかった。

 それゆえの〈プロ無職〉であり、自分だけの強みを持っている。言い換えれば、常に他とは異なる、“オンリーワン”であり続けている。そんな彼らでも「金がねえ!」と言っているくらいなのだから、〈無職〉がどれだけしんどいものなのか、と。そう考えると、確かに〈無職〉のヤバさを実感できるイベントであるようにも見えました。

 

 無職にせよ、フリーランスにせよ、「所属しない」ことの大変さは尋常じゃないと聞く。全てを自分でこなさなければならないし、同じ道にいる他者と自分との差別化を図らなければならない。そこで優位性を証明した上で、自身をプロデュースし、収益化にまで持っていく。そりゃあ、慣れない人にゃしんどい作業でっせ。

 

 視点を移してみれば、〈ブロガー〉も同じなのかもしれない。周囲を気にし、良いところを吸収しようとするあまり、多様性の海に埋没していってしまうような印象。

 

 もし最初から“ナンバーワン”を目指そうとするのなら、過去の事例を研究し、競争相手を比較検討し、かつそこに新しい付加価値をプラスすることで、いずれはそこへ辿り着ける可能性もなくはない。不可能に近いだろうけれど。〈プロブロガー〉に感じる違和感は、これ。

 それならば、過去に追従するよりかは、自分だけの個性を探して、必死に伸ばそうとしていく方が、まだ日の目を見る可能性はあると思う。万人に好まれずとも、誰か一人の懐に入り込めれば、そこから広がっていく余地はあるんじゃないかと。

 

 もちろん、それすらも、組織に所属することと比べれば、難易度の高さは比較にならない。やっぱり、会社員はさいきょーなのです。

 

〈無職〉の資質

 イベントも後半になって、黒田さんがちょいちょい名言っぽい発言を連発して下さったので、それだけでも参加して良かったなーと思えました。それがなくとも、みなさんの言葉のドッジボールだかバレーボールだか分からないやり取りや、プロレスを観戦していてたくさん笑かせてもらったので、大満足ではあります。安いし!

 

 中でも特に印象的だったのが、「誰が相手でも頭を下げられることが、無職の強み」といったニュアンスの言葉でした。組織ではない、フリープレイだからこその、強み。

 

 企業に所属している会社員は、確かに安定性や安心感という大きな強みを持っている。無職にでもならないと普段は意識しないものだけれど、社会的な観点から見れば、それは何にも代えがたい大きなメリットだ。

 しかし一方では、組織に属している以上、その肩書きと看板がどこにでもついてくることとなる。会社の理念のもとで、常に損得勘定を意識し、自分を押し殺して行動することが求められる。

 

 その点、組織の「所属」という枷から解き放たれた〈無職〉は、全てが自分の裁量で決められる。仕事をもらうために頭を下げることはあるだろうし、逆に仕事を頼まれることもあるだろうが、単価や作業時間を検討した上で、ノーと言うこともできる。

 お金の発生する作業である以上、損得勘定で動くこと、それ自体は同様だ。時には我慢が必要なことも。しかし、バックに組織がないため、企業の意思ではなく、自分の意思で判断し、如何様にも行動することができる。その部分は、人によっては大きな魅力かもしれない。

 

 このようなことを鑑みると、〈無職〉の資質とは、社会とそこに蔓延る価値観から身体的にも精神的にも脱却し、「自立」していること、そう言ってもいいのではないでしょうか。

 組織に従うことを強要されつつも、「自分の頭で考えて行動しろ!」なんて言葉の聞こえてくる企業に対して、「自分の頭で考える」ことが〈無職〉“らしさ”だと考えてみれば、倒錯的でおもしろい。でも実際のところ、「必死に考えた結果ww無職になったったwww」なんて例は、割とよく耳にするものだ。

 

 〈無職〉=ダメ人間、というのも、世間様によって貼り付けられたレッテルでしかない。いや、そりゃダメ人間も相当数はいるんでしょうが。けれど、それを言ってしまえば、別に働いている働いていないとは無関係に、どうしようもない人間はいるんじゃないかと。

 終盤に話題になっていたように、最低限の社会的義務、納めるべきお金を収め、人様に迷惑をかけずに生きているのであれば、たとえ定職についていなくとも、誰かに文句を言われるようなものではない。その上で、自分以外の誰かを幸せにできているのなら、それは素晴らしいことだと思います。

 

 とりあえず、僕は彼らのような〈無職〉として生きている気が全くしないので、しばらくはいろいろと試し、求職活動もぼちぼち行いつつ、何かおもろいことでもできたらなーと思っております。今回は、楽しい一時をありがとうございました。

 

 

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