バレンタイン?
知らない子ですね……(もぐもぐ)
今年もこの日がやって参りました! そう! 今日は「ふんどしの日」! 通気性抜群! 健康にも良い! 全国のふんどし男子&ふんどし女子よ! チョコなどはどうでもいい! ふんどしを締めて街へ繰り出すのだ!
……などと、とりあえず煽り文句を入れてみましたが、僕自身は、マイふんどしは持っておらぬ身でありまして。普段、着物を着ることもあり、相性は良いんだろうなーと思いつつも、ステテコパンツで満足しておりました。
が、しかし! 先ほど読み終えたばかりの本書、『人生はふんどし1枚で変えられる』に触れて、この身の内に滾る衝動に抗えなくなっている模様。これは……買うしかあるまい!
ぶっちゃけ、人によって合う合わないはあるだろうし、何かしらの効用が実感できるかも怪しいけれど、物は試しである。この雪が止んだら、ふんどしを買いに行こう。そう決めた。
「日本ふんどし協会」ってなんぞ?
本書は、日本ふんどし協会会長の中川ケイジさん執筆、初の著書となるもの。……と言われても、そもそも「日本ふんどし協会」ってなんだろう?
日本ふんどし協会は、日本古来の文化であるふんどしの普及、及び、人々のふんどしに対する理解と関心を高めることを目的として活動しています。2022年(10年後)までに日本人全員がふんどしを1着は持っている、そんな時代の到来を目標としています。
現在、世の中の「ふんどし」に対するイメージは、「古い」「堅苦しい」「男気」「難しい」、、、など決して親しみやすいものとはいえません。戦前までは当たり前に生活に根ざしていたこの文化も、いつの間にか消え去り、話題にあがることもなくなってしまいました。
日本ふんどし協会では、先人たちがあんなに愛していたふんどしの魅力の再発見と文化再構築を目指し、ふんどしの文化・魅力・効果効能・ちょっとしたこぼれ話など、さまざまな角度からふんどしに関する情報を楽しく世の中に伝える活動を行います。
さらに、ふんどしが本来持っている効果や効能は世界中で叫ばれている持続可能性社会にも通じ、「エコ」「ロハス」「自然」「健康志向」等のふんどしが持つ良いイメージを日本だけではなくグローバルに拡げていくことを目指します。
合い言葉は、「みんなで締めれば怖くない!」「ナイスふんどし!」
文字どおり、日本における「ふんどし」の普及を目指している協会らしい。
ふんどし……。確かに、日本に昔からある伝統的な下着であり、今でもお祭りの場などで見ることはできる。けれど、一般的に親しみがあるかどうかと問われると、そうでもないような印象が強い。
なぜ、今、そんな「ふんどし」を広める活動に全力で取り組み、また、それが各メディアで取り上げられることとなっているのだろうか。そこには、協会会長・中川ケイジさんの物語がありました。
目次
本書は、9章構成となっている。僕はKindle版を読んだけれど、紙の本にすると約150ページ。文量はさほど多くなく、文体も平易なエッセイ調で、非常に読みやすかったです。
第1章 仕事のできない男
第2章 運命的なふんどしとの出会い
第3章 うつの発症
第4章 たった一人での起業
第5章 おしゃれなふんどし SHAREFUN® 誕生
第6章 パンツを捨てて、ふんどしを仕掛ける!
第7章 広がりはじめた「ナイスふんどし!」
第8章 ふんどしブーム前夜
第9章 そしてこれから
第1章は、著者の経歴について。大学を卒業後、猛勉強して美容師になり、軌道に乗りつつある頃にお兄さんに誘われて転職。しかし、営業マンとして思うように結果が出せず、徐々に精神的に追い詰められていく過程を独白しています。
第2章は、そんな営業マン時代の話。とある会社の社長さんが突然、「俺、ふんどし締めてるんだぜ!(ドヤ顔」と言い出し、ふんどしの魅力を彼から熱く語られたエピソード。会話の内容から、社長さんのテンションの高さが伝わってきて、ちょっと笑った。
第3章から第4章にかけては、うつ病と診断され、自宅療養を続ける中で、ふと思い出したふんどしの可能性に気付き、「おしゃれなふんどし」の販売に挑戦することを決意するまでの過程が描かれています。
第5、6章では、その「おしゃれなふんどし」こと「しゃれふん」を形として、売り出すまでの流れと、その中で思いついたアイデアや、協力者たちとの出会いが書かれている。どこか文体も熱を帯びたものとなり、「やってやんぜ!」という熱意が伝わってきました。
第7、8章は、「しゃれふん」の販売開始から、マスメディアに取り上げられ始め、ブームが広がっていくまで。次々と飛び出すアイデアと、それを形にするための行動力。読んでいて、こりゃあすごいと思わされる内容でございました。
そして、第9章。これからやりたいこと、成し遂げたいことを整理しつつ、著者の活動がこれからも続いていくことを示し、「ご期待ください」と書いて結んでおります。
熱意を持って、「好き」を楽しもう
本書を読んで印象に残ったのは、著者の「真面目さ」と「情熱」。美容師時代のエピソードの時点で、
何をすれば相手が喜ぶのかを徹底的に考えて行動する。そして、本気でやりたいと思えることを見つけることさえできたら、自分でも信じられないほどの行動力が湧き起こってくるものなんだなということを、この時初めて知ったように思います。
と書いているように、もともと熱意を持って行動している方だったのだなーということがよくわかります。
その後の営業マン時代にしても、とにかく仕事一筋、うまく結果が出ずともへこたれずに努力を重ねて行動していく様子は、読んでいて感じさせられるものでありました。もちろん、精神的に追い込まれてしまうまでに根を詰めてはいけないと思うけれど。
また、ビジネス的な視点からも、いくつかの気付きがあります。
ほとんどの人からは、「ふんどしなんてビジネスになるわけがない」と反対されました。以前の僕であれば、「そうかなぁ……」とネガティブにとらえたと思いますが、この時は逆に、「これはイケる!」と自信がつきました。 なぜなら反対意見をくれる人たちのうち、誰一人として越中ふんどしの快適さを知らなかったからです。
彼らがもつ、ふんどしへの「快適なはずがない」「お祭りの時だけのコスチューム」「めんどくさい」などのイメージを、大きく覆すことができたら、一度でも試してもらう機会をつくれたら、きっとそのギャップに驚くに違いない。 かつての僕がそうであったように、ふんどしへのハードルが高ければ高いほど、身につけた時の快適さに驚くことを知っていたからです。このギャップにこそ、今後、ふんどしが大きく広がる可能性があると、この時ますます自信を深めたのです。
そして、メディアへアピールすることによって、その効果を実感し、より積極的に展開していく流れ。その過程においても、「なぜ注目されたのか」を自分なりに分析している様子が窺えます。
多くのメディアから興味をもってもらえるようになったのは、おそらく商品自体のスペックではなく、その裏に秘められた僕のふんどしへの想いや、ストーリーが変わっていたことがよかったのだと思います。
今日の「ふんどしの日」もそうであるように、一般的なイメージとしての「ふんどし」に新しいデザイン性や物語性、他とのギャップを付加価値として与えることで注目を集めるという手法からは、学べる部分も多いのではないかしら。
他にも奥様との関係など、飽きることなく読むことができたけれど、一方では少し物足りなさを感じる文量でもありました。著者自身の体験がメインであり、エッセイとしての形式を取っているために、「ふんどし」そのものに関する内容が薄いように読めなくもないんですよね。
欲を言えば、「ふんどし」をもっともっと世に広めようとするのなら、それ自体の歴史や背景、文化的魅力について、僅かでもいいから言及して欲しかったなー、と。文量の割に高めの価格設定にになっているようにも感じたので、もうちょい踏み込んで欲しかったかもです。
もし次回作の予定があるのなら、ぜひ著者の「ふんどし論」を読んでみたいところ!