僕の人生を変えた一曲は、大嫌いな「オタク」のものでした


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 「思い出の曲」や「何かのきっかけとなった曲」がある人は少なくないと思う。僕の場合は、その一曲によって、一気に世界が広まったと言っても過言ではありません。全く知らなかった文化圏を知り、その世界の魅力を知り、虜になった。

 そんなわけで、僕の「人生を変えた一曲」と、それに関連して「オタク」になった理由をだらだらと書きました。「オタク」という言葉に若干の思うところはありますが、これが最も分かりやすい表現なので。

 

J-POPにハマっていた、中学生時代

 昨今はYouTuberが話題ですが、僕ら世代では「現代っ子はテレビを見て育つのが当たり前」と言われてきた印象があります。しかし、そんな同世代と比べると、「は!?ありえん!!」とびっくりされるほどにテレビを見ずに育ってきた僕。

 我が家のテレビのチャンネルは、基本的にNHK。バラエティの話をされてもぜんっぜん分からず、僕は「好きなアニメと大河ドラマとクイズ番組を見れればそれでいいや」という子供だった。「笑う犬の冒険」と聞いて、犬のきぐるみを着た人が全国を闊歩する旅番組を想像していたレベル。

 

 そんなこともあって、学校でテレビの話題をされると、「お、おう……」と反応に困っていたけれど、音楽はそこそこ聴いていた。

  中学時代は、毎週、欠かさずにラジオでランキングをチェックして、週末になると隣町のTSUTAYAへ走る。気になったCDをまとめてレンタルし、家でMDに録音したら、その日のうちに返しに行く、ということを繰り返していました。

 

 当時よく聴いていたアーティストとしては、BUMP OF CHICKEN、CHEMISTRY、L'Arc~en~Ciel、Mr.Children、Janne Da Arc、day after tomorrow、Every Little Thing、GARNET CROW、スピッツ、ポルノグラフィティ、平井堅――などなど。有名どころばかりですね。

 言い換えれば、僕らの世代にとってのメジャーどころをかき集めた感じ。カラオケに行けば、友達はみんなラルクやGLAYを歌っていたような。女の子だと、宇多田ヒカル、浜崎あゆみとか。あ、ORANGE RANGEも好きですよ。

 

 その一方で、僕は小学生の頃から、ゲーム音楽が大好きでした。マリオやポケモン、カービィなど。プレステはないので、任天堂系ばかり。FFに手を出すのは、高校生になってから。マリオRPGの移植はよ。

 コンポもネット環境もなく、自由に音楽を聴けなかった頃は、ゲームボーイを好きな音楽の流れる場面にして音量MAXで放置していました。おかげで、電池代がかかるったらありゃしない!充電池は、神のもたらした道具かと思いました、まる。

 そして、この「ゲーム音楽好き」という要素を兼ね備えていたがために、後に「人生を変えた一曲」と出会うことになるのです。

 

ついに ねんがんの いんたーねっとを てにいれたぞ!

 中学に入学して、「勉強のために調べ事するなら、自由にパソコンを使っていいぞ」と、お父上様からありがたくPC使用の許可を頂戴し、全力で、おもしろFLASHをあさっていた僕氏。だって、こどもだもの。しかたない。開国してくださーい。

 毎週のようにTSUTAYAへ通う傍ら、ネットではFLASHをあさる日々。ちなみに、BUMPと出会ったのもFLASHでござる。ラフメイカー?冗談じゃない。8頭身とは。

 

 そんなある日。確か、ポケモンか何かの攻略サイトを閲覧して回っていたんだと思う。あるサイトを開いたら、音楽が流れてきてびっくりした。MIDIとの出会いである。

 「MIDIという電子音楽があるのか!」→「もっと音質の良い、MP3というものもあるらいしい」→「自作曲を発表している人もいるんだねー( ´_ゝ`)フーン」と巡り巡った結果、辿り着いた先が、ゲーム音楽のアレンジサイト。

 

 

 ゲームプレイ中にいつも聴く、知っている曲なのに、知らない曲だ!!*1

 

 

 なんだこれは!けしからん!もっと聴かせろ!――という流れで、アレンジサイトを探し、巡回する日々の幕開けであります。

 自分のプレイしたゲームの曲はもちろん、知らないゲームの曲でも、そのサイトのアレンジャーの別の曲を気に入れば試しに聴いてみる、ということをしていました。

 これによって、FFにも興味がわいたし、伊藤賢治さん、古代祐三さん、植松伸夫さん、桜庭統さん、下村陽子さんといった、ゲーム音楽作曲家さんたちの存在を知ることができた。

 

惚れた曲は、だいっきらいな「オタク」のものでした

 そして、ある時、いくつかのサイトを見ていて、気付いてしまった。任天堂やスクウェア、エニックスのアレンジ楽曲の中に、見覚えのない名称のものがあることに。Leaf?Key?聞いたことのない会社だなー*2

 そんな中でも、特に良く目にする楽曲がひとつ。タイトルにどこか惹かれたこともあって、試しに聴いてみた。

 

 

 

 もちろん、初めて聴いたのは、どこかのサイトのアレンジ版。それでもメロディがすごい気に入って、すぐさま原曲を探しに行き、聴いて、打ちのめされた。

 

 

 なんだこれは。

 

 

 なんすかこの曲!この歌!最高じゃないですか!なんでこんな素晴らしくとんでもない曲を僕は知らなかったんだ!この曲は一体、なんなんだ!!

 

 ――と、調べてみて、天地がひっくり返るような衝撃を受けた。

 

 

 ……え、…………エ口…ゲー……だ…と………?

 

 

 当時は中学3年生だった僕。テレビは見ないとは言え、メディアの報道は耳に入ってくるし、学校では友達の話を聞いていたので、それらの印象のままに、「オタク」という存在を忌み嫌っておりました

 学校では、ガンダム好きですら、「うわあ……」という目で見られ、からかわれるような、気持ちの悪い趣味とされていたくらいだし。ロボット系ですらそうなのだから、美少女ゲームなんてもってのほか。しかも18禁ゲームとか、もう、オタクの中でも最低最悪なものじゃないか。

 

 そのようなイメージがあったため、もう何がなんだか分からなくなった。え?なに?エ口ゲーとか、キモい人の娯楽でしょ?なのに、どうしてこんなすごい曲が使われてるの?どういうことなの?ばかなの?しぬの?

 しかし、テレビっ子じゃないけど、ネットの扱いには慣れた僕氏。「真相を突き止めねば!」と、この「鳥の詩」を使っている『AIR』なるゲームを調べ始める。Google先生は有能です。

 

 調査の結果、わかったこと。

 

  • ビジュアルアーツという会社の『AIR』というゲームのオープニング曲らしい
  • 『AIR』は18禁の美少女ゲーム、俗に言う「エ口ゲー」である
  • にも関わらず、「鳥の詩」を代表とする使用楽曲はアレンジャーの間で大人気
  • エ口ゲーなのに、感想を見ると、「感動した」「泣いた」の絶賛の嵐
  • エ口ゲーなのに、女性のファンもそこそこの数、存在するらしい

 

 いやいやいや、ご冗談でしょう。エ口いのに泣けるってどういうことっすか。そんな感動的なプレイが待ち受けているんですか。キャラも目が大きすぎて直視できませんよ、これ。

 調べたら、ますます訳が分からなくなった僕ちゃん。これはもう、自分で確かめるしかないのか……と、ついに我が身をもって立ち向かうことに。

 

 買ってきた。もちろん、PS2の全年齢版を。

 

 その頃には、PS2(薄型!)をお年玉で手に入れていたので。買いに行くのが、めちゃくちゃ恥ずかしかった記憶がある。わざわざ知り合いと会わなそうな隣町の中古ゲーム店まで、チャリで、帽子かぶって、マスクして。完全に不審者です。

 

 さて、いざプレイだ。親に隠れてこっそりと。

 

 結果、泣いた。大泣きした。涙も枯れ果てた。

 

 はじめは、どうあってもキャラクターの絵柄が全くもって受け付けず、慣れないキャラボイスにも悪寒を覚えていたけれど、いつの間にかそれにも慣れ、どんどん読み進めていた。

 結果、連休を使って、あっという間に最後まで読み切った。とんでもねえ。そりゃあ泣きますよ。反則ですよ。音楽も評判通りっすよ。全国のオタクさんに土下座しようと思った。何も知らず、キモいなんて思っていてすみませんでした。

 

 そして僕は、「オタク」になった。

 

音楽と、MADと、オタク趣味と、価値観の変化

 その後、『AIR』にどハマりした僕は、関連する音楽や動画をあさっている中で、いわゆるMADムービーに出会いました。第2の衝撃である。映像は見覚えのあるものなのに、曲がJ-POPだ……!見知ったオープニングじゃない……!

 

 最初のきっかけは「鳥の詩」だったけれど、他の作品に興味をもたらしてくれたのは、それら個人制作によるMAD作品。

 MADの良いところは、「何の作品かは知らないけど、なんかかっこいい映像」を観ながら、「何の曲かは知らないけど、なんか耳に残る良い曲」を聴ける点。つまり、全く関係のない「作品」と「音楽」の組み合わせによって、一度に両方を知ることができること。

 

 アニメやゲームの知識が皆無だった僕にとっては、とんでもなく素晴らしい教科書となったのが、MADだった。そのような「出会いの場」としてのMADは、今も変わらない*3

 

 以後は、コミケに単独初参戦したり、高校に入学して趣味の友達ができたり、初めてのライブに行ったり、ネットで会ったオタ友とオフ会をしたり、ニコニコ動画が出てきてめちゃくそハマったり。今に至るまで、充実したオタライフを送っております。

 改めて思い返してみると、僕の学生時代における、「音楽」と「オタク趣味」の比重はかなり大きいな、と。中学時代、いろいろあって怠惰に過ごしていたのが、ひとつの楽曲と出会って、考え方や価値観が激変したのは間違いない。

 

 ひとつは、「ステレオタイプなんざクソ食らえ」ということ。
 もうひとつは、「とりあえず行動してみること」の重要性

 

 自分の知らない世界のものを、周りの評価だけで、そうだと決めつけてしまうことの愚かさ。周囲から植え付けられた固定観念なんて、全く当てにならないこと。早い段階で、そのことを身をもって知ることができたのは大きい。

 あとは、「興味を持ったら調べる、動く、行ってみる!」の流れ。決して自分は活動的な人間ではないと思うけれど、友達に言わせれば「いつの間にか一人でどっか行って、勝手にめちゃくちゃ楽しんでる」ような人間らしい。人間関係は少し苦手だけど、自分の欲求には正直。良くも悪くも。

 

 アニメやゲームにハマったおかげで勉強量は減ったかもしれないけれど、結果として、それが今の自分の価値観を育む重要な要素のひとつとなっているのだから、まあいいんじゃね?と、現在の僕は思っております。人生、何があるか分からないよねっ☆

 以上、話が膨らみすぎた感じはありますが、「人生を変えた一曲」をテーマにした、自分語りでした。この、「人生を変えた◯◯」ってたまに目にするテーマではあるけれど、いろんな人の話を読むのは楽しいよね。

 

 

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*1:平成生まれの僕が見てきたインターネットの世界 - ぐるりみち。

*2:当時は、アレンジ全盛期を越えた辺り

*3:著作権の問題はあるものの。