最初は、王道のボーイミーツガールかと思った。ヒーローに憧れる少年と、いじめられっ子の少女。テンポの良い会話は読んでいて楽しく、気づけば時間を忘れて読みふけっていた。
ところが中盤から、「これはおかしい……というか、どっかで読んだような……?」と既視感を覚えた。急展開を見せる物語展開と、撃ち落とすべき「UFO」の比喩から思い出されたのは、無力な2人の少女が「砂糖菓子」でもって抗う物語。大好きな作品だ。
甘くも残酷、やるせない結末に落ち着いたそれとは異なり、本作はハッピーエンドで終わるかと思われた。……が、その期待は辛くも終盤でひっくり返され、地の文による怒涛の展開が繰り広げられる。撃ち落とされたUFOと、2人の死んだ人間。最後には、訳のわからなさだけが残った。
頭の中が大量の疑問符で埋め尽くされ、改めて冒頭部分を読み返し、再び最後の数十ページを追いかけて、追いかけて、追いかけて――ようやく、腑に落ちた。
これは、いじめに立ち向かう少年少女の青春小説であり、独特の構造を持ったミステリーであり、そしてなによりも、喪失すらも温かく受け入れる「家族」の物語。何度も読み返したくなる、不思議な魅力を持った作品です。
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