終幕後、己の胸に去来したのは「おなかいっぱい」という心地良い満腹感。と同時に、とにもかくにも「酒が呑みてえ」という純然たる欲求であった。原作小説だろうがアニメ版だろうが、森見登美彦さんの作品に触れたあとはいつだってこうだ。
ひねたようでいて、目にして(耳にして)すんなりと己の内に入ってくる言葉の奔流に身を委ね、京都界隈を主とした作品世界に耽溺し、魅力的なキャラクターたちに惚れ込んでしまう。結果、熱に浮かされたような興奮を中和する――もとい、昂ぶった精神的な熱量に肉体を寄せるべく、自然と身体がアルコールを求めるようになるのだ。
こうして己の欲求に素直になり、「もんどり!もんどり!」とわけのわからぬことを叫びながら電気ブランを呷った翌朝には、妙な満足感とちょっとした多幸感、そして眉間に矢でも突き刺さっているかのような頭痛と共に目を覚ますのが常である。おはよう世界。そしてさようなら、充実したかもしれない今日。あっしはオフトゥンと添い遂げる。明日になったら起こしてくれぃ。
ともあれ、映画『夜は短し歩けよ乙女』である。
大学生時分から好きな作品だったこともあり、こいつぁ観に行くしかあるめぇと公開初日にいつもの立川に飛び込んできたわけだけれど、なんともまぁお腹いっぱい夢いっぱい、ついでにお酒も1杯、ちょっとだけおっぱいな、最高に素敵な作品でござった。――そんなわけで、ざっくりと感想をば。
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