創作同人誌はいいぞ!最近読んだ11冊の感想をまとめたよ


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 気づけば、夏コミも間近。そろそろサークルチェックに取り掛からねば……とカタログをめくりめくり、フォローしているサークルさんのツイートを追いかけてたりしている人も多いのではないかしら。余裕があれば設営も行こうかな……。

 即売会のあとはいつも、手に入れた本をまとめて読むのが至福の時間。……なのですが、ここ最近はまとまった時間が取れず、本は読めても感想をまとめることができていなかったんですよね……。冬コミからこっち、コミティアやCOMIC1で買った本を整理できていなかった。

 そこで今回は、今年に入ってから読んだ同人誌のなかから、特に「オリジナル・創作」ジャンルに絞って感想をまとめました。本当はあと20冊くらい追加でまとめたいのだけれど、時間がないので……。特に印象的だった11冊について、自分の感想と合わせて紹介させていただきます。

※前回の冬コミの新刊については、こちらの記事でもまとめています。

 

『フィリピンではしゃぐ。』はしゃぐ

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 ハチャメチャ楽しく、ちょっと切ない、フィリピン留学体験記。約170ページのなかで描かれるのは、英語力ゼロのイラストレーターである筆者さんがバギオで過ごした半年間。留学情報あり、グルメあり、異文化体験ありと、読みごたえたっぷりです。

 語学留学に関心がある人にとっては「等身大の留学体験」として参考になるでしょうし、そうでなくても、「フィリピンでの異文化体験&日常エッセイ漫画」としても楽しく読める。登場人物もみんなキャラ立ちしていて、「自分もこんな留学生活を送ってみたい!」と思える内容です。

 僕自身、以前に語学留学を検討していて、あれこれと情報を調べていたことがあったのですが……。ネット上の情報サイト・口コミはどこもかしこも極端に意識が高く、「ぜひともうちの学校を!」的な宣伝色が強すぎて、あまり参考にならなかった覚えがあります。

 その点、こちらの体験記は作者さんの個人的な “エッセイ” でありながら、留学に対する考え方や現地情報も散りばめられており、とてもバランスの良い “体験記” だと感じました。作者さんは現在、ニュージーランドに滞在されているそうな。次の新刊が楽しみ。

 サークル情報  Twitter:はしゃ (@hasya31)
 pixiv:「はしゃ」

 サイト:はしゃぐ

『29歳からはじめる趣味。総集編』世間の片隅

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 20代中頃に体を壊し、仕事を辞めた作者さん。「どうせなら人生楽しまないとな!」と開き直り、さまざまな趣味に挑戦した当時の経験を元に描いた、「趣味」の紹介本(本文より)が本書です。

 まったく押し付けがましさはなく、「こんな趣味はどう?」と気軽に勧める内容。「フィルムカメラ」「ダーツ」「コーヒー」「エレキギター」「ボルダリング」「絵を描く」の6つの趣味が紹介されており、その初心者向けの実践法と魅力をまとめています。絵柄もかわいい。

 「つらい」「わからん」「たのしい」「うれしみ」といった、良いも悪いも含めた感想がゆるーく描かれているので、「僕もやってみようかなー」と気楽に考えられる点も魅力。とりあえず、ボルダリングは今度行ってみようと思いまする。

 サークル情報  Twitter:蛙山芳隆 (@kaeruyama0207)
 pixiv:「蛙山芳隆」

『konel.mag Issue 5』konel

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 主にクリエイターに向けて、「ウェブでポートフォリオサイトを持つこと」を推奨・支援するために企画された同人誌(本文より)。「そもそも “ポートフォリオ” とは?」の説明に始まり、制作フロー、ウェブサービス比較、実例などを順に掲載しています。

 かく言う自分も、本書に影響されてポートフォリオを作りまして。初心者向けのCSS講座のほか、イラストレーターやデザイナーといった業種によっても異なるポートフォリオの考え方まで書かれており、参考になる人も多いのではないかと思います。

 そして何より、「私がブログに思うこと」と題された文章に強く共感。本文で言及されていた「日記的なブログ」は、まさに自分がブログを始める際に志向していたものであり、「なぜ、ブログを書くのか」の根幹に立ち返ることができました。ブログを書こう。語ろう。公開しよう。

 サークル情報  Twitter:konel (@konel_works)
 サイト:konel

『腐ったオタクの自転車ライフ・再録①』脂華

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 『弱虫ペダル』をきっかけにロードバイクに乗りはじめた筆者さんの、自転車生活を記録した漫画。前々から同シリーズを見かけて気になっていたのですが、ちょうど昨年秋に僕自身もロードを買ったのと、冬コミでこちらの再録版が出たのが重なって、迷わず購入。

 「自転車を買ったよ!」から始まり、ビンディングペダルやサイクルウェアの購入に、補給や輪行やメンテナンスの解説なども順を追って説明されているので、自転車初心者にも優しい1冊。実際に乗ってみてどうだったかの体験談に、腐女子的おすすめポイントもあるよ!

 そして、「苦しい!」「ヤバい!」「でも楽しい!」の三拍子そろった長距離ライドの記録(写真含む)もあり、自分のような初心者や「これから乗りたい!」と思っている人にとっては動機付けにもなるはず。最近乗れてないしそもそもワシは長距離走った経験がないんだがな! 台湾行きたいわん……。

 サークル情報  Twitter:PEKO (@ab_peko)
 pixiv:「PEKO」
 サイト:ABURAHANA

『引きこもり漫画家 一週間自転車旅日記』くみちょうBOX

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 「思いつきでクロスバイクを買い、埼玉・所沢〜兵庫・西宮までの約570kmを1週間で走ってみた」という、自転車初心者の自分からすれば正気の沙汰とは思えない実録漫画。でもね……無性に遠くまで旅に出たいことってあるよね……わかるわ……。

 良くも悪くも現実的というか、「旅は人生を変える!」的なキラキラ感はなく、「めっちゃキツいけど……まあなんとかなるんじゃね?」みたいな、ゆるーい感じの語り口が読んでいて気持ちいい。失敗も反省も余さず書かれていて、すごく好感を持てる内容でした。

 特に、短いけれど「総括」の部分は本音の実感がこめられているように感じられて、劇的な感動はなくても読者に「走ってみたい!」と思わせる説得力がありました。これもきっと、 “大人” ならではの旅の楽しみ方のひとつの形。

 サークル情報  Twitter:くみちょう (@kumichooooo)
 pixiv:「This is くみチョー」

『I.AI』雨宮商店

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 人付き合いが苦手な女の子と、人工知能のお話。短いながらも、はっきりとしたメッセージと、その過程で描かれる世界設定が魅力的。たくさんの「かわいい」と「わかる」が込められていて、読んだあとにはすっきりほっこり。もっともっと、この世界に触れてみたい。

 作者は、優しげな絵柄と、1枚絵の構図と、そこから読み取れる物語がすっごい好きで、ここ1年ほど気になってた絵師さん。なかなか作品を手に取る機会に恵まれなかったのですが、コミティアで念願叶って購入した格好です。読んでみたら案の定……すっごい好み。

 サークル情報  Twitter:雨水はるさめ (@harusame0104)
 pixiv:「雨水はるさめ」

『ずれ』テクノストレス

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 常日頃から周囲と自分との “ズレ” を感じている女の子のお話。

 女の子の心情と合わせて挿入される “ズレ” の演出が独特で、おもしろいなーと思いながら読んでいたら……最後に、「そうくるかー!」と。徐々に大きくなる “ズレ” の幅と、言葉にすることで決定的になってしまう理不尽なギャップ。記憶に残る、すごく印象的な1冊でした。

 サークル情報  Twitter:U-temo (@u_temo)
 pixiv:「U-temo」
 サイト:sey!yana

『map04 架空の歩きかた』丸紅アパートメンツプレス

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 学校帰りに架空のまちを訪れる漫画。

 いつもの電車のなかで出会うのは、ちょこっと不可思議で非日常な夢の世界。流れる景色とまちあかりの描写がどこか儚げで、思わず自分も眠り/歩きたくなる、素敵な短編ファンタジーです。

 サークル情報  Twitter:丸紅 (@malbeni)
 サイト:丸紅アパートメンツ

『腐女子と遊ぶ以上の人生の娯楽がない!』1000RUN

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 曰く、 “同人にかまけて彼氏を蔑ろにしがちな腐女子たちのバッドエンドなクソ恋愛エピソードばかりを集めた地獄のような本” (pixivの告知ページより)腐女子じゃないのに読んですみません! でも仕方ないよね! 他人の色恋に手斧が突き刺さっているのを見るのが楽しいんだもの!

 でも実際問題、「趣味をむちゃくちゃ楽しんでいて優先順位がうふふ☆」な展開は腐でも腐でなくても、それ以前に男女関係なくあると思うんですよね……。そんなに理不尽な別れエピソードがあるでもなく、むしろ男(オタ)目線でも共感とわかりみしかない。

 そう! 「楽しい!」ポイントがぶっ壊れているのは腐女子だけじゃないよ! 男もそうだよ! オフ会最高! イベント楽しい! ぼっち楽! 別れ話を経たうえでの「こんな…気持ちじゃぁ夏コミの原稿なんて出来ないよぉ…」からの「100ページ近い新刊ドーン!」には笑った。つよい。

 サークル情報  Twitter:のぶし (@namayakeniku)
 pixiv:「のぶし」

『明日葉ソルトキッチン』明日葉

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 「塩」を専門に取り扱った、既刊『Salt!』『もーっと! Salt』。そのなかで紹介した「塩」を実際に使って作った、「塩レシピ本」がこちら。各料理の作り方はもちろんのこと、使用する「塩」についても改めてその特徴や参考価格も掲載しています。

 さらには、イタリアンバーのマスターに聞いた、プロの「塩の使い方」のインタビューも! 「塩」にとどまらず、おすすめのお酒などにも話が及ぶこちらのインタビューは、小さな文字で6ページと読みごたえがあります。あまり料理に関心がない人でも興味深く読めるはず。

 サークル情報  Twitter:草田草太 (@Ashitaba_s)
 pixiv:「草太」
 サイト:しらたまぜんざい

『けもみみやび』I.S.W

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 「和」と「獣」をテーマにしたイラスト本。単なるイラスト集ではなく、複数人のイラストレーターさんが参加し、それぞれのイラストの背景をデザイナーさんがデザインするコンセプト本となっています。

 僕自身、「イラスト」も「デザイン」もさっぱりの門外漢ではありますが、それでも目に見えてわかる「デザイン」の存在感にびっくり。絵柄や色彩によって異なる多種多彩な「デザイン」の手法に魅せられ、思わず隅々まで目を向けてしまうほどでした。

 けものっ娘好きとしては、テーマからして魅力的な本でしたが、普段はあまり意識しない「デザイン」の妙も堪能できるという意味でも、おもしろく読めた1冊。あずーる@azure_0608さん、巻羊@rollsheeeepさんといった自分の好きな絵師さんも参加しており、個人的には保存版。

 サークル情報  Twitter:柊椋 (@hiiragiryo)
 pixiv:「柊椋」
 サイト:I.S.W DESIGNING

 

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