全国の提督が待ち望んでいたであろう、「ケッコンカッコカリ」が実装されて、はや4日。演習相手の艦隊を見ても、銀色に輝く指輪を目にする割合が増えてきたし、当たり前のように重婚している強者もいらっしゃる。うらやまし……くなんかないもん! 榛名がいれば大丈夫です! もん!
そんな「ケッコンカッコカリ」に関して、思うところがある提督さんも少なからずいらっしゃるようで、一部で話題となっていた。僕自身は、ゲームはゲームと割り切って純粋に楽しんでいるので、その賛否について語る言葉は持っていない。
ただ、「二次創作」の視点で見ると、割とおもしろいものなんじゃないかなー……と思ったので、考えたことを書いてみます。
「ケッコンカッコカリ」ってなんぞ?
僕らの間では「ケッコンカッコカリ」と呼んでいますが,いわゆる“限界突破”的なもので,もう少し先のフェイズに艦娘と行けるようなシステムですね。レベルを1に戻したりするのではなく,今よりもさらに育てていけるシステムです。
(「艦隊これくしょん -艦これ-」はいかにして生み出されたのか。その思想から今後のアップデートまで,角川ゲームスの田中謙介氏に語ってもらった - 4Gamer.net)
02▼新システム【ケッコンカッコカリ】の実装 練度が通常最大値(Lv.99)まで達した大切に育てられた艦娘と「ケッコンカッコカリ」が可能となるシステムを新規に実装しました。艦娘と「ケッコンカッコカリ」を行うにはアイテム【書類一式&指輪】が必要となります。 #艦これ
— 「艦これ」開発/運営 (@KanColle_STAFF) 2014, 2月 14
公式の発言によれば、「ケッコンカッコカリ」は、「レベルの限界突破」が可能になるシステムであることが明言されている。言わば、他のオンラインゲームでも見られるような、それまでのレベルの上限を引き上げるアップデートと同様のものだ。
ただし、『艦これ』の場合は、それに特別なアイテムと作業(クエスト)が必要となる。さらに、そのアイテムは、現時点ではゲーム内でひとつしか手に入らず、他のユニットにも適用しようとすると、課金が必要になってくるという縛りがある。この点が、一部ユーザーの反感を買っているようだ*2。
「ケッコンカッコカリ」が特徴的なのは、ただのアップデートである「システム」に固有の名称を付け、イベントまで用意したことにある。しかも、「ケッコン」である。
「ケッコン」だと!?ひええー!そいつはもちろん、「結婚」のことだよな?大好きな艦娘といちゃこら新婚生活とかひゃっはー!最高デース!!……などと、全国の提督さんたちが色めき立つのも仕方がない。
確かに、実装された「ケッコンカッコカリ」を紐解いてみれば、書類に指輪、どう見てもあの「結婚」じゃないかー!と思わせる独特な演出になっているし、デレデレの追加ボイスまでついてくる*3。まるでギャルゲーっぽい?
しかし、言ってしまえば、それだけである。ギャルゲーみたいだからと言って、別にアドベンチャーパートが追加されたわけでもなければ、新規の一枚絵がどーん!と出てくるわけでもない。メインはレベルの「限定解除」であり、ボイスとイベントはおまけのようなもの。そう言っても、間違いではないと思う。
そんな、ただのシステムアップデートと言えなくもない「ケッコンカッコカリ」。でも、このシステムに「ケッコン」という名前をつけて、「簡単な」イベントを用意した運営さんは、かなりうまいことやったんじゃないかなー、と思った。ユーザーにとっての新しい「話題」としても、二次創作の「種」としても。
「カッコカリ」の曖昧さを考える
以前、このような記事を書いた。『艦これ』人気を、『東方』や『アイマス』といった他の作品と絡めて、自分なりに考察してみたもの。形のあるデータなどを参照したわけではないので、「多分、こうなんじゃね?」という想像語りに過ぎませんが。
この記事の中で、『艦これ』の魅力のひとつとして、正体不明の「深海棲艦」や、公式で規定されていない世界観を挙げました。
『艦これ』では、「深海棲艦」と呼ばれる敵艦と戦うことになるが、その正体は公式に明かされていない。どこか不気味な風体で、強力な深海棲艦は女性の容貌をしていることから、「轟沈した艦娘の成れの果てなのでは…?」という説がまことしやかに流れているが、その真偽も不明。既存の艦娘との共通点が見られたり、イベント時の台詞が意味深だったりと、不気味ではあるが、魅力的な存在だ。
そのような、曖昧で不気味、いくらでも解釈ができる「敵」の存在は、二次創作に多様性をもたらしている。深海棲艦に限らず、そもそもの「艦娘」という存在の詳細な設定、果ては『艦これ』の世界観すら明言されていないこともあり、創作者によって、全く違った話が展開されているため、非常におもしろい。
言うなれば、『艦これ』は「未確定」の世界観を擁している。ゲームをプレイしている中で、「仲間」と「敵」の存在ははっきりとしており、進め方も理解はできるが、その背景はほとんど明らかにされていない。そんな、「なんかよく分からないけど惹かれる」という「曖昧さ」が、『艦これ』の魅力の一翼を担っていると僕は思う。
そして、その「曖昧さ」は、今回の「ケッコンカッコカリ」にも適用されているのではないだろうか。
「ケッコンカッコカリ」は、書類や指輪、イベント時の演出など、僕らが一般的に知っている「結婚」の形を持っているように見える。そもそものシステム名が、「ケッコン」だしね。艦娘のデレっぷりからしても、「あ〜こいつは特別なもんですわ〜」ということがよく分かる。
しかし、一連のイベントを見てみると、具体的に「どうした」ということはゲーム内でも、運営側からも明言されていない。それっぽい言葉と言えば、「艦娘と絆を結びました」という文句のみだ。
これは、非常にふわふわした、曖昧な表現だ。一口に2者間で結ばれる「絆」と言っても、夫婦、親友、師弟、などなど、様々。もしかしたら、ブラ鎮*4の長たる提督と正規雇用の関係を結んだだけかもしれない。おらぁ、そんな鎮守府やだぁ。
つまり、この「ケッコンカッコカリ」は、僕らが知っている「結婚」とは全く別のものである可能性がある。カタカナ表示に加えて、「カッコカリ」という言葉がさらにその曖昧さを加速させている。「結婚」という概念が全く違う意味合いを持っているかもしれないし、一夫多妻性が認められている世界なのかもしれない。夢が溢れりんぐ。
そして、そんな曖昧な「ケッコンカッコカリ」は、前述の「深海棲艦」や世界観と相まって、二次創作界隈に多種多様な「妄想」を運び込むことになるんじゃないだろうか。
「曖昧」な世界がもたらす「妄想」
世界観や設定が曖昧な作品は、その二次創作活動も活発になりやすい傾向があるように思う。前述の引用記事にも書いたように、『艦これ』や『東方』など。
つまり、最低限の「キャラ」や「システム」という具材をもとに、どのように料理(解釈)するかは、各々の自由、ということでもある。ゆえに、それはクリエイター独自の視点で物語を作りやすいということでもあり、二次創作界隈では好まれやすく、盛り上がりがちな印象がある。
今回の「ケッコンカッコカリ」に関しても、Twitterで探すだけで、これだけの「妄想」が飛び交っている。
未だに私の中で「ケッコンカッコカリ」は『霊的な繋がりを艦娘と強くすることで艦娘のポテンシャルを引き出す儀式』であり、ほんとはもっと仰々しい名前がついているんだけど、魂を結ぶという意味で「結婚みたいですね」と艦娘から言われたことが現在の呼称に繋がっているという脳内設定で通している。
— うどんがひ (@higandou13) 2014, 2月 16
艦むすはあくまで兵器として扱わるので人間としての法が適用されないからケッコンカッコカリという仮初めの儀式をして強い絆を結んでるんだと妄想するとなんかもう最高にグッと来るやん…
— 見習い雑兵 (@zouhyou) 2014, 2月 14
TLで艦これのケッコンカッコカリが凄い話題になってるけど、「決して長くは生きられないような任務に就く艦娘達の、本来なら得られたであろう、ささやかな願いを叶えるための提督の任務の一つ」みたいな妄想ばっかり湧いてきて辛い。どんな形であれ泣き顔しか思い浮かばない。艦これやってないけど。
— いざ。 (@iza_mal_mal) 2014, 2月 14
ケッコンカッコカリの後に更に艦娘のレベルを上げると、ケッコンが可能になって、ケッコンした艦娘は艤装を外されて前線を離れて固定秘書となる って妄想
— マーコス提督@DC2 (@littlemarkos) 2014, 2月 17
妄想コミカライズでケッコンカッコカリを表現するときは結魂という漢字を当てることにしようそうしよう。
— しまざき (@shimazakikazumi) 2014, 2月 17
ちょろっとTwitterを見ただけでも、これだけの「解釈」があるのだから、クリエイターの方たちは、きっと今頃は新作の構想を練っていることだと思う。
「二次創作?知らない子ですね」な人にとっては、「何言ってんだこいつら」としか映らないかもしれない。けれど、作品から何かを想像、いや、妄想するのが好きな人にとっては、多様な解釈が可能な設定はたまらない。いいねぇ、しびれるねぇ……!
昨今のオタク市場を見ると、「二次創作の盛り上がり」がそのまま、「作品の人気」と直結していることは否めない。そういう意味で、この「ケッコンカッコカリ」は、艦これユーザーの間に蒔かれた、新しい「種」となりうるものだと思う。クリエイターがそれを各々の自由に育て、収穫し、ファンが消費する。そのようなサイクルが続く限り、作品の人気がすぐに下火となるような事態はないはずだ。
……と、ぼそぼそと書いてきたけれど、要は楽しめるものは積極的に楽しんでいこうぜ!って話でございます。今のところ、個人的には課金の予定はないけれど、いつまでもつか。時雨かわいいです。