あ、「脱社畜的思考」の本を読んだので、とりあえず感想書きます。


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「脱社畜ブログ」で有名な日野瑛太郎さんの新著、『あ、「やりがい」とかいらないんで、とりあえず残業代ください。』(東洋経済新報社)を読みました。うん、相変わらずのぶった斬り具合でありました。

 

 

目次と概要

第1章 あ、今日は用事があるんで定時に失礼します。――ここがヘンだよ、日本人の働き方

第2章 いえ、それは僕の仕事じゃないんで。――日本のガラパゴス労働を支える「社畜」

第3章 はい、将来の夢は毎日ゴロゴロ寝て暮らすことです!――社畜が生まれるメカニズム

第4章 えー、「従業員目線」で考えますと……――脱社畜のための8カ条

 

本書は、このような4章構成。「働き方」に関して、現代日本において「当たり前」とされている価値観に疑問を呈し、痛快にぶった斬った内容となっている。各章の内容は、簡潔にまとめると次のような感じ。

第1章は、日本人の働き方について、「あれ?それって実はおかしくね?」と多方向から突っ込んだものとなっている。

 

なんで「例外」であるはずの残業が当たり前になってるの?

夜遅くまで働く「姿勢」が評価されるのって変じゃない?

どうして有給休暇を取らせてもらえないの?

「社会人としての常識」ってなんぞ?

消費者が「お客様が神様」を持ち出すのはどうなの?

 

──などなど、多くの人が無意識に考えないようにしたり、諦めてしまったりしている、仕事に関する「当たり前」。それらについて、真正面から突っ込んで疑問をぶっかけ、批判・説明している。

第2章では、「社畜」という言葉に焦点を当てている。

「社畜」を“会社と自分を切り離して考えることができない会社員”と定義した上で、どうして社畜が生まれてしまったのかを解説。それを「奴隷型」「ハチ公型」「寄生虫型」「腰巾着型」「ゾンビ型」に分類し、さらに、彼らを支えている6つの仕事観を挙げている。

第3章は、そんな「社畜」が生まれるメカニズムについて。「やりがい」志向の小学校教育から始まり、就職予備校的な大学生活、就職活動、新人研修、職場と段階を踏んだ洗脳によって、その会社に最適化された「社畜」が完成してしまうということだ。

第4章は、社畜的思考から脱出するための、脱社畜の考え方を8つ、提示している。「やりがい」にとらわれないこと、逃げるという選択肢を持つこと、会社の人間関係を絶対視しないこと、自分の価値観を大切にすること、など。

 

「当たり前」に疑問を抱く

本書で著者が繰り返し訴えているのは、「考える」こと。周囲の「当たり前」に流されず、自身の価値観と客観性を持つこと、疑問を抱くことだ。

多くの日本人が、今の自身の働き方に疑問や違和感を抱きつつも、それをどうにもできないでいる。著者は直接的な表現はしていなかったが、それは僕らが諦めてしまっていたり、妥協してしまっているからだと思う。

 

もちろん、ある程度の妥協は必要だろう。賃金、勤務時間、人間関係、そして、「やりがい」。それら全てが自分の理想通りの職場を見つけることは、極めて困難だ。

これに関して、「理想の職場」をテーマとしたラジオ番組*1で、津田大介(@tsuda)さんが、「金・人・やりがいという3つの働く要素があり、働くに当たっては、どれかが満たされている必要がある」という旨の発言をしていた*2。全ては無理だとしても、その3つのうち、どれが自分にとって重要かを意識することは、自分の働き方を見直す参考になると思う。

しかし一方で、それが嫌で嫌で仕方ないにも関わらず、我慢し続け、身体や精神を壊してしまっては、元も子もない。そこに適応してしまえば楽、という意見もあるかもしれないが、「見て見ぬふり」を続けるのは非常に危険だ。

「なんとかなるだろう」でうまくいけばいいが、そこで思考停止してしまうのならば、「どうにかならないだろうか」と考えてみてもいいのではないかと思う。

 

会社とうまく付き合うための、「脱社畜」

とは言っても、多くの人は忙しすぎて、そんなことを考える暇すらないのが現状だと思う。

目の前の仕事をこなすのに精一杯で、休日は仕事のことなど考えたくないか、もしくは、仕事関係の電話がいつかかってくるか意識しながら過ごさなければならないか。

僕らには、余裕がない。僕自身、病気で1週間ほど休んだことで、始めて自分の「働き方」を見つめなおすきっかけが持てた。

そのような意味で、本書は「働き方」について考え直すための価値観を提供してくれるものだと思う。自分で考える余裕はないけれど、通勤時間などで本を読む時間は確保のできる人に。文量もそこまで多くないので、ちゃちゃっと読み終えることができるはずだ。

もちろん、本書の内容を無批判に受け入れる必要はない。著者も、「社畜はすぐに辞めるべき!」「やりがいなんてくそくらえ!」と主張しているわけではなく、「その働き方、大丈夫?」「こんな考え方もありますよ」という別視点を用意してくれているに過ぎない。読んだ後、自分でどうするかを考えればいい。

 

同著者の『脱社畜の働き方』と比較すると、本書はその要素を短く濃縮した内容となっているような印象を受けた。そして、その主張は変わっていない。

提示されているのは、社畜として諦めるのでもなく、立ち向かうのでもなく、さっさと辞めてしまうのでもなく、会社とうまく「付き合う」ための、「脱社畜」という考え方。

そのような意味では、本書は「『脱社畜の働き方』エッセンシャル版」と言ってもいいかもしれない。お値段もお安くなっているので、「さくっと読みたい!」という方には、本書がおすすめだ。

一方、『脱社畜の働き方』では、著者の考え方の根幹となる著者自身の体験談が1章に渡って書かれている。また、それぞれの考え方が「社畜」と「脱社畜」の思考法として比較されており、非常に分かりやすい。こちらもおすすめなので、興味のある方はどうぞ。

 

 

その他「働き方」について考える本はこちら

*1:文化系トークラジオ Life: 2012/03/25「理想の職場」(常見陽平、水無田気流、大串尚代ほか)

*2:確か、「3つのうち2つ」だったような。うろ覚えですみません。