もはやおなじみとなった構図。
最近、テレビでも「壁ドン」という言葉をよく耳にするようになりました。
主に女性が男性によって壁際に追い詰められ、ドキドキキュンキュンジュンジュワ〜しちゃうようなシチュエーション……らしい。
ところがどっこい。
「壁ドン」と聞くと、別の構図が頭に思い浮かぶ人も少なくないはず。
えぐり込むようにして打つべし!打つべし!
こちらは主にアパートなどで、隣の部屋の騒がしさに耐えかねて壁を殴る行為のこと。「壁殴り代行」として広まっていた印象が強い人もいるのではないかしら。
おそらく、00年代後半頃にネットに親しんでいた人からすれば、「壁ドン」は後者の意味を持つネットスラングとしてのイメージがあるんじゃないかと思う。それゆえ、一部では「使い方がおかしい!」と火種にもなっていたとか、なっていなかったとか。
【やじうまWatch】勘違いはどっち? 「壁ドンの本来の意味」でネットユーザーが大激怒中 - INTERNET Watch Watch
同じ言葉でも、使う人によって全く別の意味をはらんでいる「壁ドン」。使われる中で意味が変わったのか、そもそも別の言葉だけど言い回しが同じ“同音異義語”的なものなのか、どっちなんだろう。
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非モテの怒りの体現──イラ壁、壁殴り代行
アパートなどの集合住宅で、隣室との間の壁を叩き、隣人への嫌がらせや抗議の意志を示すこと。
男女の恋仲や、それに類似する関係の同姓のいちゃいちゃとした仲睦まじい光景に遭遇した際に、どうしようもない、行き場の無い、心のもやもやを近くにある物。つまるところの「壁」にぶつけたい心の状態。
怒りに任せて壁を殴る行為としての「壁ドン」の発祥には諸説あるようですが、多くのページでは「以前から2ちゃんねるで使われていた」という論調が有力である模様。
2ちゃんねるなどの掲示板では、アパートやマンションで隣の部屋からキャッキャウフフ、もしくはギシアンといった音 (ラブラブのリア充のカップルが隣の部屋でイチャイチャしてる、エッチしてる)が漏れてくることに対し、「うるせえんだよ!」 と怒りを伝えるための壁殴りの意味で使われていました。
単なる省略語っぽくはあるけれど、2004年にはこんなレスもありますね。
757 :774号室の住人さん:04/10/23 22:48:27 id:QvQJvoIi
隣人がなんの音でうるさいか集計してみよう話し声、笑い声 1
音楽、楽器、重低音 1
足音 0
壁ドン 0
TV 0
洗濯機 0
深夜に 1
これらは、隣室の騒音に対する怒りを示す意味で「壁を殴る」という行為を冗談だか本気だかで表現したものであって、そこに恋愛シチュエーションとしての意味は皆無。
「イラ壁」*1や「壁殴り代行」*2といった類義語もありますが、そこにはやはり甘酸っぱい恋愛の香りなどなく、むしろ怨嗟や呪いの声が聞こえてきそう。そういえば、そろそろ壁殴り代行業の繁忙期ですね……*3。
【手書きアニメ】壁殴り代行CM【描いてみた】 ‐ ニコニコ動画:GINZA
既に懐かしくもあるネタだけど、たまにコミケでコスプレを見るような気も。どんどん頭身が高くなっていって、キモい。というか、ズルい。
また、上記ページ、壁ドン/ 同人用語の基礎知識によれば、「イラ壁」や「壁殴り代行」は元ネタを別にしながらも、同時多発的に発生した表現であるらしい。セスタスでオベ殴りしてたよ!*4
ただしいずれにせよ、そこにあるのは理不尽とやるせなさをぶつける対象としての「壁」であり、意味・使用方法としては大きな差はないように見えます。僕らの感情をいつでも受け止めてくれるおっきな存在は、いつだってそこにあったのです。壁さん、かっこいい。
恋愛で萌えるシチュエーション?──壁にドン、蝉ドン
妹が猫に壁ドンしてるww pic.twitter.com/3ZlNxsOc1x
— 桜乃美智 そめ (@0526_soMe) 2013, 12月 15
で、最近よく耳にする「壁ドン」がこちら。
この意味での使われ方は、2008年に声優の新谷良子が「萌えるシチュエーション」として「壁にドン」という言葉で紹介したのが初出と言われている。その後、渡辺あゆによる少女漫画『L♥DK』(『別冊フレンド』2009年3月号から連載開始)が火付け役となり、その映画化(2014年4月12日公開)を機に幅広い年代に知られるようになったともされる。少女漫画でよく見られるシチュエーションであることから、特に女子中高生は「壁ドン」をこの意味で用いることが多いという。
なるほろ。映画やら何やらの影響で広まるようになったんですね。ニコニコ大百科では、「壁にドン」として別項目に区分されている模様。「タンスにゴン」みたい。
主に脅迫やカツアゲの前段階として行われる。ただし、相手より身長が高くないと十分な威圧感を発揮出来ない。
少女漫画や乙女ゲームなど女性向け作品では、オレ様系の男性キャラクターが、好意を抱いている女性に対して行う場面がしばしば見られる。いわゆる「押し倒す」の垂直版と言える。
この用法の「壁ドン(壁にドン)」は声優の新谷良子の発言から広まったものであり、一般的には「壁際」+「追い詰め」「押し付け」などと表現される場合が多い。
これらの解説には決まって、声優の新谷良子*5さんが言及したという点について触れられれはいるものの、それがきっかけとなって広まったかどうかは不明っぽい。\ひ・あ・た・り・りょーこー♪/
マンガなんかだと、割と昔っから目にするシチュエーションですもんね。“主に脅迫やカツアゲの前段階”で。画面端ぃぃっ!!!!
ピカチュウで蝉ドンの可能性考えた結果。蝉ドンやりやすいようにコンパクトになってあげましょうね。 pic.twitter.com/Vt2nxEMX
— バケッチュウ企画部長Lai (@lai_rr) 2012, 10月 15
そして、元ツイートは非公開になっていますが、どうやら2012年10月15日の呟きから大喜利的に広まったらしいのが、「蝉ドン」を始めとする「◯◯ドン」シリーズ*6。ここまで来ると、恋愛も何もないですが。
当事者が対象者を壁際に追い込んで、片手や片足、両手を対象者のそばにつける状況が壁ドン。
蝉ドンでは当事者は対象者を部屋の隅に追い込んで、
両手両足を壁に着けてよじ登り、対象者を見下ろす状況である。
壁ドンでは対象者はしおらしくなるが、蝉ドンではもうドン引き状態に陥る。
タグ名の「蝉」はその壁に四肢全てを使って張り付く様子が、蝉に似ているからと思われる。
ちなみに、このピクシブ百科事典によれば、元ネタとして2008年のマンガが挙げられております。よく見つけてくるなあ……。
ネタ的に広まったという点では、先ほどの“怒りの壁ドン”と繋がる部分もあるけれど。この辺りの流れが他の媒体にも飛び火して、「萌えるシチュエーション」として広く認知されるようになったのが現状、なのではないかと思います。ただし、イケメンに限る。
(´・ω・`).。oO(僕も男装女子に押し倒されたい……)
2つの「壁ドン」は別のものとして生まれた?
— しぃちゃん (@120sanaa) 2012, 10月 22
こうして改めて確認してみると、“怒りの壁ドン”が“萌える壁ドン”としての意味を持つに至る過程が全く見えない。つまり、これらはパクリだとか元ネタだとかそんな事情は一切ない、別の言葉として流行り、話題に挙がるようになったものなのではないかしら。
というか、先ほどから何度も引用させていただいている同人用語の基礎知識でも、そのように結論づけていますね。
これらは、それぞれは別の場所で生じた言葉なのですが、使っている層がかなり近く、また元々怒りで壁を殴るなどは一般にもよく見られる普通の表現だったこともあり、よく事情を知らないネット民がごっちゃにして使って、どちらがどうとも言えない状況となっています。 また2012年のシチュ萌えとも一部で混ざったりして、ネットは壁殴りで大騒ぎ☆ の、混沌とした状況になりつつあります。
全く別のところから出てきた言葉がウェブ上で出会った結果、どちらか一方しか知らない一部のユーザーが、「え?そんな意味もあったの!?」と混乱しているような格好。
その結果としての、あちこちでの壁殴りフィーバー☆
壁さん、逃げて。超逃げて。
……なんだろう。ある意味では、生粋の「ネット民」と、生粋の「メディアっ子」の衝突とでも言える現象なのかな。
ネット民の総意を一手に受けた「壁殴り代行」と、素敵な恋愛を夢見る女の子の憧れとしての「イケメン」がぶつかり合っているような。>ムキムキマッチョの(´・ω・`)と長身美形のイケメンがぶつかり合っている(意味深)ような。
もうこれが結論でいいや(´・ω・`)