最近の若者は音楽を聴かない?自分にとっての「音楽」とは


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【GUMI】ディストピア・ロックヒーロー【毎秒1兆曲のMV】 ‐ ニコニコ動画:GINZA

 とある日の帰り道の電車にて。バッテリー切れでスマホが使えず、電子書籍リーダーで本を読む気も起きず、ぼーっとiPodで音楽を聴きながら、ふと思った。

「そういえば最近、集中して音楽を聴く機会が減ったなー」と。

 音楽と出会う場所と言えば、YouTubeやニコニコ動画などの動画サイト。そこにある作品の多くは、PVや編集された「動画」ありきのもの。ラジオやCDといった「音」のみに集中して、音楽に触れる機会が減ったような気がするのです。

 iPodに入れて聴くにしても、移動中の電車や車の中などが基本。あとは、ライブやクラブといった空間で、身体を動かしながら。大音量の中で飛び跳ねひゃっはー! しているような格好なので、とても「音」に集中して聴いているとは言えない。

 「音楽」と言えば、「最近の若者は音楽を聴かない」だの「ネットのせいで業界が衰退した」だのという話をたまに耳にします。実際のところはどうなのか分かりませんが、どうやらそう感じている人が多く、そのようなデータも出ている、と。

 僕個人の勝手な印象で言えば、違法ダウンロードや趣味嗜好の変化というよりは、単純に音楽に触れるきっかけ、選択肢が増えただけなんじゃないかな、と思います。

 というのも、この10年ちょっとで、僕個人に関してだけでも、結構な変化があったので。もちろん、趣味嗜好の変化もありますが、それ以上に、ある楽曲やアーティストを知るきっかけ、音楽の楽しみ方などが多様化しているように感じたので。

 というわけで、僕自身がどのように「音楽」と接し、消費してきたのかについて、自分なりに振り返ってみようと思います。ほぼ、自分語りの内容となっております。

 たまには、奏でられる「音」に耳を澄ませて聴いてみよう。

学校・テレビによって“聞かされて”いた小学生時代

 小学生の頃はそもそも、自発的に「音楽」を聴こうとするような習慣がありませんでした。鍵盤ハーモニカやリコーダーをピーヒョロ吹いていた当時の僕にとっての「音楽」とは、週1、2程度で学ぶ必修科目としての「おんがく」としてのイメージが強いですね。

 「大声を出して歌う」という行為が好きだったので、それ自体はとても楽しんでいたような記憶はあります。合唱曲中のソロパートに任命されて、鼻高々になっていたことも。

 運動会で “WAになっておど” ったり*1、応援歌が妙に気に入って、関係ないときにも口ずさんでいたり。人並みには「音楽」が好きな、普通の小学生でござった。

 大衆音楽としてのJ-POPを意識するようになるのは、6年生になってから。転入した学校の「朝の会」で流行の歌を歌う習慣があったので、その影響が強いかと。

 1日に1時間も見れば、「テレビ見過ぎ!」と感じるような家庭で育った……というか、自分自身もバラエティ的な「テレビ」には関心が薄かったので、90年代のJ-POPは、本当に有名どころしか分からない。

 それがようやく、その「朝の会」によって世間と繋がったようなものなので、良いきっかけだったのかなー、と。でも、小学生30人が朝から桑田佳祐を歌うのはどうかと思います! 弱気な性と裏腹なままに身体疼いちゃう!*2

 何はともあれ、小学生時代の僕にとっての「音楽」は、周囲から “聞かされる” ものでした。常に受け身で知り、消費するものであり、自発的に「聴こう!」ということはあまりなかったのでした。

 ……と思ったけど、ひとつあった。ゲーム音楽だ。よく考えれば、好きな曲の場面で、音量MAXにしてゲームボーイを放置しながら宿題をこなすような子でした。当時から「作業用BGM」を選曲していた模様。

ネットとラジオで曲を知り、歌詞にのめり込んだ中学生時代

 中学生時代の音楽体験に関しては、「平成元年生まれが過ごした2002年の文化圏(当時中1)」から始まる3つの記事でも書きましたが、人並み以上にはハマっていたかと。

 最初は、動画ありき。BUMP OF CHICKENの楽曲や、アニメのオープニングのパロディなど、一連のFLASH動画が火種となって、J-POPを積極的に聴くように。

 その後は、毎週、欠かさずラジオのCDシングルランキングをチェックし、気になった曲とアーティストは片っ端からメモ。週末になると、チャリを漕いで隣り駅のTSUTAYAまでダッシュしては、当日返却でレンタルするという生活を繰り返しておりました。

 もうひとつは、ゲーム音楽のアレンジサイト。自分の大好きなゲームの、本編とは違うアレンジ楽曲を、個人で制作・公開していることを知って、いろいろなサイトを巡っては、MP3、あるいはMIDIファイルでダウンロードしておりました。

 こちらも、気になるものは片っ端から、でした。隣り町のゲームショップでサントラを買いあさりつつ、ネットではそのアレンジ曲を落とすような形。めっさ充実しとる。

 この頃は、ネットにせよラジオにせよ、完全に自発的に音楽に触れ、聴きまくっておりました。正直、耳に入ってくる「音楽」を最も集中して聴いていたのは、この時かもしれない。

 きっかけは動画でも、借りてきたCDをコンポにセットしたら、集中する態勢に。最初の曲から最後まで通して流しながら、穴が空くほどに歌詞カードを見つめておりました。

 アルバムだと、1時間かそれ以上はずっと、ブックレットとにらめっこしていた感じ。気に入った曲については、その場で歌詞を覚えてしまうくらいにはリピートして聴き、口ずさんでいたような。やだ、なんか恥ずかしい。その集中力を勉強に活かせれば……。

 中学生時代は、耳で集中して「音」を聴きながら、その歌詞や世界観にも強い魅力を感じていた模様。たとえ意味が分からずとも。

一人で楽しむ音楽から、みんなで楽しむ音楽へ変わった高校生時代

 高校に入ると、登校のために交通機関を乗り継いで、30分〜1時間くらいかかる学校に通うようになったため、iPodが大活躍するように。

 中学時代、レンタルCDとアレンジサイト巡りで集めた音源を、父親のパソコンから自分のiPodにインポートして、いつでもどこでも聴けるように。登下校中に一人のときは、常にイヤホンを耳に突っ込んでいるような学生でした。図書館での勉強中なんかにも。

 また、音楽に最適化された動画コンテンツに魅力を感じるようになったのも、この頃。FLASHとはまた違う、静止画MADムービー*3などの存在を知って、そこから新しい楽曲やアーティストに出会うようになりました。当時の静止画MADの流行? として、PCゲームの曲や音ゲーの曲が多かったような。

 そしてやはり、ニコニコ動画の存在が大きかった。

 ニコニコ登場前から、コミックマーケットで自主制作の同人音楽CDを購入していましたが、東方アレンジ*4とボーカロイドの隆盛によって、即売会で買うCDの数が倍々増。20枚は当たり前、多いときには30枚超。お財布のお金はぶっ飛びんぐですよ。

 あともうひとつ。初めてライブに行ったのも、高校生の頃。

 どちらかと言うとバラード調の曲の多い、コンサート的なライブではありましたが、プロの生歌を初めて直に耳にして、とてつもなく興奮したのを覚えています。

 ただ、メジャーデビュー直後ながら、とても歌唱力の高いアーティストさんだったので、その後に別の人のライブに行った結果、「あれ?」となったり。大規模ライブとしては、2007年のAnimelo Summer Live*5が初です。シークレットゲストで高橋洋子さんが出てきたときの昂ぶり具合。

 即売会で、自分の好きなクリエイターさんから直接CDを手渡しで買うこと。ライブ会場で、ステージのアーティストさんと周囲の観客みんなで楽しむこと。

 いずれにせよ、それまでは音楽を消費し、聴くだけだった僕が、初めて音楽を直に「体験」するようになったのが、高校生時代の変化でした。

 ついでに、ちょいと違うジャンルの「音楽」ではありますが、自らそれを仲間と演奏していたのも、この頃ですね。多いときには1000人単位のお客さんの前で演じるという体験は、おそらくこの先にはないだろう貴重なものでござった。むちゃくちゃ楽しかった。

即売会でCDを大量購入していた大学生時代

 大学生時代は、あまり大きな変化はなく。相変わらずネットで同人音楽をあさりながら、即売会に行ってはCDを買いまくっておりました。

 ただ、一回の即売会にかける情熱が最もあったのは、この時ですね。コミケやM3*6のときには、出店サークルほぼ全てのサイトをチェックし、視聴し、新規開拓に余念がなかった。おかげで、引越しのときが大変でした。

営業車内で一人カラオケに精を出した新入社員時代

 メーカーに営業職として入社し、辞めるまでの1年半。働き始めれば、そりゃあ時間もなくなるもので、大学時代ほどの熱量を持って音楽を新規開拓するようなことはなくなりました。

 時間があるときには、たまーに近くでCDをレンタルすることもあれど、基本的には、アニメのテーマ曲やサウンドトラックなどをiTunes Storeでダウンロード購入する形。即売会に関しては、自分の好きなアーティストさんの新作を買いに行くだけ。

 音楽を聴くのは、主に仕事中。営業車の中にiPodを持ち込んで、FMトランスミッターにぶっ刺し、移動しながら流しておりました。

 そのため、自然と眠気を吹き飛ばすようなテンポの早い曲や、そらで歌える懐メロばかりを聴くように。毎日が、一人カラオケ。それはそれで、割と楽しかったけど!うふふ!

 あとは、どこか社会風刺的な歌や、自分の現状を肯定してくれるような歌を無意識に好んで聴いていたような。暴走Pの「ディストピア・ジパング」*7とか。back numberの「青い春」が、社畜のテーマにしか聞こえない。踊りながら羽ばたく為のステージでなんちゃら*8。病んでないよ。

 見方によっては、ただただ新しい楽曲を「消費」していただけに見える大学時代と比べれば、日常生活の「癒やし」的な要素として、純粋に音楽を楽しんでいたのかもしれない。そんな、新入社員時代。

音楽は死んでいないし、聴き方は変わっていくもの

 とまあ、長々と僕個人の接してきた「音楽」について書いてみましたが、消費の方法や嗜好の変化などはあっても、ずっと「音楽」は身近にあったし、使う金額も大きく変わっていないように思います。……いや、大学時代だけ飛び抜けているかも。

 自分にとっての「音楽」の聴き方を振り返って思うのは、一口に「音楽」と言っても、ジャンルは様々、楽しみ方も様々、消費も様々な方法があるということ。当たり前っちゃ当たり前。

 そして、たかだか一人の人間の約15年間を振り返ってみただけでこれなんだから、人によって全く違ってくるはず。

 今もラジオ・有線から音楽に出会う人もいるだろうし、フェスに参加することで新しくアーティストを知る人だっているでしょう。洋楽だけでも多種多様な文化圏があるだろうし、演歌界隈などには、また違ったカルチャーがあるのでは。クラシックだってそう。

 散々、語られてきたことだとは思いますが、結局のところ、インターネットを始めとする新しいメディアの登場によって、「音楽」を聴くための選択肢が増え、個人個人の趣味嗜好が細分化されていったというのが、この10年、20年くらいの話なのではないかと思います。

 だから、むしろ「音楽」全般に触れる間口は広がっているんじゃないかしら。もちろん、ここで書いているのは全て僕が触れて聴いてきた「音楽」に過ぎず、印象論でしかないので、実際のところは分かりませんが。

 ただ、「音楽業界の衰退」に原因を求めるとして、「最近の若者は音楽を聴かない」という説を一般化するには、ちょっと無理があるように感じます。だって、聴いてるもの。

 視聴者層は分からないとしても、YouTubeやニコニコ動画の再生数には如実に現れているし、リアルでも、カラオケランキングという形で目に見える。ロック・フェスティバルにしても、来場者数が極端に落ち込んだという話は聞きませんし。

 けれど、そのような「音楽」の消費の仕方に疑問を覚える人がいても、おかしくはないとも思います。純粋にコンテンツを楽しむというよりは、そこで発生するコミュニケーションに重きが置かれているような。その辺りも、気になるトピックではありますね。

 なにはともあれ、僕はやっぱり「音楽」が好きです。嗜好や消費の方法などに変化はあれど、広い意味での「音楽ファン」であることに変わりはない。

 冒頭にも書いたとおり、最近はあまりゆっくりと音楽を聴くようなことがなかったので、たまには、まったりと。学生時代にちょっと奮発して買ったヘッドホンも、イヤーパッドの部分が取れちゃったりしているので、そろそろ新しいものを買い直そうかな。

 

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