こちらの記事を読みました。筆者さんの主張をざっくりまとめると、次のようなものになるかと思います。
現代の若者は、情報収集能力に長けているという。幼い頃からインターネットに親しみ、検索すれば大抵の情報は手に入る。噂や流行の話題にも敏感で、なるべく自身が不利益を被ることを避けるため、情報収集には熱心に取り組んでいるそうだ。
しかし一方では、彼らの情報収集には「ある視点」が欠けている。それが、「誰のため、何のため」という視点だ。自分たちよりも上の、新聞の情報を話題とする世代と相対したとき、対応できるかどうか。そんな、相手と場面に応じた情報収集を行う発想を新入社員には持って欲しい。
──なるほど、コンサルティング会社の社長であるという筆者さんの言わんとしていることはわかるし、若者である自分としても納得のできる内容ではあります。
けれど、それは完全に「上の世代」である筆者の視点であって、件の「若者」である僕からしてみれば、いや、でもそれだけじゃないんですよ?」と突っこみたくもなるのです。僕らが新聞を読まないのは、「ネットがあるから」だけが理由じゃない。
そのあたりについて思ったことを、自分なりにまとめてみようと思います。
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情報収集の方法はいくらでもある
当方が新入社員に気づいてほしかったのは
《仕事のために行う情報収集の方法は何とおりもある》
ということ。
冒頭の記事では、このように書かれている。インターネットを使わずとも、「仕事のため」に情報収集を行おうとするのなら、別の選択肢もあるんじゃないの? という話。
取引先などでは上の世代と話す機会も多いだろうし、ならば、それに合わせた「新聞」という媒体の情報を追いかけることで、仕事を円滑に進めることができるはずだ、というもの。
これは、たしかに一理あると思う。僕自身、営業職として外回りしていたときは、その業界周辺の話題だけでなく、社会問題や時事のトピックについて話すような機会も多々あったので。
そして実際問題として、日々の業務に忙殺され、限られた時間の中で雑談のネタを仕入れようとするのならば、新聞という媒体は非常に優秀だ。
過去に書いた記事「新聞は「時代遅れ」で、インターネットは「最先端」なの?」でも触れたように、雑多な情報の中から取捨選択する技術を要するネットと異なり、プロによって厳選・検証された新聞には、確実性という大きなメリットがある。
でも、そんなことは僕ら若者だって知っている。むしろ、ゴミ情報で溢れかえったネットに普段から接しているからこそ、《情報収集の方法は何とおりもある》なんてのは当たり前の認識だ。
ただ、《仕事のために行う情報収集》という視点は、僕が新入社員のころは持っていなかったと思う。その点では、冒頭の記事はひとつの気づきを与えてくれるものであり、とても興味深く読めました。
どうして若者は新聞を読まないの?
では、若者は情報収集の方法がいくらでもあることを知っているはずなのに、どうして「新聞」という選択肢を選ばないのだろう。
「ネットのニュースで十分に情報は収集できるから」
冒頭の記事では、筆者さんが新入社員研修で質問したところ、このような答えが返ってきたらしい。わざわざ新聞を購読しなくとも、ニュースサイトを見れば最近の話題はだいたいチェックすることができる。それなら、別に新聞を購読する必要もありませんものね。
しかし、理由はそれだけじゃないとも思う。僕も上の新入社員さんの意見には賛成するけれど、もうひとつ大きな理由がある。そして筆者さんはおそらく、その理由・視点に気づいていないか、あえて言及を避けているのではないでしょうか。
それは、ずばり「お金」の問題です。
普段新聞を読まない M1層(20~34歳男性)が「新聞を読まない理由」としては、「料金がかかるから(62.6%)」が1位で最大の理由となっている。
上に引用したグラフは2010年の調査とのことですが、今もその認識はあまり変わっていないと思う。ただでさえ暇も余裕もない新入社員時代。紙面全部に目を通すかもわからないものに、毎月数千円も払うのは大きすぎる。もったいない。
その若者のMOTTAINAI精神を助長しているのが、インターネットの存在だ。子供のころからネットに触れていた僕らにとって、情報を含めたあらゆるコンテンツは、無料で手に入るものという印象が強い。
ゆえに、電子書籍やソーシャルゲームなどの数百円の課金ならまだしも、「月に数千円」という額は、どうしてもべらぼうに感じてしまう。
新聞という媒体そのものの魅力というよりも、そこで発生する金銭的コストの存在が、若者にとっては大きいんじゃないだろうか。実際、「普段は定期購読してないけれど、実家に帰ったら置いてあるから読む」という友達もちらほらいる。
ぶっちゃけ、新聞がなくてもなんとかなる
取引先「昨日の新聞1面で、当社の広告が大きく出ていたのを見てくれたかな」
他方で筆者は、新聞を購読しないことで発生する問題として、「このようなときに困るよね」と上の会話例を挙げていた。たしかに、これは困る。とはいえ、かなり限定された状況であるようにも見えるし、実際にこの場面に出くわす機会は少ないようにも思う。
もちろん、自社の属する業界周辺の話題について把握しておく必要はある。けれど、何か大きな動きがあれば、最低限は職場内で情報共有するような習慣・仕組みがあるだろうし(朝礼で話すとか、新聞・雑誌の切抜をまわすとか)、自ら購読するまででもないように思う。
同時に、社会情勢や時事問題に関しても把握しておくべきだと言える。しかし、そういった大きなニュースであれば、ネットやテレビのニュースでざっと確認しておけば事足りるという実感もある。僕自身、営業員時代は新聞を読んでいなかったけれど、困った覚えはないので。
むしろ逆に、「ネットでニュースをチェックしていて良かった」と感じたことはある。新聞について言えば、日経・朝日・毎日・読売あたりが主要な媒体であり、それ以外が話題に出ることは少ない。つまり、みんなが同じものを読んでいるため、自然と話の内容は似通ってくる。
対するインターネットはどうかと言えば、同一のトピックについてもさまざまな切り口から語られており、新聞とは異なる目線で情報を得られる。なので、「そういえば最近は◯◯が話題ですねー」と話を振られたとき、「あれにはこういう話もあるんですよー」などと話題を広げやすい。
そう考えると、若者は「共通の話題」を共有するツールである新聞から情報を得るよりも、むしろ「話題の多様性」を武器にネットを介して情報収集し、上の世代に切り込んでいくのもありなのではないだろうか。
相手に合わせて話をすることも大切だが、新聞にはない視点を提供し話を広げることによっても、円滑なコミュニケーションは図れると思う。「その話について、学者の◯◯さんがブログでこんなことを書いていたのですが、どう思われますか?」みたいな。
紙を話題にする世代に対して、あえて電子で立ち向かう。お互いに同じ話題を共有していることが前提になるけれど、それさえできていれば、互いに知らない情報を持ち寄ることにもつながるため、有意義な情報交換ができるんじゃないかしら。
もちろん場合によっては、上司や先輩、取引先の相手の話に合わせることも必要になってくる。──というか基本的に、組織とはそういう場所なのかもしれない。
けれど、営業でも打ち合わせでも、仕事では時として「個性」を発揮する必要に迫られる場面がある。そんなとき、周囲に合わせて誰もが新聞で読んでいる当たり前の情報を提示するよりは、ちょっとニッチな情報を持ち寄った方が刺激的だし、おもしろがられるはず。
必ずしもそれが結果に結びつくと限らない。けれど、少なくとも自然なままの自分の姿で話ができるので、「合わせる」のが苦手な人の処世術としては悪くないように思う。