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ぐるりみち。

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仕事・勉強・趣味で使える42のアイデア集!知的好奇心もくすぐる啓発本『アイデア大全』感想

 帯に書かれた文句「一生使える必携の書」は、大げさじゃないのかもしれない。――本書を読み終えて、いの一番にそんな感想を抱いた。それほどまでに充実した内容であり、今後の学びの指針とするにも最適の1冊だと感じられたのです。

 そして同時に、ちょっとした高揚感もこみ上げてきた。300ページにも渡って列挙された42の発想法を知ったうえで、これからどれを参照し、実際に利用するか。また、本書を読んでいて気になった数々の学問や書物の中から、どれに手を付けてみようか――と。

 そのように、自分としては珍しく意識高めに「今後」に思いを馳せてしまうくらい、最高の読後感だった1冊。それがこちら、読書猿@kurubushi_rmさんの『アイデア大全』でございます。

 

 

 少なからず普段から「書評」に類するブログを読んでいる・書いている人ならば、きっと少なくとも一度は筆者さんの名前を目にしたことがあるはず。

 古今東西の書物を読みあさるにとどまらず、それらを独自の視点で体系化しまとめ上げている海千山千のブログ読書猿 Classic: between / beyond readersの管理人さん。その初の著書となるのが、この『アイデア大全』です。

 読み終えた感想としては、上記のとおり。学ぶ気力さえあれば「マジでこれ、10年単位で使い倒せるんじゃね?」と思えるほどに充実した「発想法の辞書」であり、それでいて「知的好奇心をくすぐる啓発本」とでも呼べそうな代物。

 仕事だろうが趣味だろうが学問だろうがブログだろうが、すべての「創造的活動」に従事する人におすすめできる、渾身の1冊でございます。

 

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アイデアの“辞書”でありながら、1冊の“読み物”としても楽しめる人文書

 さて、冒頭でだいたい書いてしまった感じもありますが、ざっくりと本書のご紹介をば。この『アイデア大全』は読んで字のごとく、 “アイデア” を生み出すための「発想法」をまとめ上げた、一種の「辞書」となっております。

 取り上げられている発想法の数は、全部で42。それも文学や哲学のみならず、科学技術・芸術・心理療法・宗教・呪術といった幅広いジャンルの手法が参照されているため、読んでいてまったく飽きがこない。古今東西、新旧さまざまな手法が登場するので、否が応でも知的好奇心を刺激される。

 

 しかも、個々が独立した「発想法」を一本調子に――それこそ “辞書” のように列挙しているわけではないのも、本書の特徴。「自分に尋ねる」「視点を変える」「矛盾から考える」といった分類で章別されてはいるものの、本文中では別の発想法や学者との関連性にも言及した “読み物” となっている。

 というのも、1冊を通してみると「発想法の歴史書」のようにも読めるのです。実際、巻末には「アイデア史年表」として、書籍内で紹介した発想法と出来事が年代順にまとめられているほど。読み終えてから年表に目を通すと、それとなく全体の流れがつかめておもしろかった。

 

 言い換えれば、本書は一見すると「アイデアの辞書」のような装丁・構成となっているようでいて、その本質は「ヒトの知的活動とそれに関わる “発想” の過程・手法を紐解いた概説書」であり、それをすぐさま行動に移すための実践書でもある。

 まえがきからして、 “本書は実用書であると同時に人文書であることを目指している” と書かれており、1冊を通して興味深く読むことのできる「読み物」であることは間違いありません。僕自身、この手の分厚い本にしては珍しく夢中になり、最後まで集中して読み切ることができたくらいなので。

 

 これまでにない新しい考え(アイデア)を必要としている人は、できるのはわずかであったとしても現状を、大げさに言えば世界を変える必要に迫られている。そのために世界に対する自身のアプローチを変える必要にも直面している。

 この場合、必要なのは、ただ〈どのようにすべきか〉についての手順だけでなく、そのやり方が〈どこに位置づけられ、何に向かっているのか〉を教える案内図であろう。

 それゆえに本書は、発想法(アイデアを生む方法)のノウハウだけでなく、その底にある心理プロセスや、方法が生まれてきた歴史あるいは思想的背景にまで踏み込んでいる。

 

 見方によっては本書は、「個々の手法を読んで “知る” 」だけでは終わらせず、「『アイデア』に関連する歴史や背景をも紐解きながら全体を “理解する” 」よう、読者に仕向けているようにも読み取れる。……それを血肉とできるかどうかは、個々人の問題となってくるでしょうが。

 

すぐに使える実践書であり、知的好奇心をくすぐる啓発本

 そんな『アイデア大全』で紹介されている42の「発想法」は、「よく知ってる!」というものもあれば、「まったく聞いたことがない……」と感じられるものまで、本当にさまざま。当然、人によって「知ってるor知らない」の振り幅はあるでしょうが、本書の場合はそれがはっきりと現れやすいのではないかと。

 そりゃあなんたって、文学や哲学だけでなく、宗教や呪術なんてものまで参照されているくらいですし。聞き慣れた「ブレインストーミング」の考案者による別の発想法があれば、これまたおなじみトヨタの生産方式を生んだ「なぜなぜ分析」があり、かと思ったら、突如としてウォルト・ディズニーやらシュルレアリスムやら平賀源内やらが登場する。……わけがわからないよ!

 

 そのように、ただ列挙されるだけではよくわからないそれら手法も、その背後にある “アイデア” 由来の関係性にまで本書は言及しているため、理解を深めやすい。複数の発想法同士の「つながり」を意識することで、それがどのように育まれてきたかにも思いを馳せることができる。

 また、あまりに幅広く、それこそ「学問」に限らず多岐にわたる発想法・事例が参照されているため、誰でもひとつは「知ってる!」と感じられる手法があるのではないかとも思えてくる。

 例えば、文学・芸術分野では「デペイズマン」、生物では「バイオニクス法」、数学では「ポアンカレのインキュベーション」、映画ファンであれば「ルビッチならどうする?」といった手法が登場。読んでいる中で、自分が学んだ・触れたことのある分野が目に入る人も多いのではないかしら。

 

 実際、これまでろくに勉強してこなかった僕でも、「呪術だ! 大学でちょっとかじったやつだ!(うろ覚え)」などと、ピンとくる手法がいくつかあったので。……そのように考えると、本書はどこか “大学” っぽいというか、 “いろいろかじれる” という点で(良い意味で)大学のシラバスっぽくもあるような……。

 そういった点では、本書は実践的な「アイデアの辞書」としては間違いなく有用であると同時に、「知的好奇心をくすぐる啓発本」として読むこともできるように感じました。仕事や学問の場ですぐに活かせる「アイデア本」として使いながら、それ以外の分野でも興味関心を広げてくれそうな1冊。

 なればこそ、この『アイデア大全』は、ビジネスマンはもちろん現役大学生にも勧められるし、長年にわたって使い倒すことのできる本だと思います。本棚、あるいは電子書籍なら常にスマホにぶち込んでおいて、折に触れては読み返したい――というか、手元にあれば読み返したくなる、そんな本です。

 

 

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