映画『羅小黒戦記~ぼくが選ぶ未来~』を観てきました。
前々からネット上で評判を聞いていて、ずーっと気になっていた作品。業界でも注目を集めているという噂の中国アニメの、待ちに待った日本語吹き替え版。それが本日から公開されるということで、居ても立っても居られずに映画館へ突撃してきた格好です。
いやー、想像以上におもしろかった!!
何と言っても、観てきた人が口を揃えて話していた「アクションがすごい」の “すごさ” が期待以上。キャラクターもみんな魅力的で、声を当てた声優さんの演技も随所で光っていました。花澤香菜さんの少年ボイスは言わずもがな最高だし、宮野真守さんvs櫻井孝宏さんの戦闘シーンの掛け合いがアツいのなんの!
ってなわけで、以下ざっくり感想をば。
スポンサーリンク
話題の中国アニメ『羅小黒戦記』って?
『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ)』という作品の存在を知ったのは、2019年末のこと。
当時のタイムラインにちらほらと流れてきていたツイートによれば、何やら「都内のミニシアターで上映している中国のアニメ映画がヤバい」との話。それもコアな映画ファンのみならず、日本のプロのアニメーターさんまでもがアツい言葉で絶賛しているじゃありませんか。
「これはただ事じゃないぞ……!」と思いつつも、なんやかんやで観に行くタイミングを逃してしまった自分。その後しばらくは存在を忘れていたのですが、今年の5月、ITmediaにて解説記事が掲載されているのを発見。こちらを読んで、改めて「観てみたい!」と思うようになりまして。
記事タイトルにもあるとおり、本当に「異例」のヒットだったらしい本作。というのも、この『羅小黒戦記』の上映はもともと、中国で人気の作品を在日中国人に楽しんでもらうための「テストケース」だったのだとか。
それが日本人の観客の目にも留まり、SNSで口コミが拡散されて話題に。当初は「とりあえず作った」だけだったという日本語字幕を1週間で修正し、パンフレットも作成。上映館も各地に広がり、外出自粛期間に突入するまで、公開から半年以上にわたる異例のロングランヒットとなったのだそうです。
しかもこの『羅小黒戦記』。
もともとはWebアニメなんですって!
劇場版の監督も務めているMTJJさんが、銀行口座に残っていた3,000元(約45,000円)を元手に半年かけて作り上げた、個人制作のFLASHアニメ。2011年に第1話が公開され、徐々に人気が広がり、やがてはbilibili動画で2.3億回再生されるほどの人気作品になったのだそうです*1。さすが中国……桁が違う……。
そんな背景を持つ作品の劇場版が、大陸から海を渡り、日本でも実験的に公開されたところ注目を集め、豪華声優陣による日本語吹替版が制作され、全国上映されるほどになった――。そんな経緯を知ると、むちゃくちゃロマンを感じるし、気になってきません……?
はい! 僕は、めちゃくちゃ気になってました!!
ってなわけで、早々に公開初日に観てきたわけです。
人間と妖精の物語
こんにちは!クロです(^-^)
— 『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ)』11/7全国公開 (@heicat_movie_jp) 2019年9月21日
ツィッターをはじめました!
9月20日から9月29日まで、池袋HUMAXシネマズにいますよ。
観に来てくださいね。ニャー(//∇//) pic.twitter.com/eBneJkrexi
最初に目にした本作のビジュアルが「目が大きな黒猫が描かれたポスター」だったため、当初はほんわか系アニメかと思っていた自分。
どことなくジブリっぽい雰囲気(というたとえは安直過ぎる気もしますが)もあるし、「猫がかわいい!」「猫が猫の動きをしていてヤバい!」という感想も目に入っていたので、動物と人間との絆か何かを描く作品なのかなと、むちゃくちゃ雑な想像をしていました。
ところがどっこい。よくよくタイトルを見てほしい。
『羅小黒戦記』――そう、「戦記」なのです。
とはいっても、中世ファンタジー世界の戦乱の世を描いているとか、歴史上の偉人が人理を守るためにどったんばったん大騒ぎするわけではありません。舞台は現代だし、実際に猫はかわいい。でも同時に、「戦い」もとい「アクション」が見どころの作品ではあることは間違いありません。
――と、自分の言葉であれこれ説明すると長くなりそうなので、ここで公式サイトからストーリーを引用させていただきます。
人間たちの自然破壊により、多くの妖精たちが居場所を失っていた。森が開発され、居場所を失った黒ネコの妖精シャオヘイ。そこに手を差し伸べたのは同じ妖精のフーシーだった。
フーシーはシャオヘイを仲間に加え、住処である人里から遠く離れた島へと案内する。その島に、人間でありながら最強の執行人ムゲンが現れる。フーシーたちの不穏な動きを察知し、捕えにきたのだ。
戦いの中、シャオヘイはムゲンに捕まってしまう。
なんとか逃れたフーシーたちはシャオヘイの奪還を誓い、かねてから計画していた「ある作戦」を始める。 一方、ムゲンはシャオヘイとともに、人と共存する妖精たちが暮らす会館を目指す。
シャオヘイは、新たな居場所を見つけることができるのか。
(映画『羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来』公式サイトより)
そして、人と妖精の未来は、果たして――
「妖精」と聞くと西洋の「フェアリー」的な存在を想像する人もいるんじゃないかと思いますが(自分がそう)、どちらかといえば「動物」に近いイメージ。主人公・シャオヘイは「黒猫の妖精」ですし、普段から人型の妖精も多い様子。
あるいは、精霊とか、妖怪とか、あやかしとか、そういった存在と言い換えても良さそう。トトロ的に「へんないきもの」と呼ぶ――のはさすがに失礼ですね、はい。
あまり他の作品を例に挙げるのはアレかもしれませんが、作品構造としては『平成狸合戦ぽんぽこ』をイメージするとわかりやすいかも。都市化によって居場所を奪われた生き物たちの物語。作中で描かれる「共存か、反抗か」という種族間のテーマも普遍的だし、観ていてわかりやすい王道展開でした。
奥行きを感じる、立体的なバトルシーンがアツい!
普遍的なテーマのもと、魅力的なキャラクターたちを中心に据えて描かれる、王道のストーリー。と同時に、先ほどから繰り返しているとおり、「アクション」がとにかくすごい&アツい。それがこの『羅小黒戦記』の大きな魅力です。
冒頭の数分間、森の中をちょこちょこと走り回るシャオヘイの動きに、早くも目を奪われてしまったほど。木々を縫うように軽やかに駆け回っていたと思ったら、続くシーンで舞台は都市部の路地裏に。雑居ビルの隙間を人間から逃げ隠れるように駆け巡る様子ひとつ取っても、やたらと動き回るから、見ていておもしろいんですよね……!
そして、圧巻のバトルシーン。
YouTubeでも公開されている以下の本編映像は、作中で幾度となく描かれるアクションシーンの、ほんの “さわり” の部分です。
ご覧のとおり、「めっちゃ動くやん!?」とびっくり。
一見するとキャラクターの造形はシンプル。線も太く、荒削りで、それを補うようにアクションを豪快に描いている……ようにも映るのだけれど、激しい動きの中でも一つ一つの動作を目で追うことができて、絶妙な緩急も含め丁寧に作り込まれていることがわかる。あと、奥行きを感じさせるカメラワークがすごい。
しかもこれだけ動く映像が、映画館の大スクリーンで見られるわけです。さらに、前述のとおりこれはあくまでも “さわり” なので、終盤は迫力と臨場感がさらにパワーアップ。大都市の街中や地下鉄で繰り広げられるアクションは、期待以上……というか予想外にすさまじかったです。もっかい観たい。
加えて、映画館は音響もヤバかった。
自分は立川シネマシティの「絶対領界音域 極上音響上映」で観たのですが、これが普段の「極上音響上映」以上に臨場感マシマシに感じられたんですよね……! 全身を揺さぶるような衝撃音に加えて、シーンに合わせて「音」にも奥行きが感じられるような。スクリーンに軽く引き込まれるような感覚すらあった……というのは、さすがに言い過ぎかしら。
あ、それとアレです。
やっぱり、特殊能力バトルって最高だよな!
そう、能力! 本作は妖精ごとに御霊系・空間系・造物系――といった能力を持つ、バトル漫画的な世界観らしいのです。かたや人間嫌いの妖精が「木」を操り、かたや人間と妖精の共生をめざす人間が「金(鉄)」を使って、壮絶な戦いを繰り広げる――という対比もアツい。
黒猫の妖精・シャオヘイがめちゃかわ
あと忘れちゃいけないのが、「シャオヘイがめっちゃかわいい」ということ。
いや、言わずもがなというか、予告編をちらっと見ただけでもかわいいのだけれど、年相応の素直さと、喜んだり、じゃれたり、考えたり、動き回ったりしている本編での様子を見た後だと、その一挙手一投足がとてつもなく愛らしく感じられるんですよね……。
ってか、そもそも「少年」と「猫」の掛け合わせって最強すぎでは!? 「本当に猫っぽい動きだ!」と感嘆させられた黒猫の姿のみならず、少年の姿になったときにも、節々から「猫」ならではの動作が垣間見えるのがすごい。ズルい。かわいい。しかも花澤香菜ボイス。花澤さんの少年声……っょぃ……。
そんなこんなで、本日公開の映画『羅小黒戦記~ぼくが選ぶ未来~』(公式サイト)のざっくり感想でした。
世間的にはまだまだ『鬼滅の刃』が大盛況な昨今。まだまだそのムーブメントは続きそうですし、タイミングが合えば、僕ももう1回は『無限列車編』(感想記事)を観に行きたい気持ちもあります……が! それはさておき!
そればかりでなく、「ロシャオヘイセンキもいいぞ」と、声を大にして叫びたい今日この頃。キャラクターが可愛らしく、ストーリーもわかりやすく、中盤はコミカルなシーンも多くて客席から笑い声が漏れるほどだったので、親子でも安心して観られる作品だと思います。
もしお時間がありましたら、あるいは何か少しでも惹かれる要素がございましたら、ぜひとも映画館に足を運んでみてください。『三体』といい本作といい、最近は中国のエンタメがアツい!
今週のお題「最近見た映画」
© Beijing HMCH Anime Co.,Ltd
関連記事
- 映画「Fate[HF]」3章のナインライブズが最高すぎて泣いてしまった
- 映画『ドロステのはてで僕ら』感想|緻密なギミックと臨場感に興奮
- 死後の世界はVR!? ドラマ『アップロード』で描かれる“デジタルなあの世”がおもしろい
*1:パンフレットP.40より