錦糸町『コシャリ屋コーピー』で初体験したエジプト料理に「沼」の入り口を見た


カレーでもチャーハンでもない…
コシャリをご存知か?

 

聖地巡礼ができてご満悦なオタクと、店員さんの「聴く力」に慄くライター

時は2月下旬。憎きスギ花粉との戦いが始まり、長時間の外出は避けたくなる季節。しかしこの日、僕には出かけなければならない理由があった。

メシである。

きっかけは、大学時代の友人からの連絡。曰く、気になるお店があるが、1人で入るにはハードルが高い。しばらく会っていないし、近況報告ついでに付き合ってもらえないだろうか――。そんなお誘いだった。

もちろん!
行く行く行く〜〜〜!!

というわけで、友人に連れられてやってきたのは錦糸町。南口から徒歩3分、多国籍料理のお店が散見される路地の2階に、そのお店はありました。

その名も、「コシャリ屋コーピー」さん。

なんともかわいらしいお名前ですが、それよりも気になるのが「コシャリ」という言葉。コシャリ……小シャリ……シャリ……? もしかして……シャリタツさん……??

「オレスシー!」なビジュアルが脳裏を一瞬よぎるも、お店の外観はジャパニーズでもスパニッシュでもございません。店内へと一歩足を踏み入れれば、そこはごく普通のバー……と見せかけて、どことなく歴史と神秘の香りが漂う空間。カウンターにましますスフィンクスを見れば、一目瞭然でございましょう。

――そう、エジプトでございます。

コシャリ専門 コシャリ屋コーピー(エジプト料理)

コシャリ」は、エジプトの国民食。

店内のメニューにもイラスト付きで由来が書かれていましたが、安価で腹持ちが良く、現地では日常的に食べられていて、それでいてバリエーションが豊富な、文字どおりの「ソウルフード」なのだとか。「日本のラーメン屋さんや牛丼屋さんのようなポジションである」との説明を聞けば、イメージしやすくなる人も多いかもしれない。

さて、物腰のやわらかな店員さんにいざなわれるようにして、カウンター席へと着席した僕ら。そこで突如、友人氏が思わぬ行動に出た。

自分がメニュー表に手を伸ばす横で、唐突にバッグからぬいぐるみを召喚する友人氏。「ぬい……?」と疑問符を浮かべることになった僕に対して、しかし店員さんの反応は違った。卓上のふわもこな存在を認めるやいなや、「ファンの方ですか?」と瞬時にカットイン。ど、ど、どゆこと〜〜〜!?

2人の会話を聞くに、どうやら少し前にこちらのお店がテレビで紹介された際、その番組内で友人氏の「推し」が来店。以来、友人氏以外にもファンが「聖地巡礼」に訪れているらしく、店員さんもすっかり詳しくなって、ファンらしき方を見かけたらあれこれお話をしているのだとか。

「(ライブの)チケット当落、どうでしたか?」などと話を振るなど、ガチで情報を収集していることが窺える話しぶり。いや、あるいはファンの方がそれなりに来店していて、その会話のなかで聞いたのかもしれない。

いずれにしても、「お客さんから言葉を引き出す」ことに慣れており、それも相手の居心地が悪くならないよう、絶妙な距離感で会話のキャッチボールをしていることがわかる店員さんの話しぶりに、「プロだ……!」と勝手に感動しておりました。インタビューの参考にしよう……。

コシャリとは、混ぜて、混ぜて、混ぜるもの

入店後の思わぬ展開に、しばらくは「ほえ〜!」などと横で相槌を打つだけの「付き添いの男性A」と化してしまっていた自分。しかし、それはさておき、メシでございます。

さあ、何を食べようか――と改めてメニューを開くと、その種類の多さに目が泳ぐ。基本の「コシャリ」をベースとして、多種多彩なトッピングが加わった「〇〇コシャリ」がずらっと並んでいるのだ。

メニューは公式サイトにも掲載されています

「炙りチーズコシャリ」のような牛丼屋っぽいメニューがあるかと思えば、「スパイシーチキンコシャリ」はカレー屋っぽい。かと思えば「アボカドサワークリームコシャリ」なるオシャな横文字があり、辛味成分マシマシの「激辛コシャリ」や栄養満点の「完全食コシャリ」もある。さらには、「アヌビスセット」「オシリスセット」などのセットメニューもある。やりてえ……「オシリスセットを召喚!」とかやりてえ……!

普段はそうそう接する機会のない異国の料理、しかもコシャリは初体験ということで、変わり種に挑戦したい気持ちもありました。けれど、気になっていたラクダ肉のコフタ(肉団子)が、残念ながらこの日は取り扱いなし。それならば、ということで「温玉炙りチーズコシャリ」を注文することに。温玉LOVE。

そうして出てきたのが、こちら。

温玉炙りチーズコシャリ(880円)

温玉炙りチーズコシャリ。ちなみにベーシックな「コシャリ」は550円。牛丼よりはちょっと高いけれど、唯一無二の専門店でこのお値段はかなり安いのでは……?

遠目から見ればチャーハンっぽくもある……けれど、よくよく眺めてみよう。上部に鎮座する温玉様と、フライドオニオンの群れの下、皿の上に広がるライスに紛れて、何やらいろいろなものが混ぜ込まれているように見える。米とパスタが目立つけれど、それだけじゃない……?

不可思議な存在をまじまじと見つめていると、ここで店員さんによるレクチャータイムがスタート。ざっくりまとめると、この「コシャリ」という存在とは、次のように向き合えばいいのだそうだ。

  1. まず、トマトソースを全部かけます
  2. 全体に馴染ませるように混ぜます
  3. 続いて、めちゃくちゃ混ぜます
  4. さらに、もっともっと混ぜます
  5. 良い感じになったら、「ダッア」をかけます
  6. もう一度混ぜたら、どうぞめしあがれ

メニュー表の説明によれば、そもそも「コシャリ」とは「混ぜ合わす」という意味なのだとか。

とにかく混ぜて混ぜて、そこに酸味ソースである「ダッア」を投下。店員さん曰く、現地ではこの酸味ソースをびちゃびちゃになるくらいかけるのが当たり前。「ダッアをかけまくらないと、コシャリとしては完成しない」らしい。そしてテーブルにはもうひとつ、辛味ソースの「シャッタ」も用意されており、こちらもお好みでかけることを勧められました。

こちらのトマトソースを一気にかけます。

ともあれ、まずは様子を見よう。酸味ソースと辛味ソースはかけずに、「トマトソースをかけて混ぜた」状態のコシャリを一口、パクっと食べてみる。……うん、おいしい。普段はあまり使わない表現ですが、この後の展開を考慮して、あえてこう申し上げましょう。

――普通においしい。

ライスとスパゲッティ、マカロニと豆類、そしてフライドオニオンやら何やらが混在する複雑怪奇な皿上の宇宙を、よーく混ぜ込んだトマトソースの味と風味が、うまい具合にまとめてくれている。そんな感じ。この時点で食感もおもしろかったのだけれど、その説明は後ほど。

酸味と辛味を追加したら、「沼」の入り口が見えてきた

さて、トマトソースに関しては「イケる」と判断できたので、問題の「ダッア」と「シャッタ」を投下してまいりましょう。

先にぶっちゃけますが、自分の舌は、「酸味」や「辛味」を好んで追加するような味覚感覚を持ち合わせておりません。特に「辛味」に関しては、どちらかと言えば「苦手」な部類に入る。ピリ辛程度ならうめえうめえ言いながら食べるけれど、好き好んで辛いものを選ぼうとは思わない。そんな感じ*1

混ぜて混ぜて混ぜまくった図。

そんな自分の舌にとっては、明らかに不慣れなタイプの味付けだと思われる、異国の酸味ソース&辛味ソース。

おそるおそる、まずはダッアの容器を手に取り、皿の上から円を描くように、ぐるりと1周かけてみる。シャッタも同様にかけたら、すでに混ぜまくってぐちゃぐちゃになっているコシャリを、さらに混ぜる。混ぜる。混ぜていく。こうなりゃ全力である。混ぜて混ぜて、混ぜまくる。

いざ、ドキドキしながら口に入れてみると……え!? うめえぞ!?!? まったく「苦手」に感じるような瞬間はなく、とてもおいしい。それどころか、先ほどの「普通においしい」の感覚を60点とするなら、一気に20〜30点は加点しても良いくらい、驚くほどにおいしくなったんです!!

味にコクが出たというか、酸味が強まったことによって、他の味も引き立てられて強く感じられるようになった。そんな気がする。――これはいける!! いけるぞ!!! と調子に乗って、さらにダッアを投下。先ほどよりも量を増やして、2周分ほどかけて食べてみても、まだまだおいしい!! 味変たのしい!!!

一方、辛味ソースのシャッタに関しては、「ん? ちょっと別の風味が追加された?」くらいの感覚。どうやら少量ではほとんど辛さを感じられないらしく、こちらも2周分ほど追加したところで、ようやくピリ辛未満の「ちょい辛」くらいは感じられるようになった。ピリ辛未満なので自分でもぜんぜんイケるし、何なら味が変わって、これまたおいしい!

つまり、2つのソースと無数のトッピングを取り揃えたコシャリは、カスタマイズが自由自在であり、味変が無限に楽しめる料理である。そう捉えてしまってもいいのかもしれない。この日はさすがにそれ以上のソース追加はやめておいたものの、これは自分にとっての最適解を見つけたくなりますね……! 沼か!? 沼だ!!

ヘルシージャンキースパイシーなエジプトめし

メシの感想としてはそろそろ長くなってきましたが、改めて「コシャリ」がどのような料理なのかを確認しておきましょう。以下、サイトから引用させていただきます。

お米・ショートマカロニ・スパゲッティ・バーミセリ・レンズ豆・ひよこ豆をベースにスパイスを利かせたトマトソースを乗せ、好みで酸味ソースのダッアと辛味ソースのシャッタをかけながら混ぜて食べるエジプトの国民食です。価格も安くエジプト中の庶民に親しまれているソウルフードであり、コシャリ屋コーピーは、そんなヘルシージャンキースパイシーなエジプトめし コシャリの日本初の専門店です。

コシャリとは | コシャリ専門 コシャリ屋コーピーより)

ヘルシージャンキースパイシーなエジプトめし。声に出して読みたいフレーズだ! ……という感想は置いといて、先ほど「食感」の話をちょろっとしましたが、これがまた食べていて楽しい要素のひとつ。

あまりにもいろいろなタイプの食材が入っているので、言葉で説明するのは難しいのですが……あえてたとえるなら、「パラレルワールドのそばめし」と言えるかしら……。あ、いや、“パラレル”も何も、同じ世界の異国の料理なのですが、もののたとえということで……すみませんすみません、痛いから千年パズルは投げないで!

それと気になっていたのが、食材に紛れるように入っている、小さな黒い物体。パッと見たかぎりでは「塩こんぶ的な何か」にしか見えていなかったのだけれど、これがバーミセリなんですって! 慎重につまんで食べてみると……おお? たしかに麺の食感だ! マカロニとスパゲッティの食感にまぎれていて気がつかなかった……!

黒いのがバーミセリ。「天使の髪の毛」とも呼ばれるそうな。

また、お米・ショートマカロニ・スパゲッティという炭水化物のトライアングルアタックも、「白米がないとおかずが進まない」くらいにお米が好きな自分にとっては、至福の攻撃。こちらも店員さんの説明によれば、この複数の食材の存在こそが、「腹持ちの良さ」の理由のひとつらしい。それぞれ消化にかかる時間が異なるため、満腹感が長時間続くのだとか。なるほどな〜〜〜!?

現時点では2023年のベストと断言できるほどにおいしく、自分好みの味で、まったく知らない料理とのファーストインプレッションとしては、近年稀に見るほどの大当たり。近所にあったら、間違いなく通ってましたわ……!! 無限にコシャリソングが流れているお店の雰囲気と、物腰のやわらかい店員さんとの距離感も良い感じ。お気に入りのお店として、Googleマップに登録しました。絶対に再訪します!

「ラクダ」は“始める”もの。

 

r.gnavi.co.jp

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*1:ついでに付け加えると、生のトマトは大好きだけど、トマトソースやケチャップはそうでもありません。決して苦手ではないものの、「好んで増やそうとは思わないかな……」くらいの感覚。ハンバーガーやスパゲッティなどの味付けに使われていたらそのままおいしく食べるけど、自分でプラスすることはございません。コシャリのトマトソースに関しては、こんな自分でも、前述のとおり「普通においしい」と思えたことをお伝えしておきます。トマトソース感もケチャップ感も、そこまでは強く感じられないはず。どちらかと言えば、カレーっぽい……?