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そういえば行ってなかった、丸善池袋店
ひさしぶりの東京都心。
慣れ親しんだ池袋。
よく晴れた平日のお昼どき。
仕事を一段落させたあとのお昼ごはん。
普段ならば麺類か、はたまた定食か──とほどほどのお値段でお腹いっぱい食べようとするところ。けれど、この日はちょっと変化球を攻めてみたい気持ち。……珍しく早起きして、作業に取り組んでいたからかしら。なんとなく、普段とは違うことをしたくなったのかも。
とは言え、そこは勝手知ったる池袋。まったくの未知へ飛びこむ「冒険」をするには、あまりにも身近すぎた。──ならば、次なる選択肢はアレです。「前々から気になっていたけれど、なんとなく行けていなかったお店に行ってみる」。それも、日頃は食べることのない料理がいい。
というわけで、行ってまいりました。
2017年にオープンした、丸善の池袋店。
そこに併設されている、『MARUZEN Café』に。
きっと何者にもなれない僕と、ハヤシライス
ハヤシライスは、不思議な食べ物。
その発祥や語源についてはたびたびテレビなどで見聞きするものの、ぶっちゃけ正確なところはわかっていないらしい。あれこれと解説を加えつつも、最終的には「諸説あります」でまとめられるタイプの話。ショセツアリマス……便利な呪文だよね……。僕も返答に困ったときに唱えたら許されないかな……。
そういえば子供の頃、僕はハヤシライスのことを「ルイージみたい」だと思っていた。世界一有名な赤い配管工のオッサンの弟にして、永遠の二番手。ジャンプ力はあるけれど、ブレーキが効きにくい。「緑は不人気」とは言うけれど、そんなことはないと僕は思っている。陰の立て役者。縁の下の力持ち。それが彼だ。
そう、世界中の子供からも大人からも愛されるマリオがカレーライスなら、ルイージはハヤシライス。
──なーんて当時は考えていたけれど、冷静になってみると、決してそんなことはなかった。てっきり「カレーの2Pカラー」のような存在かと思いきや、その正体は日本国内で変化した洋食。一種のマイナーアレンジであり、カレーよりはビーフシチューに近いイメージも。……ってかやっぱりこの子、ハッシュドビーフだよね?
みんなが大好きなカレー先輩の2Pカラーにもなりきれない、謎のカスタムキャラ。その発祥も含め曖昧模糊とした存在ながら、大多数の日本人が知っていて、それなりに好まれている料理。明確な定義づけがなくたって、そのおいしさと魅力は大勢の知るところでございましょう。
「何者」かにならなくたって、みんなに愛される存在になれるんだ──。あまりにも個性やオリジナリティが重視される現代において、ふわふわとしたハヤシライスの存在を見ていると、なんとなく勇気をもらえるような気がします。……うん、 “気がする” だけっすね、はい。
早矢仕とビーフカレーの2色ソースライス
何はともあれ、メシでございます。近隣の会社員や学生で賑わうだろう12:00頃を避けて、13:30過ぎに入店。こちらの『MARUZEN Cafe』のランチタイムは11:00~15:00に設定されており、その時間帯ならばドリンク&サラダ付きのセットメニューが選べます。
シンプルかつ王道、そして看板メニューである早矢仕ライスにするか、あえてチキンカレーを選ぶか、はたまた「オム」を追加するか……。ところで関係ないけど、オムレツとかオムライスの「オム」って言葉が好きです。不思議とやわらかな印象を受ける響き。オムオムしてきた。
選んだのは、早矢仕とビーフカレーの2色ソースライス。優柔不断な僕にぴったりの、すばらしいメニューと言えましょう。──ほら、『マリオ』を遊ぶときだって、2人プレイで協力したり蹴落とし合ったりするほうが楽しいやん? マリオブラザーズならぬ、ソースライスブラザーズだ……!
ドリンクは普段なら迷わず「紅茶で」と答えるところで、選んだのはアップルジュース。この手の雰囲気のいいお店で「ジュース」を頼むと、なんとなく少年時代の無邪気な気持ちに戻れるような気がするのよね……。ちょっとした外食が遊園地のようにも思える、あの感じ。あっぷるじゅーちゅ。
久方ぶり──おそらく5年以上は食べていない──に口に入れたハヤシライスは、「そうだ! これだ!!」と自分に納得感を与えてくれる味。
カレーとは別物であるハヤシライスとは、たしかにこんな味であったと。決して嫌いではないけれど、子供舌には「……うん! カレーのほうがおいしいや!」と断言させてしまう不憫な味わいそのままでございました。ハヤシくん……! ひさしぶり……!
というか正直なところ、「想像以上においしくてびっくりした」というのが素直な感想。少年時代には「濃い!」と感じたソースも、改めて口にしてみれば、上品な深みのある味わい。スイーツとは違った、またカレーの甘口とも異なる甘みもほんのり感じらます。うまうま。
とはいえ、ずっとそればかり食べていると、人によっては飽きがくるかもしれない。そのためのサラダ──もありますが、お皿の上には、それ以上にナイスな相方がいるじゃありませんか! ──そう、ビーフカレー先輩でございます。なんたって、ブラザーズ。
さすがに甘口×甘口の組み合わせということはなく、ビーフカレーはちょっと辛め。シンプルで馴染みのある、ほどほどにスパイシーなカレーが、ハヤシの濃厚さを見事に中和。辛すぎず目立ちすぎず、「今日はお前に花を持たせてやるか……!」というナイスアシストで、ハヤシの旨味を際立たせていました。やるじゃん。
数年ぶりに再会したハヤシくんは、相も変わらずよくわからないヤツで、でも疲れた大人に寄り添い励ましてくれる、ナイスガイでした。きっとこれからも食べる機会はカレーのほうが多いのだろうけれど、たまには彼のことも思い出し、またお会いしてみたいところです。
また、どこかのお店のメニューの片隅で。