あなたのハンドルネームの由来を教えて!『konel.mag Issue 3』


自分の「名前」と言えば、基本的には1人にひとつだけ。親父とお袋にもらった本名があれば、実生活で困ることはないように思われる今日このごろ──だけど、そうとも限らない。

特にSNS全盛の今、インターネット上で使う「ハンドルネーム」を持っている人は少なくないはず。それだけではなく、ウェブ上ではHN以外に「ID」を決めることを求められるサービスも数多い昨今。さらには、いくつものHNを使い分けている人も今や珍しくはないのではないかしら。

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与えられた本名とは異なる、けれどさまざまな場所で必要となってくる、いろいろな名前。そんな「名前」をテーマにした本を読みました。同人サークル・konelさんのコミックマーケット89新刊、『konel.mag Issue 3』です。

 

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「改名」の過程から見えてくる、“ものづくり”の方法

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もともとは「jadda+」という名前のサークルで活動していたkonelさん。このたびサークル名を改名するにあたって、「だったら、その経緯と工程を1冊の本にまとめてしまおう!」ということで、本書の制作に取り掛かったそうな。その発想はなかった。

 

僕は、何か新しいものを公開するとき、「意図を伝える」ことを非常に重視する。どういうことかというと、最終的な成果物をただ公開するだけでなく、そこに至った経緯や理由も、できる限り同時に公開するということだ。経緯を読者と共有していれば、成果物に納得感が生まれ、勘違いや早とちりで解釈される可能性を減らせる。なかには、「解釈は読者に任せる」というクリエイターもいるが、その真逆の方針だ。今回はそれを、サークルの活動にも適用した。

(『konel.mag Issue03』P.14より)

 

この創作観は、できあがった本書『konel.mag Issue 3』の文中でも実際に読み取ることができます。サークル名決定までのプロセスが詳細かつ明瞭に説明されていて、読んでいて納得しかなかった。むしろ「こんなに徹底的にやっているのか!」と、びっくり。

改名の理由から始まり、チームポリシーを再確認し、方針を決めたうえでブレインストーミング。出てきた候補を分類し、ポリシーに適したものを厳選、その過程で出たアイデアも盛り込み、膨らませつつ、時間をかけて最終決定。

扱っているトピックは「名前」であるものの、まるでひとつの企画・プロジェクトの工程を流し見ているような読後感でした。

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さらには、ロゴデザインを決めるにあたってのマインドマップ、シンボルマークのラフスケッチ、Illustratorで作った複数案と完成案もまとめて掲載されており、もう何から何まで「過程」を示してしまっている格好。むっちゃ参考になる。なりすぎて申し訳なくなるレベル。

ただ「名前を変えたよ!」という報告で終わらせるのではなく、そのプロセスをも第三者がわかるような形でまとめ上げた1冊。

──であると同時に、物事を決定するまでの方法論・考え方を学ぶことができたり、konelさんの “ものづくり” に対するスタンスを知ることができたりもする内容となっております。おなかいっぱい。ごちそうさまでした。

 

お名前なんてーの?

本書の後半部分では、ほかの「名前」についてもどのように決められたのかを知るべく、いろいろな人にインタビュー。

9人のクリエイターさんのハンドルネームと、9つのサークル名の由来とエピソードを掲載しています。これがまた、十人十色──もとい、 “九人九色” でおもしろい。

学生時代に友人から呼ばれていたとか、たまたま目に入ったものをそのまま名前にしたとか、意外と軽いノリで決めたという方も多い様子。赤りんご@aka_ringoさんは、ちょっと意外でした。

あと印象的だったのが、サークル「寿司食いたい」@sushi_kuiさん。そんなもんですよねーと共感しつつ、 「困ったこと」として挙げられていた「エゴサーチしようとすると全国の寿司食いたい人の声が集まるだけで自分たちの評判は全くわかりません」に笑った。

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この「由来」の項目に関しては、その名前にして「良かったこと」「困ったこと」も合わせて書かれている点が魅力。自分が知っている人についてはその裏話を知れる一方で、知らない人の話からも「名前の考え方のヒント」を得られるのではないかしら。

名乗るのが恥ずかしいとか、発音が統一されていないとか、海外での表記に困るとか。逆に特徴的ゆえに覚えられやすい、話のネタになる、五十音順で良いポジションで紹介されるなど、それまで意識したことのない視点もあって参考になりました。

僕自身、ブログもハンドルネームも過去に改名していたことがあり、自分ごとのように読みつつも、「もうちょっと考えて決めればよかった……!」と軽く後悔したり、「それはHNあるあるですよねーww」と共感したり、最初から最後までおもしろく読めました。

これから何かの「名前」を決める必要がある人もない人も、身近な「名前」について思いを馳せるのにおすすめの1冊です。

──あなたの名前の、その由来は何ですか?

 

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