フリーランスを志す人が最初に読む本『フリーランスの教科書』


 

ノマドはいいぞ! フリーランス万歳!
これからはネットを使って自由に生きるんだ!

 

──という流れがあったのは、2012年頃のことだっただろうか。

 

当時、サラリーマンとして会社という「組織」に息苦しさを感じていた僕自身も、「そういうのもあるのか!」とわくわくさせられた覚えがあります。でもちょっと調べてみるとすぐに、「ああ、こりゃあ無理だ……」と。そんなに甘くはないことを思い知らされました。

ところがどっこい。そんな僕も気づけばちょうど今、フリーランスの道に足を踏み入れている段階。どうしてこうなった。確定申告だなんだと手続きもあり、改めて整理してみようと、こちらの本『フリーランスの教科書』を買って読んだ次第であります。

読み終えて最初に思ったのは、「1年前に読んどきゃ良かった」の1点。
これは、いいものだ。

 

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「お金」の専門家が説明する、「フリーランス」の入門編

書店に行けば「フリーランス」や「ノマド」といった単語を含む入門書は数多くありますが、中にはやたらと「フリーはすごい!!」とヨイショしている本があるのも事実。ちょっと前の「YouTuberすごい!」の風潮に既視感を覚えた人もいるのではないかしら。

その点、本書はその辺の話はごっそりと削ぎ落とされ、あくまで「お金」の観点から見た「フリーランス」という働き方のみに焦点が当てられております。会社員との比較や税金の扱い、確定申告の方法、法人化にあたってのメリット・デメリットなど。

──という説明をしなくとも、著者略歴を見てもらえれば、本書の内容がなんとなーくわかるのではないかと思います。

 

見田村元宣

税理士。1968年愛知県生まれ。株式会社日本中央会計事務所代表取締役、日本中央税理士法人代表社員。株式会社タクトコンサルティング・本郷会計事務所を経て、現職。現在は、節税、税務調査対策、相続、事業承継などコンサルティングおよびセミナーを中心に活動。

内海正人

社会保険労務士。1964年神奈川県生まれ。株式会社日本中央会計事務所取締役として、税理士・見田村氏とタッグを組む。日本中央社会保険労務士事務所代表。商社の子会社にて法人営業などに携わった後、船井財産コンサルタンツ横浜を経て、現職。現在は、労務トラブル・人事の専門家として、就業規則の作成、人事コンサルティングを中心に活動。

 

税理士社会保険労務士のお二人。

見方によっては「個人事業主」と受け取れなくはないし、実際にそのような時期もあったのかもしれませんが、明らかに「フリーランスだー! 自由だー!」という論調を持った人物ではありません。

むしろ「お金」に関わる専門家として、働き方の違いによって起こりうる手続きや問題点、メリット・デメリットなどを隅から隅まで把握しているスペシャリストです。

それゆえに、本書は文字通りの “教科書” たりえるもの。フリーランスになろうと考えているものの、右も左もわからない人のための最初の1冊。

フリーで働くための考え方とか、そういうのはいいんです。大切なのは、誰もが避けては通れない「お金」との付き合い方。そういう意味では「税金」や「年金」について知識のない会社員の人にも、「普段は意識しないお金の話」として読むことのできる内容ですね。

 

自由じゃないフリーランスと、「お金」との付き合い方

本書はフリーランス1年目の「僕」の視点で、「税理士」と「社会保険労務士」の2人から、フリーランスが心得ておくべき「お金」の問題を解説してもらう流れになっております。

具体的には、「契約とギャラ交渉」「税金と確定申告」「保険と年金」「法人化」の4章構成。支払うべき税金、確定申告の方法の違い、将来を見据えた共済・制度、必須の国民年金とプラスアルファ──そして、法人化することでそれらの扱いはどう変わるのか。

 

「事業所得? 課税所得? 控除? なにそれたべれるの?」という常識知らずの僕にも容易にわかるよう、一から丁寧に説明されていて、要所要所では図まで使ってくれる優しさ。だからこそ「1年前に読んどきゃ良かった」と。会社勤め時代に読んでいれば、その後の立ち回り方も変わったんじゃないかと感じました。

フリーランスになるつもりがなくとも、「税金」「確定申告」「年金」「保険」といった、会社に属しているとあまり意識しないお金まわりの話について広く再確認することができます。きっとそれぞれの解説書を読むよりコスパも良いんじゃないかと。200ページ程度の新書1冊ですし。

 

「あのね、君、フリーランスってのは自由になることじゃなくて、全部を引き受けることなんです。もう会社には頼れない、ってことなんですよ」

 

 

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