松岡修造さんが語る『応援する力』とは


受験シーズン真っ只中。書店をうろついていたところ、暑苦しい赤ジャケットの新書が目に入った。

 

 

『応援する力』。たまたまと言うか、目に入らずにはいられない。なんたって、赤いジャケットを着て笑顔の松岡修造氏の写真が、帯にででーんと写っているのだから。

そりゃあ買うしかないでしょう。
ソチだって頑張ってるんだから!

 

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地球温暖化の原因

さて、本書『応援する力』は、数多くの著書を出している松岡修造さんの本としては、最も新しいものとなります(2014年2月現在)

既刊を見ると、『松岡修造の人生を強く生きる83の言葉』『本気になればすべてが変わる―生きる技術をみがく70のヒント』『挫折を愛する』などなど、彼の人生における精神論を説いた内容となっているようです。

松岡さんと言えば、元プロテニスプレイヤー。最近は、スポーツキャスターとして、テレビで目にする印象が強い。ネット民、というか、ニコニコ動画ファン的には、音MADの人というイメージが強いのかもしれない。

 

松岡修造とは、諦めない、絶対できる、いつもポジティブ、しかし暑苦しいというプロテニスプレイヤーである。

東京ヒートアイランド現の原因、いや地球温暖化の原因の一つとも言われており、地球温暖化を食い止めるには、彼を宇宙に飛ばすしか方法がない。しかし、彼を宇宙に飛ばすと地球温度が-273℃になるともいわれ、その温度差は物理法則にすら囚われていない。

炎の妖精の異名を持ち、ニコニコ4大妖精の1人として数えられている。

ちなみに、2014年修造テーマは「」である。

松岡修造とは (マツオカシュウゾウとは) [単語記事] - ニコニコ大百科

 

現代の、ニコニコ&ネット大好き中学・高校生が、彼の本業を知っているのかどうか不安になるレベル。変顔芸人じゃないよ!世界レベルの元テニスプレイヤーだよ!ファブリーズ!

本書は、そんな炎の妖精、松岡さんのライフワークとも言える、「応援」に焦点を当てて、他人や身近な人、さらには自分を「応援」するため、全力で生きるための、考え方を記した内容となっています。

 

応援の力ってすごい!

今や人を応援することが、僕の人生そのものになりつつあります。

 

第1章では、「応援の力ってすごい!」と題して、プロ時代の経験や、「応援」についての考え方、そして、その原点などについて語られています。有名な、伊達公子選手とグラフ選手の試合でのエピソードも。

 

応援の素晴らしいところは、自然発生的に起こるところだと思っています。

人は頑張っている人、全力を尽くしている人を応援したくなるものです。

 

本章は導入部ということで、著者が「応援ってすげえ!」と思えるようになった経緯について、エピソードを交えながら説明した内容。テレビなどで見て、松岡さんの人柄をそれとなく知っている人ならば、「松岡さんらしいな」と思わず笑ってしまうような話もあって、読んでいておもしろい。

 

僕は本気で頑張っていると思う人には、決して「頑張れ」とは言いません。すでに頑張っている人の背中を無理やり押しても、それはただの余計なお世話になってしまうと分かっているからです。

応援の本質はプラスの波動を伝えること――。

 

アスリートを応援することで学んだこと

第2章は、松岡さんがこれまでに接し、応援してきたプロのアスリートたちとのエピソードを挙げつつ、「応援」の方法論について書いた内容となっています。

 

声を出して応援するだけではない、本当の意味での“応援”とは何か。真剣に考えました。結果、僕にできることは、彼の思いを真剣に聞くこと。とにかくすべてを吐き出してもらうことで、少しでも前向きな気持ちになってもらうことしかない、という思いに至ったのです。

 

単に「応援する」と言っても、大声で叱咤激励すれば良いというものではない。かけ声のタイミングや、言葉選び、その人にとって力になる、プラスになる応援はどのようなものか。常にそれを考え、研究し、実践しているという松岡さんは、やっぱりすごいと思います。

また、「応援には2種類ある」として、次のようにも書いています。

 

“勢いの応援”とは、元気のある若い選手や、絶好調で勝ち続けているチームや選手に対して向けられることが多いものです。

「苦しさはとてもよくわかる。私も仕事で同じような挫折を味わったから、他人事とは思えない……」と試行錯誤する選手の姿に“共感”し、応援したくなるのです。

 “勢いの応援”ではパワーと元気をもらい、“共感の応援”では、勇気と希望をもらうのです。

 

この説明は個人的にも納得がいくもので、特に、最近は“共感の応援”が重視される傾向が強いように感じます。テレビでのインタビューや、アスリートに関するドキュメンタリーなどを見ていても、何かしらの挫折があった上で、それが成功体験に結びついた、という話は王道で、好まれるもの。そこに、家族や仲間との「絆」があれば、なお良いでしょう。

そう考えると、僕らは彼らの生き様に物語性を求め、それを追体験することに喜びを見出しているのかもしれません。生まれついての天才、ではなく、努力や根性、運や出会いといった積み重ねがあって、最後にはそれが結実するという、ひとつの物語。

単なるエンターテインメントとしてではなく、自分も頑張ろう、どうにかしてやり遂げてみせる、と奮い立つきっかけとしての、物語。気づかないうちにも、僕らは誰かから勇気や希望をもらっているのかもしれませんね。

 

身近な人への応援は難しい

第3章は、家族や友人、部下など、身近な人を応援するにあたっての考え方を記したものです。そこでは、相手を変えようと無理に働きかけるより、自分自身を変えることで、周囲に影響を及ぼしていくことなどを提案しています。

 

「人を変えるのは簡単ではないけれど、意志さえあれば、自分を変えることはできるのだ」

よく「自分はこういう性格だから変われません」と言う人がいます。確かに持って生まれた性格は変えられません。でも“心”を変えることはできるのです。“心”を変えたあなたのまわりへの態度に変化が現れてくると、周囲もまたあなたへの態度を変えてくれるかもしれません。そうやって互いに影響を与え合い、成長し合っていけることもまた、人間の面白いところだと思います。

 

「応援」という言葉で示される、一種のコミュニケーションの話。そう考えると、非常に納得のいく内容です。「持って生まれた性格は変えられない」と断言してしまうことには、「ん?」と思わなくはないけれど。

身近な人だから、よく知っているからこそ、それを変えようとするのは難しい。応援の仕方もさまざま。だからこそ、自分の視点、考え方を変えることによって、相手にも変化を促そうという手段は、理に適っていると思います。もちろん、相手を理解しようという強い気持ちが必要であり、一朝一夕ではなかなか難しいものではありますが。

 

人を、自分を励まそう

最後の第4章では、日常生活というミクロな視点で、「応援」を生活に取り入れる方法を提案しています。

 

僕たちにとって最大の応援は「自分で自分を応援すること」だと思います。

いざ重要な場面だけに全力を尽くすというのではなく、日常から何事にも全力で取り組む癖をつける。どんな時も“自分応援モード”、つまり何事にも全力を尽くすことが当たり前になっていることが大切です。そうやって自分を奮い立たせることで、結果や成果に繋がっていくものです。

 

本書の肝は、この章と言えるでしょう。自分と他人を繋げる「応援」という行動を、前向きに、日々の活力の源として、積極的に取り入れていくための考え方。それを実践するためには、「自分を応援する」作業も必要になってきます。

 

自分の人生は自分のもの。誰のものでもないのです。自分が自分の力を信じ、心から応援できなければ、うまくいくはずがありません。自分を信じ、応援することは、“今ここにあること”に全力を尽くすことです。

 

自分のことでも他人事で、どこかふわふわと生きているような人も、ちらほらと見受けられる昨今。何もかも背負い込むのは疲れるけれど、最低限、自分のことは「自分ごと」として意識し、目の前のことに取り組んでいく姿勢は必要となってくるかと。

そのために、「応援」をひとつの活力として生活に取り入れるという考え方は、少なからず効果的な、意味のあるものだと思います。誰もが常に、「もっと、熱くなれよぉおおおおおおおお!!!」と燃え上がり続けるのは無理だとしても、「ちょっとだけ頑張ってみよう」と考えるきっかけにはなり得る。「応援」には、人を前に歩かせるための力が、強さが、間違いなく、ある。

 

少し異なるかもしれませんが、ネット上に溢れる数多のコンテンツ、動画や音楽、さらにはブログといったものも、それがどこかの誰かに力を与えるものならば、一種の「応援」と呼んでもいいのではないかしら。

作者からすれば、単なる趣味や、自己満足の産物に過ぎないのかもしれない。けれど、それに触れた人が、何らかの意図や物語をそこから読み取り、共感や新しい視点を得るに至ることだってある。そんな意味で、やはり、僕らは気付かないうちに誰かを応援し、誰かに応援されているのではないでしょうか。

 

 

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