『メタバース さよならアトムの時代』をじっくりと時間をかけて読み終えて、こう思った。
──「メタバース、なんもわからん」という人に1冊だけおすすめするなら、この本だけでもだいたいカバーできてしまうのでは……?
いや、もちろん、まだ他の本を読めていないので断言はできない。
けれど、まだまだとっちらかっている印象を受ける「メタバース」の定義とその周縁の説明に関しては、自分の知るどの本や記事よりも整理されているように読めた。XR業界、クリプト業界、SNS業界など、論じる人がどの業界に属するかによってポジショントークになりがちな「メタバース」の説明。それを本書では中立的な目線に徹しつつ、全体を俯瞰して紐解いてくれている。
かと思えば、筆者自身の思想がバチバチに盛りこまれた、「そういうおもしろい話が聞きたかったんだよ!」とワクワクさせられる話題もあってたまらない。知的好奇心をツンツンされたい読者の需要も満たしてくれるため、そんな目的で本を読みあさっている人にもおすすめできる。
表紙の「メタバース」の文字の横にちょこんと添えられた、「さよならアトムの時代」のサブタイトル。この言葉が指し示すものを理解した瞬間、なぜこれほどに「メタバース」が騒がれているかがわかるはず。まるで物語の伏線回収のような気持ちよさがあり、読後感もすばらしい。そんな本書の感想を、ざっくりとまとめていこうと思う。
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