ぐるりみち。

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2時間でも足りない!『新海誠展「ほしのこえ」から「君の名は。」まで』の4つの見どころ

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 『新海誠展「ほしのこえ」から「君の名は。」まで』を観覧してきました。今年6月、静岡を皮切りに、新海誠監督の出身地でもある長野を経て、先週から東京で開催中の企画展。

 東京会場は、六本木・国立新美術館。映画『君の名は。』の劇中でも登場した施設ということもあり、なんとも不思議な感覚――と思っていたら、案の定。会場で借りた音声ガイドを聞いていたら、神木隆之介さんが同様のことを話しておりました。ですよねー!

 昨年の『君の名は。』公開前にこのような記事を書いてしまうくらいには、新海誠作品が大好きな自分。――とくりゃあ当然、今回の展覧会も行くしかあるめえと、足を運んできた次第であります。混雑を避けて平日に行ってみたら、火曜休館で泣いた。やらかした。

 で、実際に観覧してきてどうだったかと言えば、もう「最高」の一言。てっきり『君の名は。』を中心に据えた展示なのかと思っていたら、他作品にがっつり触れるのはもちろんのこと、監督が制作したCMや、貴重なインタビュー資料の展示などもありました。

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図録『新海誠展 「ほしのこえ」から「君の名は。」まで』より

 各作品の魅力と設定のみならず、作品同士の関係性や共通するメッセージについても踏みこんで説明されているため、『君の名は。』で知った人もきっと楽しめるはず。

 はたまた、以前から好きで追いかけていたファンにとってそこは、作品世界にどっぷり浸かれる至福の空間。「会場の一角から『TO MAKE THE END OF BATTLE』が聞こえてくる」と書けば、思いのほか細部まで取り上げた展示になっていることがわかるのではないかと。

 というわけで、個人的な見どころをざっくりとまとめました。

 

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1. オープニングムービーが良い

 入口でチケットを渡し、「ごあいさつ」を読んで場内に入ろうとすると、早くも映像を見るための仕切られた空間が。暗がりに入ると始まるのは、展覧会のオープニングムービー

 映像の中で次々と映し出されるのは、劇場上映された新海誠監督の作品たち。『ほしのこえ』『雲のむこう、約束の場所』『秒速5センチメートル』『星を追う子ども』『言の葉の庭』『君の名は。』の6作品が、RADWIMPSの「夢灯籠」に乗せて映される。

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 このムービーを目にした時点で、「あ、やっぱり来てよかったわ」と満足してしまったのでした。新規カットがあるわけではないものの、各作品の要所を抑えた疾走感あふれる映像を観ていると、いろいろと思い出が蘇ってくる。すばらしい公式MADに見入ってしまい、思わず3周していた。

 特に印象的だったのが、夢灯籠の歌詞 “消えることない約束を 二人で「せーの」で 言おう” の部分。この歌詞に合わせて連続で映し出されるのが、『雲のむこう〜』のタクヤとサユリ、そして『秒速5cm』のタカキとアカリが向かい合うシーンという……。なにそれずるい……。

 

2. 絵コンテ・美術背景・作画資料ほか、約1,000点に及ぶ展示内容

 会場内で鑑賞できる展示物は、各作品の絵コンテ・場面カット・ビデオコンテ・美術背景・作画資料・色彩設計・コンセプトボード・イメージボードなどなど。展示構成は、先ほど挙げた6作品を発表順に取り上げた全6章からなり、途中に2箇所のテーマ展示を挟んでいる。

 展示されているのは紙の “資料” のみならず、本編映像を流しているスクリーンも盛りだくさん。絵コンテなどの資料を示したうえで、その完成形として実際の映像を示すような流れになっており、アニメーション制作の一端を垣間見ることができる。ビデオコンテで見る『ほしのこえ』が新鮮でした。

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図録『新海誠展 「ほしのこえ」から「君の名は。」まで』より

 そういったビジュアル面での「アニメ」にまつわる展示のほかにも、初期のインタビューの記録や、監督の作業環境を再現したスペースなども。15年前の富野由悠季*1監督との対談記事も大きく展示されており、立ち止まって目を通している人も多かった印象です。

 個人的にすごく良かったのが、『言の葉の庭』の趣意書。自分がどこを好きなのかがはっきりしている『秒速5cm』に対して、なぜ惹かれるのかをうまく言語化できていなかった『言の葉の庭』。その理由が、これを読むことで得心が行ったように思います。以下、一部抜粋。

本作は、「絆」を手に入れる遥か手前で、孤独に立ちすくんでいる人のための作品である。

(中略)

「よって立つ場所を持たない」「歴史を持たない」ことは、この国で生きる現在の我々にとって、最初から設定されているパラメーター、所与の条件である。僕たちは不安定な時代に、不安定な気分で、文字通り揺れる足下の上で不安定に生きている。それでもなお日々美しいものを見つけるし、描くべき心の交流もある。だからこそ、拠り所のなさも孤独も受け入れた上で、それを肯定的に描く必要があるのだと思っている。

「趣意書『言の葉の庭』――この作品について思うこと」より

 趣意書には宮﨑駿監督の言葉が引用されており、それに対抗せんとする新海監督の考えがまとめられているようにも感じる内容。むっちゃ興味深く読めました。

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図録『新海誠展 「ほしのこえ」から「君の名は。」まで』より

 他方で、それら壁際の展示から目を離し、見上げてみると、会場全体を作品世界に寄せていることがわかっておもしろい。展示物の上部には劇中のセリフが書かれており、『秒速5cm』の章では天井付近を桜の花びらが舞い散り、『言の葉の庭』の章では雨が降っている――というように。

 ひとつだけ、展示中では全作品について「がっつりネタバレしている」ので、その点は要注意。当然と言えば当然ですが。各章の最後に、ラストシーンの映像を展示しているくらいなので。本編の結末をどデカく映してしまっている格好なので、ネタバレを避けたい方はご注意ください。

 僕が行ったときは、『言の葉の庭』のラストシーンの展示で足を止めている人が特に多かったです。それまでの展示で「雨の表現」についての言及があったのと、あとはやはり声優さん2人の演技のインパクトが強いため、見入ってしまう人が多いのかなーと。僕自身、もう何回も観たのに、大きなスクリーンで観ると鮮明すぎて泣けてくる。

 

3. 神木隆之介さんの音声ガイドがアツい

 約35分間の音声ガイド、激アツでございました。……と言っても、神木さんが叫んでいたわけではありません、はい。でも、これはぜひとも聞いてほしい内容。

 多くの展覧会と同様に、基本的には作品展示の解説文に沿って語られる、こちらの音声ガイド。ただ違うのは、ガイド役が “『君の名は。』で主人公を演じた神木さん” であり、そしてそれ以上に、彼が “10年来の新海誠ファン” であるということ。……そりゃ、語らないわけがないよね!

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 リストにもあるように、6作品の「作品概要」を音声で案内しつつ、「神木視点で語る」という項目が全作品に存在しているのが、本展覧会の音声ガイドの特徴。叫びはしないものの、明らかに演技以上の感情がこもってそうな声色のガイドが聴けるのです。

 ほかの観覧者さんの感想に、「瀧くんが耳元で喋ってる〜!」という声がありましたが、自分の場合、「すげえ! 爽やか系イケボな熱狂的新海誠ファンが、僕の心を代弁するだけでなく、むっちゃ詳細な解説をしてくれているぞ!」という印象でした。 “俳優” と書いて “ファン” と読む。

 なかでも、見どころ――もとい聞きどころとしては、『秒速5cm』のガイド。『新海誠Walker』で監督と対談した際に話に出ていた、「タカキに憧れてナレーションや役作りの練習をしてきた」という神木さんによる、「タカキのセリフの再現」が聞けるのだ! これは必聴でっせ!

 あと、途中で音声ガイドならではのちょっとした “仕掛け” もあるので、それを体験するためにもぜひぜひ。

 

4. クロージングムービーで泣く

 オープニングがすげえとくれば、エンディングもまた半端なかった。

 あまり書くとネタバレになるのでアレですが、公式MAD風味だったオープニングのパワーアップ版が、このクロージングムービー。

 “ちょっと大きい” 程度のスクリーンだった前者に対して、後者は横に長く、かなり大きなディスプレイに映し出される。横に長いため、画面を2分割にした映像表現ができる――と書けば、どういった演出がされるのか、なんとなく想像がつくのではないでしょうか。

 そして、そのムービーの最後に、あの作品の、あの一言を持ってくるのが、最高にズルいなーと思う。こりゃあ何度か観るしかねえと思い、こちらも3周しました。はっはっは。

 

半日かけてでも堪能したい「新海誠ワールド」

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 そんなこんなで、ざっくりとではありますが、『新海誠展』の感想でした。

 資料展示がメインということもあってか、撮影可能エリアはほとんどなし。唯一、出口付近にフォトスポットがあるので、撮影はそちらで。『君の名は。』劇中、美術館のシーンで登場した写真展示っぽく、美術背景を並べている感じですね。

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 この日はお昼すぎに入場し、観覧を終えて出てみると、いつの間にやら外は真っ暗。思いのほか展示物が多く、しかも夢中になって観ていたので、気づけば2時間半も場内にいたらしい。

 何度も繰り返し見た予告編の映像展示はいくつかスルーしてこの滞在時間なので、これから観に行く方は、時間の余裕を持って向かうと良いかもしれません。映像含めすべてをじっくり鑑賞するとなると、おそらく3時間は必要になるんじゃないかしら……。

 混雑具合については、「想像よりはすいていた」という印象。平日のお昼すぎということもあるでしょうが、先週末も入場待ちの列ができるほどではなかったようなので、休日でもそれなりに快適に鑑賞できるのではないかと思います*2

 『新海誠展「ほしのこえ」から「君の名は。」まで。』は、国立新美術館にて、12月18日まで開催。往年の新海誠ファンはもちろん、『君の名は。』以外はあまり詳しくないという人も、ぜひ足を運んでみてくださいな*3

 

© 2016YNFP © Makoto Shinkai / CWF © Makoto Shinkai / CMMMY

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*1:おなじみ『機動戦士ガンダム』の生みの親。この『ほしのこえ』当時の対談記事を読んだあとに『君の名は。』公開時の反応を見てみると、見え方がまた少し違ってきておもしろい(参考:『ガンダム』生みの親・富野由悠季が感じた手塚治虫・宮崎駿の凄み | ORICON NEWS

*2:最新情報は公式アカウント(@Shinkai_ten)を参考にどうぞ。

*3:来年は福岡・北海道での開催も予定しているそうです(参考:開催情報|新海誠展「ほしのこえ」から「君の名は。」まで