ぐるりみち。

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2017年上半期に読んだ本から、おすすめの10冊をまとめたよ

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 あっという間に、2017年も折り返し地点。

 「数」はあまり読めていないものの、それなりに「質」の高い読書はできていたんじゃないかという、2017年上半期。

 本記事では、この半年間で読んだ本のなかから、特におすすめの10冊をざっくりとまとめています。拙い紹介ではありますが、よかったら参考にどうぞ!

 

 

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読書猿『アイデア大全』

 上半期に読んだなかで、最も「読んでよかった!」と心底から思えた本。読後の感想として「長年にわたって使い倒すことのできる本だと思う」と書いたけれど、現在進行形でお世話になっている1冊です。本書を読み終えた日から、ほぼ毎日のようにノンストップ・ライティングを実践中。

 一口に言えば、古今東西の「アイデア」をまとめ上げた辞書

 本書には、おなじみのトヨタの生産方式を生んだ「なぜなぜ分析」があり、「ブレインストーミング」の考案者による発想法があり――かと思えば、突如としてウォルト・ディズニーやシュルレアリスムや平賀源内が登場します。……わけがわからないよ!

 同時に、ただ単に発想法を紹介するにとどまらず、その考え方を生み出すきっかけとなった出来事や歴史にも言及しているため、純粋な読み物としてもおもしろい。さらには、個々の発想法の関係性まで概説しており、四方八方から知的好奇心を刺激する、魅力的な “辞書” となっています。

 幅広い学問分野にわたるアイデアが取り上げられているにも関わらず、専門知識を必要としない、明快な解説も魅力的。それまで関心のなかった学問に興味がわいてくるほどであり、「知的好奇心をくすぐる啓発本」としても読むことのできる、2017年上半期おすすめの1冊です。

 これまでにない新しい考え(アイデア)を必要としている人は、できるのはわずかであったとしても現状を、大げさに言えば世界を変える必要に迫られている。そのために世界に対する自身のアプローチを変える必要にも直面している。

 この場合、必要なのは、ただ〈どのようにすべきか〉についての手順だけでなく、そのやり方が〈どこに位置づけられ、何に向かっているのか〉を教える案内図であろう。

 それゆえに本書は、発想法(アイデアを生む方法)のノウハウだけでなく、その底にある心理プロセスや、方法が生まれてきた歴史あるいは思想的背景にまで踏み込んでいる。

 

池上彰、佐藤優『僕らが毎日やっている最強の読み方』

 池上彰さんと佐藤優さん、2人による対論本。

 先ほどの『アイデア大全』が、創造力――つまり「アウトプット」をテーマにした本だとすれば、本書のテーマは「インプット」。新聞・雑誌・ネット・書籍・教科書といった多彩な媒体から “知識と教養” を身につけることを目的とした、「インプット術」を論じた内容となっています。

 意識していなくても、日常的に膨大な情報と接する生活を送っている僕ら。そんな環境下においては、個々の情報の真偽を検討する以前に、「情報源」の取捨選択が重要になる。曰く、 “「何を読むか」「どう読むか」だけでなく「何を読まないか」も重要な技法のひとつ” である――と。

 だからと言って、「マスメディアはゴミ」「ネットの有象無象の情報はあてにならない」などと、特定の媒体を切り捨てているわけではありません。本書は、各媒体それぞれの特徴と、メリット・デメリットを明らかにしつつ、具体的な使い方を提案していく構成になっています。

 誰もが「情報」とは無縁ではいられない現在、情報収集と知的生産のエキスパートである2人の対論は、今後の学習の指針となるはず。僕自身、本書の影響で中学・高校生向けのオンライン予備校『スタディサプリ』を受講しはじめるなど、早速参考にしております関連記事

この本の大きなメッセージのひとつになりますが、世の中で起きていることを「知る」には新聞がベースになり、世の中で起きていることを「理解する」には書籍がベースになります。両方を上手に使いこなすことが重要で、どちらか一方に偏るのはよくありません。

 

グレゴリウス山田『十三世紀のハローワーク』

 ざっくり言えば、世界史上においてマジで実在した(と言われている)各地の多種多彩な職業を、SRPGの『ジョブ』っぽく紹介した本。過去に人気を博した同人誌の、商業復刻版。

 見るからにゲームの攻略本あるいは設定資料集のような紙面でありながら、その解説はガチ。徹底的に参考文献を洗ったうえで、歴史・文化とも紐付けつつ各職業を解説しています。もはや、その手の専門書と言っても過言ではないんじゃないかというレベル。

 パン屋、羊飼い、鵜飼、からくり技師、マッチ売りといった現代でも耳なじみのある職業があれば、剣士、吟遊詩人、ドルイドといったゲーム的な “ジョブ” もあり、ビール妻、泣き女、偽乞食、コーヒー嗅ぎといった一風変わったものも。SRPG好きはもちろん、歴史が好きな人にもおすすめ。

 下記感想記事でも書きましたが、ヨーロッパ各地の戦場に赴いたドイツの傭兵「ランツクネヒト」の項目が個人的におもしろかったです。あと、 “将軍が尿意を催したときに尿筒(しとづつ)を差し出す便器番” こと「公人朝夕人」のイラストが好き。

 騎士、魔法使い、吟遊詩人、死刑執行人に盗賊騎士、ホモ取締官に女装男子、そしてメガネ。華やかな中世ヨーロッパを彩る煌びやかな職業たち。中世ファンタジーなゲームをプレイしたことのある方は当然として、そうでない方も、これらの職に憧れないことがあり得ましょうか? いえ、あり得ますまい。

(中略)

 より有り体に申し上げますと、ほらほらお前らジョブとかスキルとか好きなんだろジョブツリーとかパラメータのグラフとか見てときめいちゃうんだろそれでオリジナルジョブとか考えちゃうんだろ素直になれよまさか違うなんて言わねえよなこの野郎。と、だいたいそんな感じの本です。

 

岡田麿里『学校へ行けなかった私が「あの花」「ここさけ」を書くまで』

 『あの花』『ここさけ』などのアニメでおなじみ、脚本家・岡田麿里さんの自伝。

 “自伝” という紹介文に違わず、本文は徹頭徹尾「自分語り」に終始しています。筆者と同じ不登校の少年少女に向けられた言葉はなく、また脚本家やクリエイターを目指す若者に対する助言や激励もなく、ただ淡々と “岡田麿里” としての経験を書き連ねているだけ。

 にもかかわらず本書は、そういった層にこそ響くような内容になっている。そのように感じられたんですよね……。とある部分を読んでいたら、なぜか思わず泣けてきてしまったほど。

 キーワードは、「外の世界」。岡田さんにとってそれは秩父の外であり、自身のように不登校でない “普通” の人たちを指すものであり、決して手の届かない異世界。でもそれは、誰しもが大なり小なり抱えている他者との「ギャップ」とも言い換えられるのではないかと。そのように考えると、この感覚に共感できる人も多いんじゃないかと思う。

 ただ淡々と自分語りをしているだけなのに、それでも読ませる、強く共感させられてしまうのは、筆写の筆力ゆえか、はたまた誰にも普遍的な経験であるためか。岡田さんの作品のファンはもちろんのこと、広い意味で「生きづらさ」を感じている人におすすめの1冊です。

 誰かに、どこかに、叫んでぶつけたいことがある訳じゃない。ただ、ひたすら叫びたいという欲求だけはある。胃の中に沈殿する、もやついた名前のない塊のようなもの。それを吐き出したい。

 吐き出すことで、その瞬間に名前がついてくれたならと、どこかで願って。

 

二宮敦人『最後の医者は桜を見上げて君を想う』

 いわゆる「医療小説」に分類される作品でありながら、描かれている「死」があまりにも鮮烈で驚いた。誰にも等しく訪れる、決して逃れることはできないもの。小説自体は作られた“物語”的でありながら、「死」だけが嫌に生々しく感じられたのです。

 この物語には、明確な「主人公」は存在しない。全3章・約400ページにわたって描かれるのは、医者と患者、複数人の視点から見た「医療」と「死」の在り方。とある会社員と大学生、2人の患者が死にゆくまでの過程を描き、否が応でも読者に「最後の選択の是非」を問いかけてくる。

 ドラマのような奇跡はなく、ただただ淡々と「死」へ向かっていく彼らの様子は、読む人によっては痛みを伴うものだろうし、モヤモヤが残るかもしれない。それでも、良くも悪くもメッセージ性がストレートすぎる作品とはどこか異なる、正解のない「死生観」と真摯に向き合った小説であるように感じました。

「……医者が奇跡を諦めなかったら、誰が一緒に諦めてやれるんだ」

 死を敗北にしてはならない。死を敗北にしてしまったら、そこに向かう人があまりに報われないではないか。

 

白石定規『魔女の旅々』

 3年ほど前にAmazonのKindleストアで作者さん自ら出版され、話題になっていた小説、その書籍版。好きで読んでいた電子書籍が書籍化されると聞けばそりゃあ気になるし、しかもイラスト担当が大好きな絵師さんということで、買わずにはいられなかった。既刊3巻。

 一口に言えば、「サバサバ系魔女の旅先での出会いを描いたファンタジー連作短編集」。物語は主人公の魔女・イレイナの一人称で進み、彼女が訪れた国々での出来事や、そこで出会う人々との交流を描いた内容。5分程度で読める小話から、それなりの文量で語られるエピソードまで。

 特に印象的なのが、イレイナの語り口調。「です・ます」の丁寧語ながら、軽妙でエッジのきいた地の文が、読んでいてすっごい楽しい。変にテンションは高くなく、淡々とした口調ながら感情には素直で、皮肉屋ながら嫌らしくはない、どこにでもいそうなかわいい女の子。……たぶん。

 そんな彼女が好きで、夜の眠る前などに読み進めていた本作。寓話的な話あり、ギャグあり、少しダークな展開もありと、飽きの来ない短編集となっておりました。。

「お久しぶりです。筋肉の人」

 数日前に会った素敵な筋肉をした男。筋肉の人。

 一度会っただけで名前も聞いていなかったため、反射的に筋肉の人と呼んでしまいましたが、どうやら彼は筋肉という単語にときめいたらしく「ふふん、そう。俺こそが筋肉の人だ」と胸を張っています。

 うわあ馬鹿みたい。

 

小西利行『仕事のスピード・質が劇的に上がる すごいメモ。』

 コピーライターである筆者が実践している「メモ」の方法をまとめたハウツー本。ただ、「メモ術」というよりは「アイデア本」としての要素が色濃くなっている。複数の方から「いいぞ」と勧められたこともあり、その内容はお墨付き。非常に実践的な1冊でした。

 本書の目的は、ずばり “考えるきっかけ” をつくること。それこそが「メモ」の持つ本当のメリットであり、1冊を通して目指す「すごいメモ」の理想型となっています。

 それを実践するための方法論として、本文では3分類・14個のメソッドを紹介。メモによって仕事の生産性を高める考え方、走り書きを腐らせず使うためのメモの活かし方が丁寧かつわかりやすくまとめられており、読み終えたらすぐにでも実践できそうな点も嬉しい。

 なにより、本書それ自体がこの “すごい” メソッドによって書かれていることがわかるため、読後のスッキリ感は最高。「よし、実際にやってみよう!」と試したくなるわかりやすさも魅力ですね。勉強に仕事に生活に、あらゆる場面で役立つ「メモ」を身につけたい人におすすめ。

昨日や一昨日の食事がなかなか思い出せないように、たった数日でも記憶は曖昧になる。たった数時間でも記憶は薄れていくのです。だからこそ、記憶力に頼らず、時間がたっても腐らないメモを書く技術が必要です。そう、いつでも、メモを見るだけでそのときの発言やポイントが思い出せて、何を考えるべきかが、すぐにわかるメモ。未来の自分に、考えるきっかけを残すメモを書くべきなのです。

 

出口治明『人生を面白くする 本物の教養』

 筆者が長年にわたって培ってきた、「教養」を身につけるための方法・考え方をまとめた本。全体的に筆者の経験談を軸に話が進んでいく印象を受けるものの、その内容は想像していたよりも実際的なものでした。

 筆者が考える「教養」とは、 “人生におけるワクワクすること、面白いことや、楽しいことを増やすためのツール” であり、その本質は “自分の頭で考える” ことにあるという。なくても困りはしないものの、身につけることで己の視野を広げ、選択肢を増やし、人生の幅を広げてくれる便利スキル。それが「教養」である――と言い換えられそうだ。

 そのうえで、筆者の教養を培ってきた3つの要素として、「本・人・旅」を紹介。誰しもに当てはまらるものではないと思いますが、特に若い世代にとっては、筆者のスタンスは参考になるのではないかと。それこそ “本” である本書を、そのまま “自分の頭で考える” きっかけにしてもいいわけで。

 自分の年齢にふさわしい教養を身につけたいビジネスパーソンはもちろん、社会に出る前の学生さんにも。「教養」とは何たるかを改めて考えるに際して、本書は大きな手助けとなるはずです。

人間は何歳になっても世界を知りたい、世界の謎を解きたいという気持ちを持っているものです。好奇心と呼んでもいいでしょう。そうした気持ちのあり方がその人の教養を深める強力なエンジンとなるのです。

 

木下是雄『理科系の作文技術』

 大学生、特に書名にもある〈理科系〉の人間のあいだでは、しばしば「必読書」と謳われる本書。「正確・簡潔・明瞭な文章を書くための技法をまとめたハウツー本」であり、論文にとどまらない、幅広い分野の文章を書くにあたって必要な、基本的な作文技術をまとめています。

 読んで字のごとく〈理科系〉の人をターゲットにしてはいるものの、本文で書かれているのは、〈文科系〉の人にとっても不可欠な「作文」の基礎。「なんとなく」で文章を書き散らしてきた人にこそ、ぜひ熟読してほしい1冊だと感じられました。

 と同時に本書の内容は、ネット炎上を回避するための心得としても参考にもなるんじゃないかと。「文章を読んだ人全員に等しく同じ情報が “伝わる” 」ことを目指した作文技術を身につけることで、得てして火種となりがちな、不用意な発言を控えられるようになる……はず。

 言うなれば本書は、読者各々に異なる “解釈” の幅を極限まで狭め、それを読んだ人全員に等しく、同じ情報が「伝わる」ような作文技術を紐解いた1冊。情報伝達の基礎を学べるハウツー本として、あらゆる文書の執筆者にとって有益と言えるのではないでしょうか。

 私が理科系の仕事の文書の文章はかくあるべきだと考えている姿をスケッチすると、およそ以上のようになる。その著しい特徴は、〈いい文章〉というときに多くの人がまっさきに期待するのではないかと思われるもの、すなわち「人の心を打つ」、「琴線にふれる」、「心を高揚させる」、「うっとりさせる」というような性格がいっさい無視されていることである。これは、先に述べた理科系の仕事の文書の内容の特性、すなわち、情報と意見の伝達だけを使命として心情的要素をふくまないことと対応する。これらの文書のなかには、原則として〈感想〉を混入させてはいけないのである。

 

大山旬『おしゃれが苦手でもセンスよく見せる 最強の「服選び」』

 「ふぁっしょん? なにそれおいしいの?」レベルで無頓着な自分を奮起するべく購入した、大人の男性向けファッション指南書。同年代のあいだでは『最速でおしゃれに見せる方法』に代表されるMB氏の本が人気のようですが、今いちピンとこなかったので。

 本書がターゲットとしている読者層は、30代以降の男性とのこと。「ハッハァ! 老け顔の自分(20代)にはちょうどいいぜ!」と開き直り読んでみたら、これが思いのほかしっくりきた。読み進めるのが楽しかったし、実際に「服、買いに行きたい!」と思わせる魅力があったのです。

 全6章構成のなかで取り上げているのは、ベーシックかつオーソドックスなファッションスタイル。そもそもの基本ルールとしての服の選び方に始まり、カジュアル、スーツスタイル、ジャケパンなどを紹介。最後は、定番アイテムを組み合わせた実際のコーディネートを掲載しています。

 で、実際にアイテムをそろえて着てみたところ、いつも口うるさく自分の服装にダメ出ししていた友人が、「すげえ! 服がまともだ!」と一周まわってドン引きしていました。……その物言いは複雑なのだけれど、まあ、それだけ本書が実践的な内容であったことの証左と言えるんじゃないかしら。

 


 

お題「2017年上半期」

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