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ぐるりみち。

日々日々、めぐって、遠まわり。

コミック売り場は戦場だ!『ガイコツ書店員 本田さん』で爆笑した

 ――“勢い”って大事だと、心からそう思う。

 CDショップでのジャケ買いだとか、気になる家電の衝動買いだとか、ハードルの高さを感じていた合コン街コンへの出席だとか、辞められなかった会社への退職願とか。商品あるいは退職届を手に、それをバチコーンと叩けつけるのは最高に気持ちがいいのだ。しない後悔よりする後悔!

 

 

 近頃、そんな“勢い”を持ったマンガとして、『ガイコツ書店員 本田さん』がアツい……らしい。ジーンPixivで連載中のコミックエッセイであり、「コミック売り場担当の書店員さんと書店の日常を描いたマンガ」として、二重の意味で“コミック”なエッセイでござる。

 過去に何度かレビュー記事をチラ見するにとどまらず、「最近のおすすめマンガ」としてTwitter上でもたびたびタイトルを目にし、書店でもいまだにピックアップ本として陳列されている本作。そんなに勢いがあるのか……やべえのか……とんでもねえ書店本なのか……と思っていたら。

 

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本田『ガイコツ書店員 本田さん』(1) P.30

 

 なるほど。

 

 

外国のお客様(腐女子)から出版社の営業さんとの仁義なき戦いまで

 本書『ガイコツ書店員 本田さん』は、一口に言うと、「ガイコツな書店員である本田さんと愉快な仲間たちを中心に繰り広げられる、書店の“実録コメディ”」でございます。“実録”……だと……(外国の腐女子なお姉さまを見ながら)。いや、でも、アニ●イトに行けばたしかに普通にいらっしゃいますね。

 主人公の本田さんはご覧のとおり「ガイコツ」ですが、決して昨今の流行りである「異世界モノ」というわけではありません(なんたって“実録”!)。ほかの書店員さんも仮面・カボチャ・ガスマスクといった風貌で描かれており、各々にキャラが立っていて魅力的。個性豊かなお客様たちとのやり取りも含めて、「こんな書店で働きたい!」と思えるような内容になっています。

 

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本田『ガイコツ書店員 本田さん』(1) P.63

 

 ――とは言え、そりゃあもちろん楽な仕事であるはずもなく。普段は「客」として訪れる僕らの見えない裏方での作業や版元さんとのやり取りなど、書店員さんの悲喜こもごもを多彩な視点で描き出しているのも、本作の魅力のひとつ。ジュ●ク堂とか行くとね……むっちゃ走りまわってるもんね……。

 「笑顔は筋肉(接客研修にて)」「売り場はお察しエブリデイ(クソ忙しい)」「あったはずの列が消えてる(“爆買い”的な)」などの名言(?)も多々飛び出し、「書店員マジやべえ」が全力で伝わってくる愉快なエッセイコミックでござる。全体的に勢いがすごくてヒャッハー! してる。

 特に1、2話の「海外のお客様ァァァアアアァァアアア!?」なエピソードはもう最初からクライマックスなレベルで、ヤオイガールズとのやり取りは、今年読んだマンガのなかで一番笑った(久々に腹筋が死んだ)。あとは、娘に頼まれてマンガを探しにきたという、西洋のイケメンおじさま。

 

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本田『ガイコツ書店員 本田さん』(1) P.11

 

 「外国産イケメンおじさんが娘に頼まれて探しているマンガが『銀●』の触手な薄い本だった」という字面だけで、なんかもうやべえ(語彙貧)。そして、それを英語で説明する必要に迫られる書店員さんの英会話スキルとは……求められるレベルが高すぎる……!

 

「漫画迷子」を導く、コミック売り場店員さんの戦い

 他方で印象的だったのが、第3話「漫画迷子」のエピソード。自分には書店員の経験はありませんが、過去に本屋さんで何度か見かけたことのある光景だったので、「やっぱり本屋さんあるあるなのか……!」と納得できてしまった&書店員さんのプロの対応に感心したのでした。

 

「漫画迷子」とは

“漫画を読みたいけど具体的なタイトルは決まってなくて、
とりあえず本屋に入ってみたはいいものの、
より一層なにを読めばいいかよくわからなくなっている人を指す”

本田『ガイコツ書店員 本田さん』(1) P.44より

 

 つまり、お客様からの「おすすめのマンガを教えてほしい!」という漠然とした問いに答えるため、あれこれと条件を聞き出しながら脳内のデータベースを照会し、即座に最適解を導き出すプロの仕事である。本作では、バックヤードでのやり取りを含めた描写がおもしろかった。

 

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本田『ガイコツ書店員 本田さん』(1) P.55

 

 マンガソムリエ、すげえ……!

 何がすごいって、咄嗟にタイトルが出てくるのもそうだけど、特に外国のお客様相手の応対が細やか。こちらでは「日本語を読めない」ことを前提としていますが、言葉の習熟度を考慮したうえで作品を提案できるのは、売り場にいる書店員さんならではのスキルなんだろうな、と。

 他には「日本語が読める」人に対しても、「漢字にふりがながふってある(少年漫画)」ものと「ふりがながない(青年漫画)」もので大別し、確認を取っている例もあったり。そちらでは他の要素も考慮したうえで、某「それは私のおいなりさん」に着地するのもまたすげえ。

 

 ――という感じで、おもしろおかしく描かれる書店の日常と、徐々に愛くるしく思えてくるガイコツ本田さんたちのキャラクターも相まって、最初から最後まで笑いながら読めるのが実録エッセイが本作、『ガイコツ書店員 本田さん』でございました。

 でも一方では、時には仕事のなかで失敗することもあるだろうし、時にクレームに心を痛めることもあるのでしょう。そういった点も一部、おまけとして触れられていたのが印象的でした。書店員さん、がんばれ、ほどほどにがんばれ。……とか言いつつ、たまには頼りにさせていただきます。 

 

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(C) 本田/KADOKAWA

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