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ぐるりみち。

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「役立つ」って、どういうこと?『konel.mag Issue 4』

 「役立つ」は正義。いつの世も「生活の豆知識」はメディアで取り上げられる人気コンテンツだし、ネット上では横文字の「ライフハック」が好んで語られている。少しでも日常生活を快適に過ごすため、必要不可欠ではないものの、「お役立ち情報」を仕入れておいて損はない。

 しかし、一口に「役立つ」と言っても、その方向性はさまざまだ。ある人にとっては役に立つ知識も、別の人からすれば無価値であるかもしれない。自分が役に立つと考え起こした行動も、はたから見れば意味のないものに映るかもしれない。……そもそも「役立つ」って、何者なんです?

 

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なぜ役立つものが好きなのか? どうして役立つことがしたいのか?」について、皆さんは考えたことがあるでしょうか。改めて問われると、案外うまく説明できなかったりします。しかし「役立つっていいよね」という価値観は皆に共通しているのがおもしろいところです。では、僕たちが好きな「役立つ」の正体とは、一体なんなのでしょうか?

 

 そんな「役立つ」を考える同人誌、『konel.mag Issue 4』を読みました。筆者は、サークル「konel」の佐野章核@sanographixさんと、cube Tanaka@cube10さんのお二方。

 多彩な視点から語られる「役立つ」論に目を通しながら、自分も一緒にそれを考えながら読み進めることができる一冊です。僕らの生活に当たり前に溶け込んでいる「役立つ」について、改めて考えてみませう。

 

 

「お役立ち本」ではなく、「“役立つを考える”本」

 「ライフハック」や「おばあちゃんの知恵」といった“お役立ち情報”ではなく、その根っこにある“役立つ”とは何かを考える。「“役立つ”って、なーに?」を論じるのが本書のテーマであり、いわゆる“お役立ち本”とは毛色の異なる内容となっております。……なんか、メタい。

 そう、何が「役立つ」かは、人や環境によって異なる。田舎では必要不可欠な自家用車も、都会では維持費や諸々を圧迫するため必ずしも役立つとは限らない。あるいは、学生時代に嫌々ながらやっていたアルバイトの経験が、大人になってから役立つ場面があるかもしれない。

 

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 そこで本書ではまず、筆者2人が考える「身の回りで役立つもの」を例示しています。薬や家具といった誰にとっても身近なものをはじめ、なかには「それを“役立つ”と感じる人もいるんだ……」と感じる人もいそうなものまで。“テレビに映ったあずにゃん”、わかる。超お役立ちですよね……。

 そのうえで、続けて筆者2人の「役立ち原体験」を振り返るエピソードがあり、実際にどういった「役立ち活動」をしてきたかを挙げつつ、最後にそれら事例から「役立ちの分類」をまとめていく内容となっています。個人的な経験から、「役立つ」を深掘りしていく感じ。おもしろい。

 

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 また、2人の筆者だけでなく、ゲスト3名による寄稿が掲載されているのもポイント。各々に違った視点からの「役立つ」論が語られており、「“役立つ”というテーマひとつだけで、こんなにいろいろ考えることができるのか……!」と思える、刺激的な内容になっていました。

 

自分にとって「身の回りで役立つもの・こと」は?

 冒頭でもちょろっと書きましたが、複数の「役立つ」論を読みつつ、自分自身にとっての「役立つ」を考えることができるのも本書の魅力。ページの何ヶ所かにワークシートを設けており、自分にとっての「役立つ」を書き込みながら読み進めることが可能です。わぁい!

 ――というわけで実際に、自分にとっての「身の回りで役立つもの・こと」を考えてみました。

 

① 思わず歩きたくなる「下駄」

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ぶらり散歩が楽しくなる「下駄」のススメ - ぐるりみち。

 スニーカーとは異なる履き心地と開放感が癖になる、お気に入りの履き物。夏場は足に熱がこもらず、下駄特有の「カランコロン」という音を鳴らしながら歩くのも楽しい。思わず外へ出て散歩したくなる魅力があり、それによって生活にもある種の“リズム”が生まれている……かも?

 

② オールマイティーに使える「メモ帳」

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 なんやかんやでアナクロな小物も愛する自分にとって、「紙とペン」はどこへ行くにも手放せない存在。街中を歩いていて気になったものをメモするだけでなく、ふと思い浮かんだブログネタを書き記すのにもメモ帳が大活躍! ……スマホの「メモ」だと、あまり見返さないのよね。

 

③ 生活を彩る「音楽」

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僕と音楽とをつないできた、iPod - ぐるりみち。

 作業用BGMとしてはもちろん、気分転換や暇つぶしにも欠かせないミュージック。iPod touchとの付き合いはかれこれ6年にも及び、苦楽を共にしてきた仲でござる。時と場合によって流す曲を使い分け、日常を彩ってくれる素敵な存在。“聴く”だけでなく、“奏で”ても楽しい。ヒトカラ行きたひ。

 

「役立つ」って、なんだろう

 自分にとっての「役立つ」を考えるなかで思い出されたのは、小学生の時のこと。すっかり忘れていたけれど、小学生の頃の僕って、むちゃくちゃ「黒板消し」が好きだったんですよ。……いや、フェチ的な意味でなく、「黒板をキレイにする行為」に達成感を覚えていたというか。

 当時のクラスには、休み時間や放課後に黒板をキレイにする「黒板消し係」の存在があった。でもその係とは別に、時間がある放課後には教室に残って、あるいは朝早めに登校して、こっそりと黒板掃除をするのが好きだったのです。そう、あくまで、“こっそり”。

 なんとなく恥ずかしかったのもあるけれど、そうやって黒板を必要以上にキレイにしておくと、先生を含めた何人かは「おや?」という顔をして気づくんですよね。その「おや?」を見て、内心でドヤ顔をすることに快感を覚えていたのではないかと。やってやったぜ、みたいな。

 

 これって、はたから見ればただの「自己満足」に過ぎないけれど、場合によっては誰かの「役に立つ」行為であるとも言えるんじゃないかしら。

 黒板消し係の子が「なんか知らんけど仕事が減ったぜラッキー」と思ってくれているかもしれないし、キレイな黒板で1限目を迎えた先生が「今日はやたらと黒板がキレイでチョークが使いやすいような……」と気持ちよく感じてくれているかもしれない(※チョークもしっかり揃えてた)

 

 もちろん、「余計なことをしやがって……」などと逆効果になるケースも時にはあるでしょうが、これもある種の「役立つ」の形かと。本書の「原体験」の項目でも、「特に誰かに頼まれていないが何か作る」エピソードが挙げられていましたが、それに近いはず。

 たとえ自己満足でもそれが誰かの役に立つことは少なからずあるし、誰の役に立たずとも、その経験がのちに自分にとって「役立つ」ものとなる場合だってある。このように、何かを意図した行動やモノでなくとも、自然発生的に生まれる「役立ち」もあるのではないかしら。

 今書いているこの「ブログ」だって、同じ流れを汲むものだと言えるでしょう。本書の「役立ちの分類」の部分でも、“自分のため”から“他人のため”へと移行するパターンとして、まさにブログが挙げられておりましたし。自己完結しているつもりの行動が、誰かに好影響を及ぼす形。

 

 なればこそ、自分なりに「役立つ」を言い換えるなら、「他者へともたらされるポジティブな流れ(コミュニケーション)とでも表現しておきましょうか。それは必ずしも相手が必要でなく、何らかの目的や意図をもって為された行動でなくとも、気づけば誰かのためになっている。

 その“誰か”は画面を通した先の見知らぬ他人かもしれないし、あるいは未来の自分自身だということもあるかもしれない。何がいつ、どのように「役立つ」ようになるかは知れず、ある日を境に、何でもない日記が価値あるものとして「役立つ」ことだってある。……それって、素敵。

 

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【C90新刊】どうして役立つものが好きなんだろう? を特集した同人誌『konel.mag Issue 4』

 

 そして言わずもがな、こうしていろいろと思い返すきっかけになった本書『konel.mag Issue 4』は、自分にとって素晴らしく「役立つ」一冊でした。おもしろかったです。

 自分のため自分のためと言って続けてきたこのブログも、たまにはもう少し“誰かのため”と考えて書いてみようかなと、そう思わされるくらい。もっともっと、お役立ちたい……!

 

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