2016年上半期に読んだマンガ・本を20冊まとめたよ


 2016年も折り返し地点。 

 本記事では「この半年間で自分が読んだ本」に絞って、印象的だったマンガと本をまとめています。内容をしっかり覚えている作品、他人に勧められる書籍という基準でピックアップした結果、ちょうど20冊に収まった感じ。

 全体的に新書が多めですが、小説・ラノベ・コミック・ビジネス書・電子書籍・同人誌といった媒体の区分やジャンルの選別なく、広い意味での「本」をまとめています。よかったら参考にどうぞ。逆に「こういう選書なら、この本もどう?」なんておすすめも教えていただけたら嬉しいっす。

 

『青春のアフター』緑のルーペ

 青春の“後始末”を描いた群像劇。「憂鬱になる」との前評判を聞いて読んでみたら、想像以上だった。単なる青春ラブコメではなく、「タイムスリップ」が鍵となった作品。

 ただの三角関係で終わっていればよかったのに、そこに時間軸が加わったせいで、胃痛がマッハ。思春期に深く深く抉られた古傷が、16年をかけて癒せたはずのトラウマが、そのまま純度100%の形で目の前に現れるという、ある意味ではすごく残酷な物語。

 2巻を読み終えて、思わず頭を抱えてしまった。うわあ……マジかよ……きっついわこれ……と。主人公のトラウマとなった空白の16年間を断片的に描いていているが、そこにあるのは想い人への献身的で一途な想いであり、偏狭的に拗れきった依存と固執。これが、読んでいて本当にキツい。

 「失恋」は割り切るもの、乗り越えるもの、時が過ぎれば笑って話せるもの――として描かれている他作品とは異なり、「割りきったつもりでも、そんな簡単なもんじゃない」と、現実を突きつけるような非情さがある。……それこそが、本作の魅力だとも言えそうではありますが。

『やがて君になる』仲谷鳰

 はじめて読んだ百合漫画。「好き」という特別な感情を実感できない先輩後輩関係の2人が、徐々に互いに惹かれていく物語……かと思ったら、先輩のほうが即堕ちでベタ惚れしてた。

 他方ではいまだ「特別」を見つけられず、キラキラと輝きだした先輩を冷めた目線で見ながらも惹かれ始めている後輩ちゃん――という図もまた、対比的でおもしろい。キャラクターの感情の機微が自然と読み取れる描かれ方も魅力的で、早くも3回読んでしまった。

 続く2巻では、周囲にいるキャラクターと先輩の過去に関する掘り下げがあり、決してメインの2人のみで物語が展開していくわけではないらしいということが判明。特に、2人とは違った方向で「傍観者」たる槙くんの存在が気になるなるなる。少なからず関わってきそう。

 そして何よりも素晴らしいのが、背景絵を存分に使った心情の演出。「特別」を知って夕日に向かって微笑む先輩と、いまだ「特別」を知らず夕日を背に浮かない表情の後輩ちゃん。かと思えば、槙くんの指摘によって「特別」を意識する場面では木漏れ日の中にいるなど、深読みできそうな背景描写が素敵です。

『ここは異世界コンビニ デモン・イレブン』大楽絢太

 今野隼史さんのイラストにホイホイされました。突如として異世界に転移したコンビニを舞台にした、アルバイトたちと異世界人との異文化交流ギャグラノベ。とにかく「コンビニ」×「異世界」の組み合わせを主軸に置いているようで、細かい部分にツッコむのは野暮というもの。

 全スキルを解放して立ち読みを続ける勇者一行に、後ろ向き過ぎる女魔王など、キャラクターは個性豊か、かつリアクション芸人の多さも相まって、クスッと笑えるおもしろさ。欲を言うと、コンビニ本来の「仕事」をもう少し掘り下げてくれれば、“お仕事モノ”としても楽しめそう。

『小説 言の葉の庭』新海誠

 映画監督としての新海誠さんは大好きですが、作家としての文章もたまらなく大好き――ということを、改めて実感することができた一冊。同名映画を、監督自ら小説化。6人の視点から描かれる群像劇は、どこか切なく、苦しく、それでも美しく思えるもの。

 誰もが何かを抱えながらも、必死に日常を生きている。あくまで「映像の文章化」あるいは「原作」として書かれているように感じた『秒速』と異なり、小説版『言の葉の庭』は映画の世界観を大きく拡張した、「別作品」としても読めるほどでした。映画を観た人は、ぜひぜひ。

『あなたの話はなぜ「通じない」のか』山田ズーニー

 キーワードは、「メディア力」。あらゆるコミュニケーションを円滑にし、ただ会話をやり過ごすのではなく、双方の納得のいく形で「自分」の意見を伝えるための方法を論じた一冊であり、ぜひとも何度も読み返すことで身につけたいと思える読後感がありました。

 「論理」と「共感」の要素を意識し、自分を理解し、相手を敬うコミュニケーションを心掛けることによって、自分のメディア力が向上し、ひいては信頼につながる。要素要素を切り分けて、日常会話やネットコミュニケーションに当てはめて考えてみたいところ。

『大人のための文章教室』清水義範

 パスティーシュの名手として名を馳せた小説家・清水義範さんの著書。序盤の「ワープロ」に関する視点が懐疑的に感じた一方で、本文で論じられている「作文技法」は、どれもすぐに実践できそうなほどに実用的でした。

 接続詞の扱いに始まり、文の長短と句読点について。文体の如何を問い、避けるべき文章の例示、分野別の文章作法など。そして最後は、筆者の経験に基づく文章上達の具体的手段を示し、文を結んでいる。“大人のため”と謳っていながら、中学生が手に取って読めそうな、広い世代へ勧められる一冊であるように感じました。

『文章は接続詞で決まる』石黒圭

 多種多様な「接続詞」の用法と、類似表現の差異を比較・検討した解説本。新書サイズの割に、これ一冊で「接続詞の辞典」として使えるくらいには濃ゆい一冊となっています。

 本書ではまず、接続詞の定義と役割を確認した上で、四種十類に分類。それぞれを個別に説明しつつ、似通った接続詞の使い分けも流れで学ぶことが可能です。さらには文章にとどまらず、「話し言葉」の接続詞にも言及するなど、示唆に富んだ内容。巻末には索引まで用意してある親切設計で、手元に置いておきたくなる魅力がありました。

『「世間」とは何か』阿部謹也

 「世間をお騒がせして申し訳ありません」という表現が指し示す「世間」とは、いったいどこの誰のことなのだろう。「個人」を前提とした西欧の「社会」とは明確に異なる、日本独特の表現である「世間」という言葉について、複数の古典の記述から紐解いた一冊。

 吉田兼好、井原西鶴、夏目漱石などを詳細に取り上げているため、文化史的な要素も強い。学校で学んだ日本史とは異なる部分でのつながりを感じられるため、知的好奇心をくすぐられる内容です。「世間」という言葉について考えたい人はもちろん、日本史や民俗学好きな人にも。

『「表現の自由」の守り方』山田太郎

 一口に言えば、「議員・山田太郎の表現規制反対運動の経過と実績」を記した一冊。児童ポルノ禁止法、TPPと著作権非親告罪化、国連特別報告書、有害図書指定といった「表現規制」に関わる諸問題に対応し、表現の自由を守るべく取り組んできた運動の記録。

 守るべき対象を無視して進める規制などあってはならないし、自分が気に入らないものを否定するために問題を矮小化してはいけない。ただ大声で「規制反対!」を叫ぶでなく、付随する問題をも考慮しつつ活動する筆者の方針は、とても納得のいくものでした。

『角川インターネット講座4 ネットが生んだ文化』川上量生

 川上量生さんによる監修の下、全8章・計8人の筆者によって「ネットカルチャー」について論じられた一冊。

 その焦点となるのは、序章で語られる「ネット原住民」と「ネット新住民」という区分。ネット上に存在する軋轢の大多数はこの二者間の“文化的衝突”であり、互いの不理解・不寛容によるものである、と。ネットの根底に流れる「ネットカルチャー」と価値観は、黎明期に原住民の中で自然発生し、脈々と受け継がれてきたもの。なればこそ、その流れを汲んだ本書は「ネット」を知るための参考書となるのではないかしら。

『乗り遅れるな! ソーシャルおじさん増殖中!』徳本昌大、高木芳紀

 インターネット上で積極的にソーシャルメディアを活用する“おじさん”こと、「ソーシャルおじさん」たちがインターネットの使い方を説いた一冊。

 同世代の“おじさん”読者に「ソーシャルメディアは仕事にも生活にもプラスになるよ!」とその魅力を説くにとどまらず、具体的な活用方法とSNSの特徴・考え方などに関しても言及されているため、ネット初心者にもおすすめできそう。

 2012年末発売ということで少し情報は古めですが、いま読んでも勉強になる部分が多かったです。経験豊かな「おじさん」が語るソーシャルメディア論を、ぜひ読んでみてください。

『ウェブ時代の書き手に必要な「3つの逆転」』堀正岳

 アルファブロガー・堀正岳さんによるライター論。粗製濫造されたコンテンツが跋扈するウェブにおいて、あえて読者を「減らす」ことのススメ。

 あえてコンテンツを絞ることでフィルターを設け、その中でも自分を“選んで”くれた読者と密な関係を築き、価値あるものを提供していくための考え方がまとめられています。漠然と感じていたウェブコンテンツの方向性の在り方を言語化してもらったような、すっきりとした読後感。後半部分では「無料」と「有料」の差別化の主砲についても端的に示されており、参考になりました。

『旅と日常へつなげる』チェコ好き

 “インターネットで、もう疲れない。”というサブタイトルが示唆的な本書のテーマは、一口に言えば「デジタルデトックス」。現実とネットとの境界線が限りなく薄くなりつつある現代において、インターネットとの付き合い方を示した一冊となっています。

 白か黒かという極論には走らず、メリットも多々あるネットをうまく使うための、“付き合い方”を考える内容。「SNS疲れ」から脱出し、自分の内から生まれる「欲望」を持つための手段として、SNSアプリを削除したうえで「旅」に出ることを勧めています。

『茶―利休と今をつなぐ』千宗屋

 ハードルの高い「茶道」「茶の湯」について、茶道三千家のひとつ・武者小路千家の次期家元が噛み砕いてわかりやすく概説した、入門書的な一冊。

 茶の湯は「インスタレーション」であり、「パフォーミングアート」であるという言説に、今までのイメージをひっくり返された。利休に連なる「茶」の歴史と文化、茶器の説明に留まらず、日常生活における立ち位置や考え方などについても書かれており、門外漢の自分でもおもしろく読むことができました。

『日記の魔力』表三郎

 30年間、試行錯誤しながら見出してきた筆者にとっての「日記」の意義と魅力、そして、それを楽しく続けることによって生活を好転させるための「使い方」を論じた本。

 序盤は精神論が多く、「日記を書けば必ず人生は良い方向へと動き出す!」と言わんばかりのヨイショっぷりに少し引き気味だったものの、読み終えてみれば「おもしろかった!」と断言できる内容でした。これから日記を書こうという人はもちろん、すでに日記を書いている人が、それをさらに生かすためのヒントを得ることのできるだろう一冊です。

『なるほどデザイン』筒井美希

 「デザイン」の“デ”の字もわからない自分が、少しでも勉強するべく読んだ入門書。サブタイトルに“目で見て楽しむ”と挿入されているとおり、図解・イラスト・写真が多用されていて、非常に読みやすかったです。

 各項目で具体的な例示と比較、何が良くて、何が悪いかがしっかりと説明されているため、それこそ「なるほど!」と頷きながら読み進めることができました。とにかく間口が広く、「デザイン」に対する関心を間違いなく強めてくれるだろう本。おすすめです。

『もうミスらない 脱オタクファッションバイブル』久世

 なもり先生の表紙絵にホイホイされた。ファッションに疎い「オタク」を想定読者とした、ファッション入門書。“チェック柄のシャツ”に代表される「オタクっぽい服装」の問題点を挙げた上で、どのような部分に気を付けて服を選んでいけば良いのか、改善方法を提案する内容。

 基礎中の基礎からイラスト&マンガ付きで説明してくれるので、何も知らない人の「最初の一冊」として勧められそう。身だしなみの基礎となる知識の説明はもちろん、おすすめのコーディネートや店名も具体的に挙げて提案してくれているので、すぐにでも行動に移せる点も魅力。

『Salt!』明日葉

 『艦隊これくしょん』の公式絵師としても有名な、草田草太さんの同人誌。“自称:おそらく同人作家1食べている”(あとがきより)と語る筆者さんによる、「塩」のガチ評論本。

 基礎知識に始まり、おすすめの塩を12種類+5種類、徹底レビュー。おなじみ、ドイツアルプスの岩塩「アルペンザルツ」に始まり、インドネシアの天日塩、イスラエル・死海の湖塩、フランスのブレンド海水塩など、各地の「塩」がたくさん。「毎日の食卓で使われる塩だからこそ、適当に選んで使うのはもったいない!」ということで、それぞれの塩に合う料理も紹介されており、料理好きの方の参考となるのではないでしょうか。

『セブン-イレブンで呑む』かるこーるぞく

 セブン-イレブンで購入できる酒の肴とアルコール飲料を紹介した同人誌。

 その商品数、なんと40種類以上。それぞれの価格・カロリー・内容量・調理方法・原材料に加えて、「ご飯が欲しい度」「肴度」「量」「価格」「手軽さ」といった独自のレーダーチャートも含めたレビュー本となっております。

 味や量といった基本的なポイントにとどまらず、「合いそうなお酒」「こんな人におすすめ」といった切り口の感想も記されており、逆に「○○が苦手な人は注意」といった指摘まである点もありがたい。

『konel.mag Issue03』konel

 同人サークル・konelさんによる、「名前」特集号。自分たちのサークルが改名するにあたっての経緯とプロセスを徹底的にまとめ上げており、「そこまで徹底的にやるのか!」という驚きが大きかったです。

 一方では、複数のクリエイターさん&サークルさんにもインタビュー。その「名前」の由来・良かったこと・困ったことなどが掲載されており、十人十色の「名前」を楽しむことができます。これから何らかの「名前」を決めようという人はもちろん、身近なものの由来や裏話が好きな人にもおすすめの一冊。

 

関連記事