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ぐるりみち。

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『ガルパンFebri』はスタッフ愛と編集愛が詰まった、ファン必読の保存版

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ガルパンFebri | 本 | Amazon.co.jp

 

 『ガルパンFebri』がついに発売しおったぞー!

 

 一冊丸ごと『ガールズ&パンツァー』を特集した、『Febri』の増刊号として発売された本書。ありがたいことに電子書籍・Kindle版も同時発売(しかも安い)となっていたので、迷わず購入しました。

 主要スタッフインタビューに始まり、声優さんたちの座談会、劇場版の用語集に、WWⅡの戦車をガチ解説した特集、複数作家によるマンガ5編、蝶野正洋さんや林家三平さんが語る“ガルパン愛”のコラムに、聖地巡礼マップなど、ボリュームたっぷりの約160ページ

 各コンテンツも非常に読み応えがあり、がっつりと読み耽っていたら、軽く3時間以上はかかりました。いやー、お腹いっぱいの大満足。『ガルパン』に関しては初心者、しかもミリタリーの知識も皆無な自分でも楽しめるような、幅広い層の“ガルパンファン”が楽しめる一冊でござる。

 

 要するに、『ガルパン』が好きなら買って損はない。
 ニワカだろうがガチ勢だろうが、とりあえず手に取ってみて! ガルパンはいいぞ。

 

あなたが好きな『ガルパン』はどこから? ――ぜんぶ詰まってるよ!

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( ゚∀゚)o彡゜ドゥーチェ! ドゥーチェ!(『ガルパンFebri』P.013)

 『ガルパンFebri』の見どころは何かと問われたら「だいたいぜんぶ!」と即答するくらいには、濃密な一冊となっている本書。コアなファンにとっては読んで嬉しい裏話があり、「作品が好き」くらいの人でも楽しめる構成となっているように読めました。

 

 まず何より、スタッフインタビューのページだけで読み応えが尋常じゃない。脚本、キャラクターデザイン、演出、絵コンテ、考証、3D監督、音響監督、プロデューサーなど、各スタッフさんの視点から『ガルパン』という作品が存分に語られております。

 そこからは「作り手」側のこだわりや思い入れがわかるだけでなく、本当に楽しんで制作に携わってきたことも伝わってきて、純粋に読み物としてもおもしろい。「実はこういう作り込みをしていて……」という裏話を読んでしまったら、再び劇場に足を運びたくなるのも必然でしょう。

 

 他方では、それ以外の特集部分も熱量では負けていない。「俺のガルパン愛を聞け!」のコラムでは、落語家・林家三平さんが水を得た魚のように戦車愛を語っていてビビった。プロレスラー・蝶野正洋さんが語る、プロレスと戦車道の共通点もおもしろい。

 特に「劇場版エンサイクロペディア」の項目は、筆者さんがあちこち資料をあさりつつも、劇場版を思い返してニヤニヤしながら書いている姿を幻視するレベルでした。お姉ちゃんの台詞の解説に「可愛くてよし」と付け加えたり、西さんに「マジレス格好いい」と突っ込んだり。楽しそう。

 

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『ガルパン』で戦車に興味を持った人の入門に(P.098〜099)

 戦車開発史も、全くの門外漢である自分には勉強になる内容。かるーく読み流してからアニメを見直すだけでも、「あ、こういう特徴があるからこういう動きだったのか」と納得できそうな。

 他にも先ほど挙げたようなマンガがあったり、あんこうチーム5人の声優さんの座談会があったり、キャスト49人に対して敢行した一問一答のメールインタビューもあったり。どこから読んでも楽しめる、『ガルパン』が詰まりに詰まった一冊です。

 

“自分が「ファンとして見たいもの」を作った”、ガルパン制作陣

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キャラクターデザインの設定画・ラフ画なども(P.014〜015)

 キャストインタビューを読んでいて印象的だったのが、みなさん共通して「楽しかった」と話している点でした。それも表面的な感想には感じられず、とにかく細部までこだわりぬいたうえで見つけた、自分なりの「愛」を語っているんように読めるんですよね。

 

スケジュールも予算も限られたTVシリーズをやっていく中で、いつの間にか「いかにうまくまとめるか」が、仕事の中心に来るようになっていたんです。そういうところに劇場版をいう仕事をいただいて、しかも「今、全力を出さないでいつ出すんだ」という勢いで取り組まれている方たちに囲まれて仕事ができた。そういう意味では、もっと熱量を発していかなきゃダメだな、と。アニメ制作を目指した頃の自分の気持ちを、改めて思い出した気がします。

(演出/藤井辰巳さん/P.019)

自分の今の能力の最大値がどこなのか、探ってみたいと思って始めたんですけど、自分の至らない部分やできない部分を含めて、自分の現状を認識できた作品だったと思います。ただ、3年前に自分が見たかったもの、やりたかったものを詰め込んでそれが映像になったということはすごく感慨深い。まず、なによりも自分が『ガルパン』のファンなんですよ。だから「こういうものをお客さんに見せたい」ではなくて、自分が「ファンとして見たいもの」を作ったし、それを貫徹できたのかなと思います。

(絵コンテ・演出/小林敦さん/P.021)

 

 実際の現場の様子は外からはわかりませんが、それでも制作が終わったあとにこうして「よかった」と満足気に話せることは、一種の理想なのではないかとも思います。それがストレートに伝わってくる内容として、読んでいて気持ちのいいインタビューでした。

 そのうえで、各スタッフさんが担当した作品部分への「こだわり」が詳細に語られており、「もっかい映画館に行かなきゃ……」と焦燥感に駆られること間違いなし。あまりこういった制作側の話を読まない人にとっては、アニメ制作の過程とおもしろさが垣間見える内容ともなっているのではないかしら。立川シネマシティの「極上爆音上映」に魅了された自分としては、音響監督・岩浪美和さんの話が興味深く読めました。『マッドマックス』にも言及されてて笑った。

 

「ガルパンはいいぞ」 でつながる関係性

 『ガルパンFebri』を最後まで読み終えての感想としては、「コアなミリタリーオタクも、週に何十本もアニメを見るようなアニメオタクも、たまたま目に入ったのを見ただけというガルパンファンも、等しく楽しめる一冊になっている」という印象です。

 もともと戦車が好きでハマった人は車輌の選定や動かし方の話にニヤニヤできるでしょうし、映像の演出面に興味がある人はスタッフさんの“こだわり”を読んで再度劇場に足を運ぶかもしれません。アニメと劇場版しか見ていないという人も各種メディアミックスの推薦文を読んで、マンガやドラマCDに手を出してみようかなと考えるのではないかしら。

 

 要するに、複数の分野・視点から書かれたコンテンツが勢揃いしているため、詳しかろうが一見さんだろうが、本書を読めば等しく『ガルパン』世界を広げうる書籍となっているのではないかと。……そう感じるくらいに、できすぎている一冊。2,000円以内で買えるのは安すぎる。

 でもそれって同時に、そもそもこの『ガルパン』という作品の魅力でもあったんじゃないか、とも思うんですよね。戦車好きは言うに及ばず、軍事ネタがわからずとも、ストーリーで楽しめる、キャラクターに魅力を感じられる、大洗の町と紐付けられる。楽しみ方はきっと、十人十色。

 ――と考えると、それを端的に示したのが、おなじみの「ガルパンはいいぞ」なのでは……?

 

 

 この「見ればわかる」論は『マッドマックス』の盛り上がりを踏襲したものであるようにも見えますが、『ガルパン』の場合、作品の魅力を感じる部分が意外と人によって異なり、それでも本作を誰かに勧めたいという思いから自然と漏れた感想であるようにも感じるんですよね(考えすぎ)

 戦車戦も熱いし、キャラクターも可愛いし、音楽も耳に残るし、物語も感動できるし、姉妹関係にもほっこりできる。細部では、戦車へのこだわりや大洗の町の再現度などを語ることも可能。それらすべてを引っくるめたうえでの共通した感想が、「ガルパンはいいぞ」、と。

 

 インタビューの最後、『ガルパン』と大洗とをつないだ常盤良彦さんが「『ガルパン』って人と人とをつなげる良い潤滑剤なんですよね」と話しておられますが、本当に。

 2月からは全国で4DX上映が始まり、3月には大洗春まつり海楽フェスタでのイベントなども予定されており、まだまだ『ガルパン』熱は冷めやらぬ模様。その熱を高める意味でも、本書はファン必読の一冊でございましょう。まずは本屋へ、Panzer vor!

 

 

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