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ぐるりみち。

日々日々、めぐって、遠まわり。

『文章力の鍛え方』根拠を明確に発信するためのに必要な“思考力”とは

 

 毎度おなじみ、「文章力」の本でございます。

 いやね、いい加減にそろそろ、「『文章力』って、結局は書き手の試行錯誤によって培われるものであって、具体的な方法論は参考程度のもんでしょ?」という考えが浮かばなくもない、というかもうずっと前からそんな意識はあるんですが……買っちゃうのよね。

 

 ――しょうがないじゃない! 安かったんだもん!
 というわけで、読んでみました。おのれ、Kindleセール。

 

 

モノを書くには、「思考力」を鍛えなければならない

 さて、見るからにデカデカと「文章力」の文字が踊る本書、『文章力の鍛え方』。さぞや実践的な知識と執筆術がまとめられているのかと思いきや、そのような、いわゆる「文章術」の話題はメインとなっておりません。あくまで、コンテンツのひとつ。

 具体的には――「小論文」と「作文」の違いと、それぞれの文章構成。読者を飽きさせないための、文体と表現技法。語彙力の鍛え方と、主語述語の並べ替えをはじめとする構文の知識。――などといった「文章力」の記述も当然あるのだけれど、それだけじゃあござらぬ。

 

 文章で書こうとすると、しっかりとものごとを考えます。普段、深く考えないことや見えないことも、書こうとして考えるからこそ見えてくるのです。そして、実際に書こうとしてこそ、論理的にものごとを分析できます。

 そうしてこそ、しっかりした話もでき、論理的な会話ができるようになるのです。会議での発言も、文章を書けるようになってこそ、自信を持ってできるようになるでしょう。

 

 曰く、“文章を書くということは、根拠を明確に発信すること”

 

 論理的思考は、文章力を鍛えることによって培われる。
 文章を書くためには、根拠を明らかにした思考法が必要となる。

 

 どちらが先というわけでもなく(強いて言えば「思考」が先ですが)、両方の活動を意識的に継続してこそ、経験に裏打ちされた「文章力」が身につくようになるのだ、と。

 はっきりと文中で明言されているわけではありません。ですが、「文章力」を会得するには前提となる「思考力」を鍛える必要があり、それを文章に落としこむことによって「思考力」も同様に訓練される――と、自分が読むかぎりでは、そういった論調でもって本文が展開しているように感じました。

 

日々の生活の中で多彩な視点を持つことで、思考力を叩き上げる

 本書は全4章から構成されており、各章の文中では小見出しとして、全体で65個もの「論」に分けて説明されています。

 

 例えば、第1章内の見出しを見ると、

  • 論5 「そうとはかぎらない」という視点をもつ
  • 論6 「あの人ならどう考えるか」と想像する

といった、文章表現以前の「多角的な視点」に関する指摘から始まり、

  • 論12 言葉の「定義」をしてみる
  • 論18 「定義」から「対策」にたどりつく

のように、徐々に「論理」の構成方法を解説したうえで、

  • 論24 意識して上手に質問する
  • 論27 会議では必ず反論か補足を行う

――このような形でもって、論理の先にある「コミュニケーション」にまで踏み込んだ後に、続く第2章、「表現力」「描写力」の話へとつなぐような構成になっております。

 

 ぶっちゃけ最初は、「どこが文章力やねん!……いや、議論方法の話とかはおもしろいっちゃおもしろいんだけど、『論』が多すぎてブレブレになってね?」なんて考えながら読んでいたのだけれど。

 1冊を読み終えてから、改めてざっと追いかけてみると、「文章力」以前の「思考力」を読者に自然と意識させ、学ばせるような展開になっているように読めました。それも、身近な日常生活の話題から具体例を出しており、とてもしっくりくる内容。

 

 ただ、「論」が多すぎるために、若干の矛盾をはらんでいるように読めるのも事実。「決めつけずに掘り下げて考える」の次に、「まず口に出して言ってしまう」という項目が飛び出してきたときには、軽く面食らった。

 とは言え、それも「考える力」を鍛えんとするための“複数の視点”を持つための訓練と考えれば、まあ納得のいくものなのかな、と。序盤部分は論点があっちゃこっちゃにいくので、良い具合に頭を揺さぶられるような感触でございました。

 ある程度は「文章力」や「思考力」が備わっている人に対しても、「こんな視点で考えてみてはいかが?」と提案するような導入として、思いのほか刺激的な内容だと言えるはずです。

 

あの頃の「先生」と、数年ぶりに出会う

 冒頭の話に戻りますが、そもそもどうしてこの本を読もうと考えたのかと言うと――確かに「安かった」のもその一因ではあるのだけれど――加えて、この筆者の書いた本を過去に読んだことがあったという点も大きい。

 『ホンモノの文章力』『ホンモノの思考力』、いずれも高校時代だか大学時代だかに読んで、「なるほどなるほどー!」なんて言いながら、参考にしていたような記憶のある本。どちらも、本書『文章力の鍛え方』の筆者である、樋口裕一さんの著作です。

 

 それに気づいて、ふと思ったんですよね。「当時は何の疑問もなく読み切った本だけど、大人になった今、同じ作者さんの本を読んだらどのように感じるんだろう?」と。

 言うなれば、過去にお世話になった“先生”に、現在の自分の知識と価値観でもって挑むような感じ。すんなりと読み切ることができるのか、はたまた昔は浮かばなかった疑問やツッコミが出てくるのか。本のテーマも、既刊と共通するものであるように見受けられましたし。

 

 結果としては、「既知の内容が占める割合も大きかったけれど、納得・共感できる部分も同じく多かった」といった読後感。そりゃあ当然、過去作を読んで得た知識が身についていれば、新鮮さは薄れるのでしょうが。

 でも、ただただ鵜呑みにして受け入れるだけだった当時と比べれば、「ほんまか?」「せやろか?」とちょいちょい疑問を挟みつつ、意義ある“読書”ができたのではないかと思う。普段とはちょっと違った“読み方”ができて、おもしろかった。

 

 今となって考えてみると、既刊で示されていた「文章力」は、“型”にこだわりすぎていたように感じるのに大して、本作では小論文のみにとらわれない、「ブログ」による文章力の鍛え方も示されており、本自体も当時の発展版のような内容となっていたのではないかと思います。

 自分の考える「文章」の価値観との摺り合わせをしつつ、学びのある部分は学び取る。細かく分けられた見出しの構成を見ても、容易にそういった読み方ができる、読者各々が価値を見出だせる1冊であるように感じました。日頃から「文章」に触れる生活をしている人は、書店などで試しに手に取ってパラパラ捲ってみるのも良いかもです。

 

 

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