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自称する“無職”と、世間から叩きつけられる“無職”

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photo by Jene Kirishima

 

 

 こちらの記事を読みました。アンケート調査の結果、「『無職』であることを自慢気に語っている人を見たことがある」という人が1割いた、と。確かにネット上では「無職」が一種のアイデンティティとして作用しており、バズワードとなっているような印象もありますが。

 ただ、この記事だけを読むと「自称無職」について問題提起しているように見えて、なんだか要領を得ないような読後感。そもそも質問内容がピンポイントかつ印象論であり、しかもその結果がたった1割ぽっちの賛同。なんか、いろいろモヤモヤする。元無職としても。

 

 

自称「無職」は、“おもしろい”?

 冒頭の記事ではアンケート回答者4人の意見が引用されていますが、まず気になったのが、いずれも“自称無職”を「おもしろくない」ものとして批判している点。

 

「無職」という自己紹介がおもしろいと思っているのは本人だけだったと思います

本人は面白いと思っているようですが、呆れ果てましたね

安全な立場から自虐ネタを口にするところにとにかく「小物感」を覚えましたね

何が面白いのかわかりませんが、会社員でないことだけをもって自らを「無職」と語るフリーランスにはよく会います

 

 1人目に関しては「合コン」という文脈あるので、本人も道化を演じる流れでの発言だったのかもしれない。

 ただ、他はどうも「“自慢気”に無職を自称するのは面白いと思ってやっているから」と決めつけて逆に小馬鹿にしているようで、もにょる。もしかすると、調査の際にそういった問いがされていたのかもしれませんが。

 

 3人目の指摘は仰るとおりではあるのだけれど、マジレスというかなんというか……。街を歩いていれば普通に耳にする大学生の「俺、ニート!」を快く思わない人はいるだろうし、ガチのニートは怒ってもいいとは思うけれど、うーん……。

 就活を終えた大学生が「しばらくは無職だー!」なんて叫ぶくらいかわいいもんですし、逆にバイトしていない同期に「おのれクソニート、働け」などと毒づくのもじゃれ合いみたいなもんじゃないかと。

 

 アンケート結果からして一部の意見を参照しているだけなので、どうでもいいっちゃいいんですが、「自称無職」を“自慢”と決めつけてしまう点には、ちょっと違和感を覚えました

 

否が応でも区別されるからこそ、自虐に走るしかない

 と言うのも、つい最近まで無職だった当時の自分を思い出しても、「無職」という肩書きゆえに嫌な思いをしたり、強い不安を覚えておろおろしていたようなことは記憶に新しいので。

 

 無職は全くもって「自由」なんかじゃない。ウェブ上では「無職だけど人生楽しすぎワロタwwww」とおちゃらけることができても、リアルではそんな環境が、文脈が整っていない。

 むしろそこにあるのは、「無職は恥ずべきものである」という一般的な、社会全体に行き渡った「常識」という文脈だ。余程自分に自信のある人、外部環境に左右されない人でない限りその「常識」は重くのしかかってくるものだし、抗いようもなく萎縮してしまうのは当然のことだと思う。無職で申し訳ない。普通じゃなくてすみません。生まれてきてごめんなさい。

「無職」という「肩書き」の話 - ぐるりみち。

 

 いくら気丈に振る舞おうとも、「世間的には『無職』は恥ずべきものである」という通念は、否が応でも意識せざるを得ない。何かの手続きの際に「職業欄」のところで一瞬だけ手が止まるし、学生時代の友人と会えば疎外感を覚える。「無職」という肩書きは、思いのほか、重い。

 

 特に周囲が会社員、あるいは学生ばかりの空間に行けば、周囲からもそれは「異物」として認識され、お互いに気を遣うような場面があってもおかしくはない。

 そこで微妙な雰囲気を作り出さないためには、自分から進んで「無職」の“キャラ付け”をするのが手っ取り早い。「無職で周囲からの視線が痛くて……」とサゲサゲになるよりは、「無職を満喫してるけどお金なーいww」と道化を演じたほうが楽なのです。KYじゃないよ。

 

 なればこそ、冒頭の記事のアンケート回答者が「イラッ☆」とする気持ちはまだそういうものだとわかるのですが、結論として示されている「逆張りセルフブランディング」にこれまたモヤっとした。

 道化を演じる「逆張り」が駄目ならば、無職は無職らしく隅っこで大人しく沈んでいるべし、とでも言うのかしら。そりゃあまあ、学生やフリーランスがやたらと無職無職言うものではないと思うけれど、記事の論調だと、まるで本来の無職ですら「それを自称するべきではない」と主張しているようにも読めたので。

 

 “ほかの人と差別化を図る「逆張りセルフブランディング」”じゃないんです。

 何をせずとも社会から“区別”されているからこそ、自ら先取りしてその枠に収まらざるをえなかったのです。

 

 

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