初恋のラブレターに、感謝を添えて


 小学校に入学した、1年生の4月のこと。
 キミは、ボクの前に、春風とともに現れた。

 

 背中には黒いランドセル。頭には黄色い帽子。

 ピカピカなそれらを身にまとい、学校へ行くのが楽しくて仕方なかったあの頃。友達はたくさんいたけれど、そのなかでもとりわけ仲がよかったのが、キミだった。

 ただでさえ幼いボクらのなかでも、
 際立って幼い顔つきをしていたキミ。

 気がつくと、いつも決まって空を見上げていたキミ。ぽーっとしているその横顔が、今も脳裏に焼き付いている。キミの瞳の奥はいつも穏やかで、無垢で優しげな視線に見つめられると、ボクはいつもドキドキしていたんだ。

 その桃色に染まったキミの頬の色を、よく覚えている。

 白と赤と黒。極彩色のセカイをかき分け走り、巨悪に挑むキミと仲間たちはいつも、ボクらのヒーローだった。何度の転校の際にもキミはボクについてきて、クラスメイトとボクとの間に入って、その手をつないでくれたりもした。

 お絵かきが好きな妹と、マンガが好きなボク。
 兄妹2人の仲をつないでくれたのも、キミだった。

 そう、ボクたち兄妹にとっても、キミはやっぱりヒーローだったんだ。キミが活躍する姿を夢想して、えんぴつを握り、兄妹2人でその様子を描き出していくのは、最高に楽しかった。──あの頃の自由帳は、まだどこかに残っているのかな。

 

 あれから、約20年。

 

 時には剣をその手に掲げ、時には魔法のステッキを振りかざし、さまざまに姿形を変えながらも、キミは何ひとつとして変わらなかった。

 僕らが大人になって、親元を離れて仕事に勤しむようになってからも。疲れ果てて職場から帰宅すれば、あの頃と同じ笑顔で迎えてくれるキミがいた。

 天真爛漫で純粋無垢。のんびり屋さんだけれど芯があり、人並み以上にドジもするけれど、勇気と正義感に満ち満ちている。そんなキミは、今でもボクの憧れだ。そして、キミの生みの親の1人である、あの人も。

 これまでずっと、僕らをいつも支えてくれて、楽しませてくれて、ありがとうございました。貴方たちが育んできた子供のような存在── “ゲーム” に出会えたことで、僕は度重なる転校先でも友達を作ることができましたし、僕ら兄妹は色とりどりの子供時代を過ごすことができました。

 

 そして、お疲れさまでした。
 どうかゆっくりとお休みください。

 

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