ぐるりみち。

日々日々、めぐって、遠まわり。

ねぇ知ってる?人間の頭って、簡単に燃えるんだよ?

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『ホーム・アローン2』より

 

 齢18にして頭がえた。

 

 ――な、何を言っているのかわからねーと思うが、おれも何をされたのかわからなかった……。

 

 

 何も難しいことじゃない。文字どおりの話だ。
 18歳のときに、僕の頭がえた。

 

 萌えてはいない。毛根たくましく黒黒としたマイヘッドは、他の植物の新芽が出るほどに栄養価に余裕はない。我が剛毛たる髪の毛に吸収され、他の追随を許さない。

 そして言わずもがな、「萌え萌え〜☆」な意味でも、このキューティクルはセクシーでもキュートでもない。どっちが好きなの? ボクっ娘が好きです。

 

 うっかりしていた――というか、気が緩んでいたんだ。それまでは緊張感の権化とでも言わんばかりに全身がギンギンに熱り立ち強張っていたのに、自分の役割を果たして気を抜いたせいなんだ。そのせいで、僕の頭は有頂天に怒髪天。FireBomberと化してしまったのだ。

 

 大学に入学して3週目、とあるサークルの、新入生歓迎会に参加していたときの話である。決して「ウェーイwww」な感じの、常にラップで会話をするような意識の高いサークルではなく、文化系の、ほとほと大人しいサークル。その新歓が、とある居酒屋で催されていたのです。

 どのくらい大人しいサークルかと言えば、参加していた10数人の新入生の全員が全員、当然のようにソフトドリンクを頼み、先輩方もまったくアルコールを勧めてこないという超☆健全っぷり。お酒は20歳になってから! もはやアラサーに突入したオッサンとの約束だよ!

 

 一杯目の乾杯をして、店内中央のテーブルに盛られた料理を各々が取りに行き、席についてぼちぼち場が打ち解けてきたかなーといった頃。部長氏の一声で、先輩後輩新入生を含めた全員の自己紹介が順に始まった。およそ30人。さすがに覚えられねっすけど……まあお約束ですしおすし。

 ガッチガチのビンビンになりながらも、確か当たり障りのない形で自分の自己紹介は終わらせた……んだったと思う。いやね、前後の記憶がないんすよ。その後の展開も含めて、あまりにテンパっちゃったので。ただ、早い段階で自分の番が回ってきたことで、割とすんなり紹介したような記憶はある。しゃーっす、けいろーどぅえーっす、あいしゃいしゃーす。

 

 問題となったのは、その数分後。自分の手番が終わったことで気も緩み、周りの話に相槌を打ちつつほーんほーんと聞いていたところ、ふとしたときに――寄っかかったんですよね、後ろに。

 座っていたのは背もたれのない丸椅子だったような気がするので、背後にあった本棚だか何かの家具に、ふわーっ……て感じで、背中の上部分と首をそこに付ける感じで。いや、どちらかと言うと、肩で寄りかかってた感じかもしれない。ともかく、寄りかかったんだ、うん。

 

 で、その本棚っぽい背もたれ、ちょうど自分が座った形で寄りかかると、後頭部がその上面に乗るような高さと位置関係にあったっぽいんですよね。そこで、「おうおう、オレっちの首と後頭部を支えてくれるたぁ、イカした家具っちじゃねぇですかい」と無遠慮に寄りかかったのが悪かった。

 都心のシャレオツに仄暗いその居酒屋の店内の、本棚っぽい家具っちの上には、これまたシャレオッティな光源が乗せられていたんですよ。要するに、アレ。キャンドルライト。オール電化じゃないよ、アナログだよ。。……はっはっは、こいつぁ傑作だ、先の展開が読めるぜ!

 

 畢竟に必然、当然の帰結として、燃えた
 ――なにが? ――髪の毛が。

 

 それも自分ではまったく気づかず、他の人の話で「HAHAHA!」なんてアメリカンにスポーティな笑いをかましていたら、正面に座っていたモジャモジャダンディな先輩氏が一言。

 

 「――おまえ、アタマ、えてんぞ?」

 

 とか仰るから、びっくりくりくりくりっくり! うっそでー☆ なに? ドッキリ? ドッキリなの? と思って頭頂部を撫でり。わぁい! あったかいぞぉ

 ……ん? あったかい? むしろアツくね? ってか焦げ臭くね? なに? 恋なの? どっかの乙女のファンシーハートに火をつけちゃったの?

 

 ……ああ! わかった! えてるのは、アタシのアタマだぁ

 あーっはっはっはっhばばばばばばばばばばb

 

 その後、先輩女子氏からハサミをお借りし、モジャダンディ先輩氏にトイレまで連行され、鏡を前に焼けた頭頂部を切ってもらうという床屋体験。

 ――なるほど、床屋の前の赤青白のぐるぐる看板は、炎と青ざめた白い肌を表していたのですね。奴はとんでもないものを盗んでいきました。私のモジャ毛です。もうこんな恋はしない……。

 

 新歓という晴れの場で、ちょっとした油断とキャンドルが僕に残したのは、チリチリに焦げた頭頂部(ちょうど頭の中央司令部近辺だった)と、先輩氏への借りと、卒業後まで「やーい! お前の頭、火遁の術ー!」といじられ続ける不名誉でした。泣かない。男の子だもん。

 

 ――みなさん、シャレオツな居酒屋では、どうか背後に気をつけられますよう。彼奴らの術中にはまり、うっかり大切なモノを燃やしてしまったら大変ですゆえ。ああ、今日もどこかで、罪なき純情男子の頭が燃えている……。

 

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