地下水が豊富でおいしい水に恵まれ、市内を流れる川も四季折々の姿で楽しませてくれるという、水の都・大垣。
そんな大垣では毎年、4月からゴールデンウィークまでのこの時期にかけて、市内の「水門川」を舟で巡るイベントが開催されているらしい。
水の都おおがき舟下り/たらい舟|大垣・西美濃観光ポータル「水都旅」
桜の時期には、頭上の桜を見上げながら市内を巡る、舟下り。そしてGWの期間には、 ゆらゆらゆったりと川の流れに身を任せる、たらい舟。
春のポカポカ陽気に涼しい風を受けながら、水上でまったりと過ごすことのできる数十分。ううむ、癒やしでござる。
今回はそんな水の都・大垣の催し物として、「たらい舟」の方に乗船してきました。桜は散り、暖かくも涼しげな川のすぐ近くで、新緑に癒やされてきた格好。いやー、春ですねー。
気分は一寸法師!由緒正しき、たらい舟?
乗船場を訪れると、水辺にずらりと並べられた18艘のたらい舟がお出迎え。すげー! 本当に「たらい」だ!
遠目に見ると、持ち手のない柄杓に見えなくもない。舟の脇では、法被姿に傘を被った船頭さんがスタンバっております。
受付をしてテントの下へ入ったら、ライフジャケットを装備して軽く注意事項を聞きます。「下船場まではおよそ30分ほど」「舟には一人ずつ乗る」「たらいの縁にはあまり、よりかかり過ぎないように」といった基本的な内容ですね。
また、岐阜県大垣市を主に流れるこちらの「水門川」は、市内に関しては水深80cmほどしかないため、たとえ転覆したとしても「あっ、立てるじゃん」程度だそうです。前例はないそうですが。慌てず騒がず、プールだと思いましょう。そうしましょう。ドボーン!
テント内には、たらい舟の由来となった『おあむ物語』*1についての解説が。
天下分け目の関ヶ原の戦いの際、石田三成に仕えた山田去歴の娘「おあん」が、たらいに乗って、落城する大垣城から抜け出したという戦国秘話に基づくそうな。一寸法師じゃないのか……。
ゆったりまったり、川の上をどんぶらこ
というわけで時間になり、いざ乗船。
たらい舟1艘に対して1人の船頭さんが同乗して、川の上の道行きをいざなってくれます。よろしくおねがいしまーす。
長い竹? の棒を巧みに操る船頭さん。川の流れは非常にゆっくりで、おそらく漕手がいなければもっと時間がかかることでしょう。舟の右手の川底に棒を刺して漕ぎ、それにつられて舟が緩やかに左回転を始めたところで、次は左手に刺して漕ぐ。
「たらい」は単純な造りであるゆえに、意外と操舵技術が必要とされる舟であるように見えました。昔、漕いだことのあるカヌーよりは難しそう。絶妙な力加減で漕ぎ出さないと、たらいが高速回転を始めるんじゃないかしら。絶叫マシーンか。
上は青空。下は澄んだ水色の川……というほどでもなく、むしろ藻がたくさんの川底は緑に染まっている様子。これはこれで、悪くない。きれいな淡い緑色なので。
ゆらゆらと進んでいく気分はまるで一寸法師……と考えてみたけど、あっちはお椀だった。っていうか今更だけど、お椀の船に乗ってバランスを保ち続けるのってすごくね?食後に皿洗いをしようとすると、だいたいお椀って転覆してるよね?絵本の表紙とか、マジでひっくり返る5秒前じゃね?
道中はたくさんの橋の下を潜ることになり、普段は目にしない橋桁の下部分に新鮮さを感じたり、興奮したり。
……いやね、一緒に乗ってた妹氏が「(妹゚∀゚)うっほおおお!この程よく廃れた感じ、イイヨイイヨー!」なんてiPhone構えてパシャパシャ撮影していたので。わかるけど! わかるんだけど!
橋の下に、カーブミラー。
一見するとシュールだけど、そりゃあ必要ですよね。
担当してくれた船頭さんがまた気さくなおじいちゃんで、要所要所で市内の解説をしつつ、結構話しかけてきてくださいました。話しっぱなしというわけでもなく、ほどほどに気を遣ってくれているような、ちょうどいい距離感。プロだ。
(船 ´ 灬 ` ) いや〜!お兄ちゃんたち、仲いいねぇ!夫婦さんかい?
(僕・ω・) えっ……
(妹゚∀゚) は??
(船 ´ 灬 ` ) あれ?違うん?え?兄妹?HAHAHA!これは失敬!!
「(妹゚∀゚)彼氏?なにそれ?たべれるの? 都市伝説でしょ?」と自嘲的に語る妹と、「(僕・ω・)せ、せやなあ……」と涙を浮かべて青空を仰ぎ見る兄を見て、何かを察した船頭さん。取り留めのない話をしつつ、たらい舟はゆらゆらと川面を流れていきます。
……春ですね(遠い目)
そして、30分ほどの船旅を終えて、下船場に到着。
乗る前は「30分って……長くね?」なんて思っていたけれど、終わってみればあっという間。楽しかったです。のどかなお昼時、水の上ならではの涼し気なやさしい風を感じつつ過ごすのは悪くない。というか、癒やされた。
ちなみに僕は割と船酔いしやすい性質なんですが、穏やかな水面は波もなく、船頭さんが左右に漕ぐ際の揺れにさえ慣れれば、乗り物酔いしやすい人でもまったく問題なく乗れると思います。ただ、写真撮影に夢中になり過ぎないように注意。ファインダーばかり覗いていると、やっぱり酔います。おうふ。
下船場では、希望者向けに写真も販売中。船着場直前で「写真撮りますよ〜!」と上から声をかけられて撮られるので、記念に1枚買っていくのもいいかもですね。
また、すぐ近くには「芭蕉館」*2なる建物もあるので、そちらで小休止するのもおすすめ。
大垣市は松尾芭蕉が『奥の細道』の旅路を終えたむすびの地であることから、関連した展示やおみやげの販売をしているようです。下船場の目と鼻の先なので、立ち寄って休憩するにはベストのポイントかと。
「水の都おおがきたらい舟」は毎年3〜5月にかけて、事前予約制で開催中です。詳細は、以下のホームページからどうぞ。
水の都おおがき舟下り/たらい舟|大垣・西美濃観光ポータル「水都旅」