4コマ解説でピンと来る『フリーランスを代表して 申告と節税について教わってきました。』


 

フリーで仕事をするに当たって、最近は入門書やまとめ記事を読んでいる今日この頃。「フリーランスとして働くなら読んでおきたい本まとめ!」といったウェブページは多く見つかりますが、中でも高確率で紹介されているのが、この黄色い本です。

大抵のブログやウェブサイトで挙げられている、人気の入門書。とにかく「わかりやすい」「形式張った解説でない」という点で評判の様子。実際に読んでみたら……まったくもってそのとおり! フリーとして働くことを決める前、検討する段階から読んでおいても為になる本だと感じました。

 

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「なるほどわからん」から、お金の話を順番に

本書を読み始めて、わずか10分ほど。「ああ、確かにこれはわかりやすい!」とすぐに実感できたのには、その構成にあります。と言うのも本書の筆者は、

 

「青色申告に挑戦してみようと本屋で関連書籍を探してみたけど、『個人事業主』向けの本はあっても、『フリーランス』向けの本がない!よくわからん!」

 

──という経験をした、イラストレーター兼ライター兼マンガ家さん。

「自分のわからないことをまとめて税理士さんに聞く『税金講座』として、その過程を本にしてみたらどうっすか?」と編集さんに提案してみたら通ってしまった! ……というきっかけで、本書の執筆に至ったそうです。

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きたみりゅうじ著『フリーランスを代表して 申告と節税について教わってきました。』P.42より

実際にページを開いて読んでみると、順々に理解していく過程がしっかりとひとつの「流れ」として描かれており、「え? なんちゃら控除? 累進課税? 償却資産? お、おう、知ってるし(震え声)といった自信なさげな人にも、むちゃくちゃわかりやすい内容になっています。

基本は「センセー! これわからん!」という疑問や問題から始まり、それに対して税理士さんとの掛け合いで解説していく形。

地の文もほとんど口語になっており、表やグラフはもちろん著者のイラストによって視覚的に確認しながら知識を吸収することができるので、「最初の入門書」には最適と言えるかもしれません。

 

そもそも「税金」ってなんだっけ?

本書のやさしさは、第1章が「税金ってなんぞや?」と題しているところからも伝わってきます。

ほかの入門書やハウツー記事を読んでいると、たしかに「税金」の説明は序盤でされているのだけれど、どうも形式的な「定義」に留まるような印象が強い。「◯◯税とは」をずらっと箇条書き的に並べて、その節税方法に話を進めていくような──そんなイメージですね。

それが本書の場合は、

  • 「昔は五公五民で大変だったんだべー」
  • 「今は超過累進課税っていう特徴があるんやで」
  • 「『収入』じゃなくて『所得』を元に掛け算と引き算で税率が決まるのよー」

という流れから「所得」の説明に入り、そこから給与所得と事業所得──いわゆる「サラリーマンとの違い」の話に入っていく格好です。

普段からお金の動きや税金の増減を意識しているならともかく。

僕のような「え? 経済とお金の話? HAHAHA! そんなの常識程度かそれ以下のことしかわからんもんね!(ドヤ顔)」という、感覚的にわかっているんだかわかっていないんだか、それすらわからないような人のための復習パートとして、非常に明解な説明がなされている本なのです。

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きたみりゅうじ著『フリーランスを代表して 申告と節税について教わってきました。』P.71より

続く第2章では「社会保険」の話、3章は「記帳」について、そして順々に「青色申告」「消費税」「法人化」「税務調査」──という具合に、フリーとして働く人に必要とされる知識を段階的にまとめていく内容です。

「今年はまだ青色申告にしないから」「消費税は免税されるはずだし」「税務調査が入るほど儲けとらんがな」といった人であれば、必要な部分まで読んで止めることもできるし、先々のための「予習」とすることもできる。読んで終わりではなく、意外と長く役立つ情報が詰まっている本であると感じました。

 

文章でわからなくても、4コマ解説で腑に落ちる

少し前に読んだ『フリーランスの教科書』(星海社新書)では、ひとつの項目に関して説明すると必ず「Point!」として、大文字で細かく要約するような構成になっていました。全部を読み返さずともパラパラと捲っていれば何となく思い出せる、こちらも親切な本です。

一方、本書『フリーランスを代表して 申告と節税について教わってきました。』でも同じように、1セクションごとに「要約」がまとめられています。が、こちらは後で読み返すというよりは、読み進める中で理解の助けとするような構成であるように読めます。

なんてったって、「マンガ」なので。

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きたみりゅうじ著『フリーランスを代表して 申告と節税について教わってきました。』P.104より

この「4コママンガ」が、ひっじょーにありがたい。

文章部分だけでも充分にわかりやすい説明となってはいるのですが、内容によっては「つ、つまりどういうことなんです!?」と頭がこんがらがりそうになることもしばしば。

それでも止まらず読み進めていると、必ずこの「4コマ」が出迎えてくれて、大抵はそこで腑に落ちるんですよね。図示してもらうことによって「あ、そういうことか!」とピンと来る感じ。むやみやたらとイラストを乱用しているわけでもなく、程良いバランスで、情報補完の助けとなっているような印象を受けました。

そして何より、この4コマも含めて、知識のつまみ食いをするというよりは、1冊で一連の流れとしての「申告」と「節税」について理解することができるのがすばらしい。きっとこの先、何度か読み返すことになるものかと思います。お世話になりますぜ!

 

ちなみに初版の発行が2005年ということで、「制度の改正などによって、どれも古い情報になってるんじゃないの?」と思う方もいるかもしれません。中を覗くと、ここ数年の変化に関してはしっかりと注釈が書かれているので、おそらく問題ないかと。

僕が購入したのは2014年12月の発行分ですが、帯にしっかりと「最新」「税率の変更に対応!」の文字がありますし、事実、消費税率は間違いなく8%で話が進められていました。編集さん、お疲れ様です。

新書と比べるとちょいとお値段は張りますが、それでも一般的なビジネス書1冊分。手元に持っておいて損のある本ではないと思うので、フリーランスとして働くことを考えている人はぜひ読んでみてください。もちろん、確定申告・青色申告の参考にも。

 

 

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