ジャンル別「作品連想ゲーム」小説編


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 アインシュタイン先生曰く、 “常識とは、18歳までに身に付けた偏見のコレクションである” とのこと。

 たとえ同じ環境で育とうと、経験によって価値観には大なり小なり差が出てくるもの。海外では自分の「常識」が通用しないこともしばしばあるし、ネットではコンテンツの多様化・細分化によって、「同じモノ」を語っているはずでもちょっとした誤差が発生しがち。

 言葉ひとつ取っても(特にぽっと出の流行語などによく見られる)、人によって考える「定義」がまちまちであるように、個人個人、それぞれが異なる「常識」を持っていても何らおかしくはないものだと思う。

 

 しかし他方では、そもそも自分の持っている「常識」がどのようなものか、ということも、普段の生活の中ではあまり意識しないものなんじゃないだろうか。

 無意識に使っている「社会人」や「頭が良い」という言葉の定義を咄嗟には説明できないことがあるように、自分がある物事や事象、分野に対してどのような「当たり前」のイメージを持っているのかは、意外とわからない。説明する機会がない。

 

 ――ということで、「本」や「音楽」、「映像」などのコンテンツについて、自分が考えている漠然とした「イメージ」をまとめてみようと思いまして。

 単に書き連ねるのもつまらないので、「作品連想ゲーム」と題して、ジャンルごとに真っ先に思い浮かぶ「作品」も一緒にまとめる形で。「ラノベと言えば、これ!」みたいな。

 全部一気にまとめようとしたら、「本」というか「小説」だけで結構な文量になってしまったので、ここではさまざまな「小説」に対して自分の持っているイメージと連想される作品をば。気が向けば、他のコンテンツについてもまとめてみようかな。

 

※ここではあえてジャンルの「定義」は明らかにせず、ほとんど無視して、自分にとっての「イメージ」で書いておりますので、「てめーの考えなんか興味ねーよ!」という方はスルーしてください。

 

小説

 自分にとっての「小説」とは――パッと思いつくものとしては、書店で多く見られるいわゆる「大衆文学」的な「物語」であり、活字による「創作作品」全般のことを指している、と言えそう。よく言われる、“純文学賞としての芥川賞”に対する、“直木賞”のイメージも同様にあります。

 具体的な作家名・作品名を出すと、完全に「自分の好み」の話になっちゃうけれど、まあそういう趣旨で書いている記事なので。――とは言え、単に「小説」だとあまりに対象が広すぎるので、そこはいくつかジャンルを挙げてみましょう。

 

純文学

 「娯楽」というよりは、 「文化」や「芸術」としての要素が強い小説……という、漠然としたイメージしかないので、過去の経験から、「自分にとってよくわからない作品」は純文学だと思ってます(適当)。僕には芸術性なんてなかったんや。

 なので、Wikipediaや書店で見ると「純文学」としてカテゴライズされている作品でも、自分が「おもしろい!」と娯楽的に楽しめた小説に関しては、あまりそういう印象を持っておりません。村上龍『五分後の世界』、村上春樹『ノルウェイの森』、遠藤周作『侍』、武者小路実篤『友情』などなど。ほか、国語の教科書でおなじみの作品群も好き。

 思い浮かんだ2冊は、いずれも芥川賞作品。 前者は受賞当時に母親が買ってくれたのを読んで、「わかるけど、わからん」という感想を持ったまま……内容は忘れてしもた。いま読んだら、また別の感想を持つのかしら。

 後者は、大学時代に文芸サークルで書評を書くべく読んだ作品。「お、おう」的な感想(?)をそのまままとめた記憶があります。こちらに関しては、企業で働いて退職した経験を持つ今なら、感じ入る部分もあるのかもしれない。もう売っちゃったけど。

 

青春小説

 青春、いいよね! 熱血スポ根とか、なんでもない日常モノとか、みずみずしい学生の恋愛モノとか、どろどろぐちゃねちょの恋模様とか……って考えてみて気づいたんだけど、自分にとって「恋愛小説」はこの範疇に入るっぽい。

 いや、もちろん“青春”時代じゃなくても恋愛はできるんだけど、過去に読んできた作品の内容を鑑みると、そのような印象付けがされているみたいです。もっと“オトナ”な恋愛モノを読めということか!

 真っ先に思い浮かぶのは、森絵都*1さんの作品群。どちらかと言えば「児童文学」に分類される作品が多いものの、「THE 青春」といった趣きの作品をたくさん書いている印象ですね。

 重松清*2さんなんかも割と、思春期の青少年を題材とした作品が多い気はする。けれど同様に「家族」に対しても焦点が当てられており、その関係性や距離感をテーマにしているイメージも強いので、ジャンル付けとしては微妙なところかしら。

 

SF小説

 「青春」や「恋愛」に関しては人によって線引きが異なるのか、微妙にジャンル区分に差異が出たりもしますが、他ジャンルは結構安定しているイメージ。「SF」にせよ「ミステリー」にせよ、“◯◯SF文庫”“△△推理文庫”といったレーベルがありますしね。

 『夏への扉』を初めて読んだのは、中学生の頃だっただろうか。「SFと言えば! これ!」と勧められるままに読んで大好きになったこともあり、いまだに自分にとっての「SF」の代名詞です。ピートかわいい。合法ロr……ゲフンゲフン。

 直近で読んだSF小説(ラノベレーベル除く)は、東浩紀*3さんのこちらの作品。ある種、情報社会の行き着く先というか、ディストピア感に震えた。「仮想世界の侵食」を“ネット”に当てはめると……。あと、鍵っ子として序盤は読みづらいというか、集中できなかったorz

 

推理小説

 推理小説も、読むのはときどき。中学時代には図書室でホームズをつまみ食いしてたけれど、あまり記憶には残っていない模様。直近で読んだ作品だと、『珈琲店タレーランの事件簿』ですね。やたらと酷評されてますが、個人的には嫌いじゃないです。2巻までしか読んでないけど。

 我ながら、なんちゅー2冊を並べたんだ……。

 前者は、これまた児童文学。講談社の青い鳥文庫から出ている、いわゆる『パスワードシリーズ』*4。小学校中学年から中学の途中、確か14巻までは集めていたはず。そのくらい大好きなシリーズであり、謎々、暗号、回文など、ちょっとおもしろい「謎解き」の類の知識は、だいたいこの作品で身につけました。

 後者は、叙述トリックを使った有名な作品としてしばしば話題に挙がる印象。ミステリー好きの友人から、「とりあえず読んどけ」と半ば押し付けられるように渡され、まんまとハマった思い出。本作を他人に勧めるときには、無言で押し付けるのがベストなのだろうか。

 

ファンタジー小説

 「ファンタジー」というジャンルも、やたらと広範なイメージ。スーファミ世代の自分にとってのファンタジーと言えば、どうしても勇者と魔王がどうの、クリスタルがどうのといった方向に思考が流れてしまうのだけれど。本として最初に読んだのは、やっぱり『不思議の国のアリス』になるのかな。

 不思議なことに「ファンタジー小説」 と聞くと、海外作品ばかりが思い浮かぶ。それもやっぱり、小さな頃に夢中になった作品なんですよね……。

 前者は、「お辞儀をするのだ」*5でおなじみ、“例のあの本”。中学時代になぜか、「『ハリポタ』を読みながらおやつを食べる」という毎日の習慣ができており、そのせいで10回以上は読み返したんじゃないかと。シリーズを通しても、最も多く繰り返し読んだ作品かもしれない。

 後者は、冒険モノの色合いが強い児童文学。当時、「むちゃくちゃ気の弱い主人公が、故郷を守るために屈強な大人たちと共に旅に出る」という展開の作品を読んだのは初めてだったので、ものすごく新鮮かつ心惹かれた。“勇気”とはなんぞや。

 

ライトノベル

 高校に入学してラノベ好きの友人ができるまでは、「ゲーム・コミックのノベライズ」のことだと思ってました。テイルズとか、ハガレンとか、スパイラルとか。とは言っても、いろいろと手を付けて読んでみた今となっては、そのイメージも刷新されました。でも、たびたび耳にする「質の悪いハーレム」的な作品は、逆に知らないっす。

 最初に読んだ電撃文庫作品が『キノ』 だったこともあり、「ラノベ作家と言えば時雨沢*6さん!」のイメージはそこそこ強め。あとがき作家。なんやかんやでいまだにしっかり集め続けている、大好きな作品です。寓話っぽさが、ビリビリ来るのよね。

 もいっこは、(悪い意味で)アニメが話題になった『ココロコ』*7。ラノベに限らず、複数人によるどろどろぐちゃねちょの人間関係や、特定の人格を掘り下げていくような作品はヨダレが出るほどに好み。未完作品だと、今は『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』かしら。

 

「第一印象」と、その後の自分の趣味嗜好

 「自分にとってのジャンルのイメージ」と「真っ先に思い浮かぶ作品」をずらっと挙げてみましたが、やっぱり、きっかけとなった作品っていつまでも印象に残ってるんだなー、ということを再確認できただけでした。

 「子供の頃に夢中になったあの作品」や、「それまでは感じたことのなかった刺激や衝撃をもたらした作品」は、どうしても印象に残るもの。

 さらに、場合によっては、あるジャンルの「第一印象」となった作品と類似の物語をずっと消費し続けるようなケースもあるのかな、と思った。特に話題になったライトノベルなんて、ぶっちゃけ物語ジャンルとしては「なんでもあり」じゃないですか。SFもミステリーもファンタジーもラブコメも。

 

 だからこそ、そのジャンル・界隈自体の多様性が高ければ高いほど、消費者ごとに「私にとっての◯◯とは」といった主張が出てくるのも自然なことなのかもしれない。

 特定の作者や一部類似作品を自由に話すのでなく、多種多彩なコンテンツを含んだジャンル全体を語ろうとするのであれば、それこそ「研究」的な視点がないと難しいのかも。

 でもそれゆえに、一分野に特化した「専門家」や「オタク」の話はおもしろいんですよね。自分のような雑食の人間は、それぞれのジャンルに関して抱いている漠然とした印象を整理するくらいしかできないので、いくらでも語れる人はすごいと思うし、尊敬します。

 何はともあれ、自分にとってのジャンルのイメージや印象的な作品を整理することで、自らの趣味嗜好を再確認する作業は割と楽しいものでした。

 

 あなたにとっての「◯◯小説」と言えば、どんなものでしょう?

 

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