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『死ぬってどういうことですか?』意外と馬が合う?ホリエモンと寂聴さんの対談本

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特設ページ「瀬戸内寂聴×堀江貴文『死ぬってどういうことですか?』」より。

 

 読みました。堀江貴文さんと、瀬戸内寂聴さんの対談集『死ぬってどういうことですか? 今を生きるための9の対論』

 

 

年齢差50歳、異色の2人の対談本

 最後に会ってほどなく、私は背骨の圧迫骨折になり、倒れてしまった。もし、これで死んでも、ホリエモンとあれだけ喋ったのだから悔いはないなと病床で私は朗らかであった。
 若い人たちがこの本を読んでくれると嬉しい。そして、私のいう原発と戦争について、自分の意見を見つけてくれることを切に願っている。

 

 本書は、瀬戸内寂聴さんの「はじめに」から始まり、堀江貴文さんの「あとがき」で終わる構成。本編として、9つの対談が収録されています。

 ちょうど50歳差というお二方。細部の意見の違い、経験や思想による方向性の違いはあれど、全体としては、意見の一致を得ているような印象でした。文字で見る限りでは、非常に和やかな対談に見えます。

 

 堀江さんが「僕はこう思う」と話すのに対して、瀬戸内さんが「その点は納得できるけれど、こちらは違うと思う」と賛否を示した上で、「私はこういう経験をしたから……」と繋げていくような流れが何度か見られました。逆のパターンも同様に。

 大雑把に言えば、「人生論」に関しては瀬戸内さんが持論を展開し、堀江さんがそれに賛同・反論を示す形。その中でも「経済」的、「社会」的な話題が挙げられると、堀江さんが実例を示し、言及していく形。

 それぞれの得意分野を抑えつつ対談が進行し、しかも事細かに注釈がまとめられているので、とてもスムーズに読むことができ、内容もおもしろかったです。というか、地味に勉強になる。20代そこらの若造にゃ、知らないことだらけですわい。

 

目次と各章をざっくり3行で

 最初の対談は、書名にもある『死ぬってどういうことですか?』という、死生観がテーマ。年長者であり、職業柄、多くの人の死を見てきた瀬戸内さんの「どうしようもないもの」という考えに対して、「忙しくして考えないようにしよう」という堀江さんの対比がおもしろい。

 続いて、『こだわるな、手ばなせ!』と題したパートでは、精神的なこだわりや周囲に合わせた生き方から脱して、「変化を受け入れる」ための考え方。自らに“ありのままを見ない”フィルターをかけながら、“ありのままを受け入れる”こと。

 

 “死”の次は“”、『子育てってエンタテインメント』の対談では、結婚制度自体を少子化の原因と語る堀江さんに対して、“楽しいから子どもを作る、ってなったらいいわよね”と話す瀬戸内さんが印象的。この話題に関しては、堀江さんが意外と饒舌に話しています。

 お次は、『特別編1』ということで、堀江さんの「」の話。一部、知らないこともあって危機感を覚えたので、歯医者さんにはちゃんと行こうと思いました、はい。

 『生きてるだけでなんとかなるよ』は、自殺人生才能の話がメイン。自殺は「プライド」の問題だけと話す堀江さんと、「ノイローゼ」など複数の要因を説明する瀬戸内さん。そこで、「人と話せること」の重要性を語る堀江さんに強く共感した。

 

 続いて、『今って不景気?好景気?』という、経済社会の話。“想像力がない人間とは仲良くなれない”と言う瀬戸内さんに対し、“ビジネスに人情とかを持ち込むべきではない”と堀江さんが反論。「ブラック企業」も話題に挙がり、「えり好み」の指摘は少し耳が痛い。

 『特別編2』は、原発の話。現状の停止状態では経済が衰退していくのみ、結果、死亡率も増えるだけでは、と考える堀江さんと、生活水準を下げてでも「なくしたほうがいい」と主張する瀬戸内さん。堀江さんは、「みんな物欲がすごいから無理」と言うけれど……。

 

 そして、話題は戦争へ。『戦争、するの?しないの?』と題し、「現在は戦前の流れを辿っている、戦争は起こる」と話す瀬戸内さんとは対照的に、「コストに見合わないからそれはない」と断言する堀江さん。「愛国心」などにも触れられ、ページ数も多く割かれています。

 最後は、『国家権力に気をつけよう』という、検察に焦点を当てた内容。マスコミはあてにならず、“雰囲気”で動いている日本社会に警鐘を鳴らす。特に冤罪事件に関して詳細に話されており、全く知識のない自分からすれば、「検察やべえ」としか言えない密度。

 

瀬戸内さん、ガチギレ?

 本筋とは無関係なのですが、本書を買うきっかけのひとつとして、以下の記事の存在がありました。

 



 元記事の見出しだと、「ホリエモン「戦争になれば逃げる。他人は知らない」発言に瀬戸内寂聴が激怒!」となっております。

 

“寂聴は、ホリエモンの姿勢に苛立ち、最後はキレ気味になって、こう叫んでいた”

 

 こうも書いてあり、「瀬戸内さんがガチギレしたのかー、すごいなー」などと、これで少し興味を持った、というのもあったのですが。――読み終えてみたら、「あれ?これ、別にキレてなくね?」という読後感。あれれ?

 

「もう私は本当に死にたいの、つまらないから。つまらない。くだらない。ひどい。私は堀江さんと違って、戦争が起こると思ってるからね。もう見たくないと思う。あれを二度と見たくないの。でもいいわ。『戦争しない』っていう、こういうふうに堀江さんのように言い切れたらね、言い切る人が出てきたら、それは英雄ね。それはみんな喜ぶんじゃないかしら、枕を高くして寝られるんじゃないかしら。そして、そのときに、ばーっとやられるんですよ」

 

 記事で引用されていたのは、この部分。確かに、これだけ読むと、語調を荒らげているようにも読み取れなくもありません。しかし、本文の文脈だと、どうもそうは読めない。上記引用部分の前を見ると、次のようなやり取りがされていました。

 

瀬戸内 じゃあ今なにに興味ある? 何が生き甲斐なの? 何をしたいの?

堀江 今ですか? いろいろ仕事したいですね。

瀬戸内 仕事っていうのは、儲かる仕事?

堀江 いや別に儲からなくてもいいんですけど、世の中を変えるような仕事です。

瀬戸内 国のためでもなんでもない?

堀江 いや、世の中が面白くなればいいなと思ってるんで。面白くしたい、です。

瀬戸内 面白くなるかしら、この世の中?

堀江 はい。

瀬戸内 何年くらい経ったら面白くなる?

堀江 いや、僕、今面白いです。

瀬戸内 あ、ほんと? 面白いって私が感じられる世の中だったら、もうちょっと長生きしてみようかな(笑)。

堀江 ぜひ。

瀬戸内 もう私は〜〜【上記引用部分】

 

 質問攻めですが、決して怒っているような流れには見えないんですよね……。この前には、お互いの発言に(笑)の表記がちらほらありますし。

 

 本を読み終えて、先ほどの“激怒”の紹介記事を読んでみると、他の部分もなんだか意図的に編集されているようにしか見えない。明らかに文脈を無視して、発言の順番を入れ替えています。

 さらに、堀江さんの「真っ先に逃げる」発言をやたらと批判していますが、その引用部分で“(中略)”とされている部分や、前後の発言を見ても、そもそも繰り返し「日本は戦争をしない」と断言しています。これって……どうなんです?

 

 もちろん、もしこの記事を書いたライターさんが実際に対談の場にいて、話を聞いていたのなら、その通りなのでしょうが。でもこれ、おそらくは単なる書評記事ですよね……。

 自分は別に、瀬戸内さんや堀江さんのファンというわけではありませんが、本を読んでみると、どうもこの記事には違和感を覚えてしまったので。この記事が本書を知るきっかけとなったこともあり、複雑ではあるのですが。

 

 なにはともあれ、本に関しては、世代も性別も生まれも思想も違うお二方の対談本ということで、多彩な示唆に富んだ内容で良かったです。おすすめ!

 

 

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