ぐるりみち。

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古参ボカロファンが「マジカルミライ2014」で衝撃を受けた話

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マジカルミライ 2014 公式サイト

 「え?ボカロのライブ?いやー、バンドの生演奏は聴いてみたいけど、バーチャルアイドルなミクさんも、所詮は映像。ネットで動画を見るのと変わらないんじゃね?」

 

 ――などと宣っていた自分をぶちのめしたい。
 あれはやべえ。ってか日本やべえ。いい意味で。

 

 学生時代に、初めてライブ(コンサート)に行って文字通りの「音楽」を聴いたときの感動もひとしおだったけれど、それに匹敵する衝撃を受けた。

 

 ミクさんが、そこにいた。

 

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僕と、ボーカロイドと、ライブ体験

 イベントの感想をまとめる前に、僕とボーカロイドの関係について。記事タイトルに「古参ボカロファン」なんて書いちゃってますが、これはだいたい合ってるはずです。

 

 初めて存在を知ったのは、『VOCALOID2 初音ミク』の製品が発売されて間もない、2007年9月上旬のこと。

 当時は毎日欠かさずニコニコ動画のランキングをチェックしていたので、謎の緑髪ツインテール娘の存在は嫌でも目に入る。最初に聴いたのは、何かのカバー曲。その時点で、自ら動画を探しに行くくらいにはハマってた。

 

 なので、おそらく2012年くらいまでのボーカロイド文化や人気曲に関しては、なんとなーく肌で感じ取りながら接してきた人間だと思う。カバーからキャラソン風、オリジナル、そして、メルトショック*1

 もともとコミックマーケットで同人音楽をあさっていたこともあり、同人版のボカロCDもぼちぼち持ってます。supercell以前、ryoさんの「メルト」のシングルや、livetuneの『Re:package』*2の初版同人板など。懐かしい。

 

 2012年くらいから後は、特に人気な曲と、好きなクリエイターさんの曲しか聴かなくなったけれど。就職し、生活が変わったので。それでもCDは増え続けているし、相変わらずボーカロイド曲と、そのカルチャーが好きな「ファン」の一人ではあると思う。たぶん。

 そんな僕が、どうしてこれまでライブには手を出していなかったかと言えば、ある程度、過去に体験して、それで満足してしまっていたからかと。「ボーカロイド」がメインのライブには行ったことがないけれど、ミクさんの歌声は2回、ライブ会場で耳にしたことがありました。

 

 1回目は、「初音ミク」の初ライブ*3だった、Animelo Summer Live 2009*42回目も同じく、Animelo Summer Live 2012の会場で。

 最初は、「ミクさんが!リアルのライブで!歌う!」というだけで、そりゃあもう興奮モノだったけど、蓋を開けてみれば、映像の中で歌って踊る、いつも通りのミクさん。うーん、大画面&大音量の迫力はあれど、思ったほどは……。

 

 当時の自分の感想が残ってた。

みくみくにしてあげる♪【してやんよ】 / 初音ミク

 PSPのDIVAのモーションそのままでした。
 走ってくる演出はかわいかったけど。

 

ブラック★ロックシューター / 初音ミク

 驚きのショート版。場内が一瞬戸惑ったように見えたw
 で、この後のアニメプロジェクト発表のムービーで大歓声。
 めがっさ動くなーと思ったら、そうか、ヤマカンか。

 OVA版*5なんてものもありましたね……。

 でも、その3年後、2012年の会場では、それなりに感動したような記憶がある。2009年の「ザ・映像!」って感じを見ていたせいもあったのかもしれないけれど、透明のスクリーンに投影され、歌い、表情を変化させるミクさんとその技術に驚いた。

 ただ、2012年の動画を見直すと、やっぱりどこか、ぎこちなさは否めない。衣装変化前の“謎の風”とか、全体的なカクカク具合とか。

 でも考えてみたら、フリーソフトのMMD*6であれだけのことをやってのけてる状況が既にすごいんですよね。一般クリエイターの連鎖によってボーカロイドがあの場に立ったと見れば、まさしく「集大成」的なパフォーマンスだったようにも思います。

 

そうだ、コンサート行こう。

 それから2年。ボカロと言えば、自分の好きなボカロPの新曲をチェックしたり、即売会でCDを買ったり、たまにランキングに上がっている動画を見たりと、程々につまみ食い程度に楽しんでいた僕。

 それが、どうして急に「コンサートに行こう!」となったのかと言うと、『初音ミクはなぜ世界を変えたのか?』という本を読んだからです。

 

 

 この本を読んで、最初期から現在に至るまでのボカロカルチャーを見直して、さらにその過程にあった「リアルイベントのすさまじさ」を知りたくなり、思わず、チケットをポチっと。

 しかも、運良くチケットが手に入ってしまったので、「ミクさんが僕を呼んでる!」と勇んで参戦してきました。ただし、現在の自分がどの程度、ボカロのメインカルチャーから離れているのを実感するため、あえて予習も何もせずに会場へ。はてさて。

 

「マジカルミライ2014」に行ってきました!

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東京公演の会場、東京体育館。開演直前のため、人はまばら。

 というわけで、前置きが長くなりましたが、当日!

 直前に用事があったため、猛ダッシュで会場へ乗り込んだところ、コンサート開始15分前。とりあえず、急いで写真を撮り、パンフレットを買い、ミクさんのコスプレをしたおねーさんを何人か追い越して、場内へ。

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東京体育館入り口。MONQ*7さんの描くミクさん、イケメン。

 座席は、「一番安いのでいいや!」 とA席を選択していたため、3階スタンド席。東京体育館には、スポーツイベントやら合同説明会やらで来たことがあったけど、あんな高いところまで上がったのは初めて。こうして見ると、意外と広い……?

 ステージに目を向ければ、おなじみの透明スクリーン……と思ったら、なんか長いぞあれ! ステージの両端にバンドセットが鎮座し、それ以外はほぼ透明のスクリーン。ステージ全体の7、8割を占めるという巨大さ。

 ステージ背後にはメインスクリーンがあり、両脇にも1つずつサイドスクリーンと、計3つ。これらは、ライブで割とよく見る構成。だけどステージ上のあの細長い透明スクリーンの存在感は異常……というか異様ですよこれ!初めて見たよあんなの!上から見ると、巨大な水槽みたい。

 ――などとステージ周辺を凝視していたら、場内が暗くなり、コンサート開演。さあ、どんなミクさんを見ることができるのかな?

 

響き渡る歌声、飛び交う歓声、光るネギ畑

 会場が暗くなると、場内は緑色の光、ほぼ一色に。もちろん、ミクさんカラーのサイリウム。ネギ畑。

 ライブ慣れしてなさそうな学生っぽい女の子から、うちの親父よりも年上なんじゃないかというレベルのおっさんまで、みんな緑色のサイリウムを握りしめて、主役の登場を待つ。自然と広まるミクさんコール。やだー!テンション上がってきたー!サイリウムないけど!!

 

 オープニングは、ELEVENPLAY*8による光と影のダンス。女性2人による手の動きに合わせて、背後の透明スクリーンに照射される光が動く動く。

 それはいいんだけど、上から見ると、スクリーンにアリーナ席の観客のサイリウムがみんな映っちゃって、なんとも微妙な感じに。嫌でもスクリーンの存在を意識せざるを得ないけれど、しょうがないよね……。

 

 で、ミクさん登場。

 

 うわー!ミクさんだー!かわいい!ツヤツヤしてるー!キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!……なんて僕が興奮している周りでも、「ミクさーん!」「ミクさんかわいい!」「ミクさん天使ー!」「キャアアアアアアアアアア!!!!」なんてすごい歓声が。

 で、1曲目はおなじみのアレ。

 イントロのギターですぐにわかるからいいね! アップテンポのみんな知ってる人気曲ということで、速攻でノリノリでござる。楽しい。

 ミクさんの、思ったよりも感情のこもってるように聞こえる「ありがとー!(棒)」という機械音声を挟みつつ、「二次元ドリームフィーバー」「心臓デモグラシー」と続いて、4曲目で僕のテンションは有頂天。

 大好きな曲を、大迫力のバンドサウンドで聴けて大満足。アレンジ、超かっけえ。周囲がちょっと大人しめに見えたけど、一人で飛び跳ねてた。はっはっは。

 

「サイリウムおじさん」にお世話になりました

 そんな感じで、サイリウムもなしに腕を振り上げて縦に横に動き回っている僕を見て、思うことがあったのか。

 ミクさんが退場し、次の曲でリンレンが登場して会場が黄色一色になったところで、ふと肩を叩かれた。

 振り向くと、ビジネスカジュアルな出で立ちで、小中学生くらいの子供がいてもおかしくない、優しそうなおじさんが、黄色に輝くサイリウムを差し出してくるじゃないですか!

 「よかったら、どうぞ」と示され、えっ! い、い、いいんですか……と戸惑いつつ、人の厚意は素直に受け取るべき、とも思い、ありがたく頂戴することに。

 

 その後、曲の合間に平身低頭でお礼を言うと、「いえいえ、多めに持ってきたので、ぜんぜん気にせず使って下さい」と。緑色は既に他の人に譲ったらしく、ライブが終わるまで、曲に合わせた色のサイリウムを毎回、お借りしました。

 いちいち受け取って中断させるのも申し訳ないので、面倒でしたら……とお尋ねしたところ、「お気になさらず!せっかくのイベントですから!」と笑顔で返されて、これは素直に甘えよう!と。めちゃくちゃ良い人じゃないですかー!

 終演後、そのコンサート後の空気でお金の話をするのもどうかと思いつつも、さすがに使い捨てのサイリウムを何本も開けてもらったのが申し訳なく、いくらか支払うことを申し出たのだけれど、それも断られました。

 

 重ね重ねお礼を言いつつ、「またどこかで会いましたら!」と別れたのですが、本当にお世話になってしまいました。ありがとうございました。

 おじさんに会うことはなくても、何かの形でお返ししたいところ。どこかのライブやコンサートで、同じように誰かにサイリウムを提供できれば。僕も「サイリウムおじさん」になろう。イベントって、やっぱりいいね。

 

二次元とか、機械音声って、なんだっけ……

 そんな人の親切にも触れつつ、コンサート開始から30分くらいで、違和感に気づいた。というか、 “違和感がない” という違和感

 ミクさんはいろいろな意味で「偶像」であり、そこにあるのは、スクリーンに投影されたただの映像。……のはずなんだけど、まるで本当にそこに “いる” かのような存在感が、とにかく尋常じゃない。実体があるかのような、質量を感じる。

 

 って部分だけ読むと、「やべえこいつクスリでもやってんのか」となりかねないのだけれど。

 そのくらい、動きも声も演奏も自然に合わさって、普通のライブ・コンサートと全く何の違いもないんですよ。ステージ上のアーティストの動き、演奏に合わせて、観客がサイリウムを振り、飛び跳ね、叫ぶことも含めて、会場全体が「当たり前」の音楽イベントでした。

 

 

 「とは言っても、機械音声であることは丸分かりだし、そこにいるのが明らかに人間じゃないのは明白だよね?」と突っ込まれるかもしれない。確かに、それは明らかだし、その認識までは揺らがなかったと思う。けれど、それも考えてみれば、大きな問題じゃないのよね。

 だって、「編集された音声」に合わせて踊ると言えば、クラブミュージックがそうだし、僕は行ったことないけれど、Perfumeのライブもそんな感じらしい。

 さらに、「人間じゃない作り物」の存在がステージに立っている点も、生身の人間ではないという点で、きぐるみショーに近いものがあるんじゃないかしら。きぐるみに「中の人」がいるように、映像でも、プログラミングや振付を担当する「中の人」がいるわけだし。

 

 そこにいない、架空の存在が “いる” ように見えて、しかも、その架空のパフォーマンスに合わせて観客が身体を動かし、楽しむという点では、これまでとはちょっと違った、新しいエンターテイメントであるようにも見える。

 でもその実は、人の手が隅々まで入っており、人の考えた演出によって作られたパフォーマンスという点で、それまでのライブやコンサート、演劇に舞台など、広い意味での「演技」であることには変わりがないようにも感じる。

 とは言え、「電子の歌姫」として親しまれてきたミクさんが、本当に存在するかのように現実に飛び出し、ステージの上で歌って踊って走り回る姿を目にするという体験には、なかなか感慨深いものがありました。ミクさん、マジ天使。

 

公式ソングの披露されない“コンサート”……?

 でも一方では、ツッコミどころも結構あるみたい。

 僕は初参加だったので、その辺りは特に気にならない、というか気付きようもなかったのですが。知らない曲が大半でも、複数アーティストの参加するライブ・コンサートではよくあること。前知識がなくても楽しめるから、音楽はいいのです。

 でも、そんな僕でもイベント終了後、帰りの電車の中で、あれ?と思わずにはいられなかった。「そういえば、テーマソングって歌われたっけ……?」

 気づいてみれば、なんでやねんと突っ込みたくなる事実。1曲目とか、アンコール前のラストとか、ここぞという盛り上がるところでテーマソングを披露して、会場全体でひゃっはーするのが基本だと思ってたんだけど、そんなこともないのかな?

 また、全公演日程でセットリストが全く同じという点も。ただ、これは仕方がないようにも思う。全ての曲の演奏用のアレンジを考えて、振付を考えて、それをプログラミングして……なんてやってたら、作業量がとんでもないことになりそう。

 でも、新規の披露曲が少なく、例年、同じ曲ばかり流れているらしい、というのは……うーん。レーベルの縛りとか、クリエイター側からの許可とか、大人の事情とかがあるんでしょうが、それがずっと続くと先細りになってしまうのでは。僕は初めてだったから楽しめたけど。

 これもちょっと気になったけど、まあそういうもんですよね……。

 

それでもやっぱり、来年も行きたい!

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終演後、ほとんど売り切れているのに、物販に集まる参加者さんたち。

 とはいえ、なんだかんだでかなーり楽しかったので、来年もご縁があれば、参加したいなーと思います。

 「深海少女」*9では水の表現とミクさんの髪が波打つ動きに感動したし、生の「Tell your world」*10は反則級だし、ドラム&ギターが荒ぶる「東京テディベア」*11ではむっちゃノレたし、「ODDS&ENDS」*12では涙ぐまざるを得ない。

 で、アンコール最後の「39*13ね! アレはね! もうね! ずるいよね!メインスクリーンのMVが、すっごい良い仕事してた。あの動画を作ったのは誰だ! マジさんきゅー! あとでパンフレットで確認しよう。

 こうして映像で見ると、やはり会場で生で見て聴くのと、画面を通して見るのでは、全然違うことが実感できる。ボカロカルチャーが好きな方は、ぜひ一度、体感していただきたいです。

 だって――ミクさんは、そこに “いる” のだから。うふふふふ。

 

 

 

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