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ぐるりみち。

日々日々、めぐって、遠まわり。

「同人誌の電子書籍化」について思うこと

http://www.flickr.com/photos/36993742@N00/5145996668
photo by kodomut

 

 

 赤松健さんが立ち上げた、Jコミ改め「絶版マンガ図書館」

 そういえばチェックするのを忘れていたのですが、こうして、入手困難な作品が読めるようになるのは、読者としてはありがたい限り。しっかり作者さんに還元される仕組みもあるということで、良いことだらけじゃないですかー!やったー!

 

 その一方でちょっと気になっているのが、「同人誌の電子書籍化」について。

 二次創作の作品に関しては、権利的に問題視されることもあるでしょう。基本は利益度外視の“趣味”でしょうし。ただ、オリジナル・創作系同人誌に関しても、電子書籍版を発表しているという話はあまり聞きません。たまにネットニュースで目に入るくらい。

 

 その辺の話題について、軽くまとめてみました。

 

 

同人誌のダウンロード販売

 「電子書籍」という言葉が話題に挙がり始めたのは、まだこの数年のことですが、PDFファイルを使った同人誌のダウンロード販売は、00年代前半頃から行われていた模様。

 DLsite.comや、実店舗を持つとらのあな、メロンブックスなどにも、ダウンロード販売の専用ページがあります。

 ただ、サイトを開いてもひと目で分かるように、年齢指定のあるソフトや冊子が多く、あまり創作系同人誌を販売する土壌とはなっていないように見えます。実際のところ、どのくらいのユーザーさんがいるんだろう?

 

同人誌の電子書籍化・販売サービス

 一方、いわゆる「自炊代行」ではなく、自分の作った作品を電子化して、販売するサービスについて。

 “同人誌 電子書籍”といった単語でちょろっと検索してみると、そこそこの数のサービスは出てくるものの、アクセスしてみると、あまり盛況ではないようです。

 中には、翻訳の上で海外への発信も可能?なサービス(JapanManga)もありましたが……更新、止まってますね。何か権利面で問題があったのか、集客できなかったのかは分かりませんが。

 

KDPも「同人誌」……だよね?

 商業誌を取り扱う電子書籍ストアは数多くありますが、有名なのはやはり、AmazonのKindleストアでしょうか。僕自身、よく利用しているつもりですが、ヘビーユーザーさんには敵わないでござる。

 Kindleと言えば、サービスのひとつにKindleダイレクト・パブリッシングがあります。略した形で、よく“KDP”って呼ばれていますね。

 一口に言えば、電子書籍の自費出版。自身の作品をKindleストアで販売することのできるサービスです。商業誌と同様に並べられるので、ストア内のランキングに上がれば、夏目漱石先生と並ぶ……なんてことも。なにそれこわい。

 

 そんなKDP。自分が好きに書いた作品を公開できるという意味では、ある種の「同人誌」と呼んでも差支えのないものだと思います。実際、かなりニッチな解説本のようなものもありますし、利用している同人作家さんもちらほらといらっしゃるみたい。

 実際のところはどうなのか分かりませんが、印象としては、文学フリマなどで創作小説を出している方、投稿サイトで活動されている方、アマチュアの作家さん、辺りの層が多くKDPを利用しているような。kdp名鑑などでもチェックできるので、興味のある方はぜひぜひ。

 

即売会で電子書籍を対面販売する

 「文学フリマ」と言えば、数年前から、即売会の会場で電子書籍を販売するサークルさんも散見されるようになりました。

 



 こちらが有名ですね。各ニュースサイトで取り上げられ、話題となっておりました。僕自身、当時は大学のサークルで参加者側としてうろうろしてましたが、「なんかおもろそうなことやってるー!」とガン見してた記憶が。

 

米光氏 2つの方向ですごいと思ったんです。1つは、ぱっと渡せる、すぐ手渡せるすごさ。印刷所も何も通さずに自分から相手に手渡せる。もう1つは、渡したい人に向けて渡すことも可能だと。ぱっと発表できるという意味では、ブログやWebでもいいわけですよね。アップすればすぐに読んでもらえる。でもブログを書くときって、雑誌に原稿を書くときよりもなんだかぼんやりとするところがあるんですよ。ぼんやりというか、ちょっと息を詰めて書いている感じ。それは読む人のトーンが分かりにくいから。雑誌ならその雑誌のトーンがあって、そのトーンの人が読者層であると。

 

 この辺りが非常に示唆的。「同人誌」として印刷するのは面倒。ブログだと特定の読者層に届きづらい。ならば、電子書籍を雑誌的なコンテンツとして、対面で売ろう!と。

 



 もうひとつ、サークル「自転車操業」さんによる取り組みも。こちらは、シリアルを発行して販売する形。コミケ会場で試験的に頒布した後、「対面電書」のサービスを開始、現在も継続して展開中のようです。

 

即売会で買う同人誌の“限定感”と“体験”

 印刷・移動・時間といった諸々のコストも抑えられ、在庫を抱えるリスクもなく、より多くの人に読んでもらえる可能性もある、電子書籍。

 周りから見れば、良いことづくめにしか見えないものではありますが、それでもなぜ、同人誌の電子書籍化が広がらないのか、と言えば……。やっぱり、「即売会」というお祭りの場が楽しいからなのかなー、と思った次第であります。

 

 この点は、リアル書店と繋がるものがあるかも。今のネットでは、まだ“立ち読み”がしづらいし、ふと目に留まった本を買うという“出会い”も少ない。

 「目的」を持って購入する場合が大半で、心躍る予想外の“体験”が不足している、という見方もあります。僕もKindleを使う機会は増えましたが、それ以上に、書店に足を運んで本棚を見て回る習慣もできましたし。お宝探しは楽しいのです(今日も本屋でお宝探してぶーらぶら)。

 

 「同人」の楽しさを伝える同人情報誌サークル、Circles' Squareさんの作品『CIRCLES' vol.0&1』収録のインタビューでも、次のような話がありました。

 

同人というのは「本をつくる」ことそのものを含んだホビーで、また発表の場としての同人誌即売会のようなリアルイベントがある以上、基本的には、紙の本を作ることは続くと思います。

(COMIC ZIN新宿店 金田さん)

買いやすい、手に入れやすいことは同人にとって必ずしもプラスじゃないんですよね。同人には一期一会みたいなもの、「今ここで買わないともう会えない」という観念が強くあります。同人誌って重版なし、売切御免、ということがザラにあるので。

(アキバBlog geekさん)

 

 要するに、作家さん側からすれば、“本を自分で作る”という体験が、ファン側から見れば、“即売会で宝探しをする”、“好きな作家さんと交流する”といった体験が、そのまま「同人」の魅力となっている、と。

 加えて、最近の同人誌って、むちゃくちゃ装丁やデザインが凝っている作品も数多く頒布されているんですよね。電子化すれば、その魅力が半減しかねないし、どこか“コレジャナイ感”が出てくるかもしれない。

 

 でも他方では、先程も書いたように、小説・批評系の同人誌に関しては、電子書籍との相性が良いように感じますし、実際、KDPでも出版されているものもある。

 こうして改めて考えてみると、他の創作系、ニッチジャンルのオリジナル作品は、しばらくは電子化が進まないのかなー、と。何かそれっぽい流れができれば、トントン拍子で進むようにも思いますが。今はまだ、電子化の作業が増えるだけだし、望む形で頒布できるかも怪しい。

 

 個人的には、「せっかく丹精込めて作った作品があるのに、そのまま読めなくなるなんてもったいない!」と考えてしまうので、徐々にでも電子書籍の波が広がればいいなー、とは思います。過去作品とか。黒歴史だっていいじゃないですか!僕は公開しないけど!

 

今回、今までと違ったのが。

 

twitterで電子書籍についてやりとりなどしている方がきてくれて雑談できたのが楽しかったし、購入していただいて嬉しかったこと。

また、kindleで読んで面白かったので他の作品も読みたいといって、わざわざ来てくれて、購入いただいたかたがいらっしゃったこと。

 

同人誌即売会と電子書籍の個人出版がリンクしてきたなあ、と実感できた。
1が10になるのは簡単だけど、0が1になるのは大変。今回の文学フリマでは0が1になったのかなあ、と。個人が使えるチャンネルでも広がりが期待できると思った。

第17回文学フリマで電子書籍の実感 :: ひまつぶし雑記帖

 

 このような話もあるようですし、「電子書籍」が選択肢のひとつとして採用されることで、「同人」の可能性もうまく広がるような流れができれば、ベストなのではないかしら。

 

 

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