ぐるりみち。

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監視社会よりも怖い、ネットの匿名性『U Want Me 2 Kill Him?』

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 ネット、やばい。マジ、こわい。

 

 釣りとか成り済ましなんてチャチなもんじゃあ、断じてねえ。
 もっと恐ろしい匿名性の闇の片鱗を味わったぜ……。

 

 ――というわけで、観てきました。映画『U Want Me 2 Kill Him?』(ユー・ウォント・ミー・トゥ・キル・ヒム)。興味本位で映画館に足を運んだのですが、これは観に行ってよかった。

 

※冒頭のネタバレ有。展開はぼかしてます。

 

『U Want Me 2 Kill Him?』ってどんな作品?

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 あまり洋画は劇場まで観に行かない僕ですが、あらすじを観てちょっと気になったので。以下引用。

 

2003年にイギリスで実際にあったインターネット犯罪を映画化したサスペンスドラマ。

高校生のマークは、チャットで知り合った年上の女性レイチェルに恋をする。レイチェルはケビンという恋人から虐待を受けており、ある日、マークの前から姿を消してしまう。やがてレイチェルの弟から「姉が死んだ」と知らされたマークは、ケビンの仕業だと確信し、復讐を計画。

ところが、ケビンをおとりにテロリストを追っているというMI5(英国諜報部)のエージェントがマークに接触してくる。エージェントを本物だと認識したマークは、MI5からある人物の殺害依頼を受けるが、その標的は親友のジョンだった。

U Want Me 2 Kill Him ユー・ウォント・ミー・トゥ・キル・ヒム : 作品情報 - 映画.com

 

 00年代の初期のインターネットが密接に関わってくる、しかも「実話」を元にしたという文句に釣られました。ならば行くしかあるめえ。わたし、気になります!

 

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 主人公は、天然パーマでイケメンの高校男児、マーク。サッカーで人気だわ、かるーく女の子に手を出すわ、こんちくしょうめが! と突っ込みたくなるリア充である。

 そんな彼だけれど、家に帰ると、いつもチャットで話すレイチェルに夢中。「私のこと、どうしたい……?////」と挑発してくる彼女にお熱で、ビデオ通話にして自慰行為を見せつけるレベル。チャHだ! ネット初期のチャHだよ! これ!

 ところがどっこい。ある日、レイチェルは恋人から虐待を受けていると言い、「弟のジョンをお願い」と残して、連絡が取れなくなってしまう。マークはジョンと親しくなり、2人でゲーセンに行ったり、いじめっ子を撃退したりと楽しく過ごすが……。

 

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 レイチェルがアパートの屋上から飛び降りたという報せを聞いて、物語は動き出す。

 

良い意味で期待を裏切られた、想定外の結末

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 映画の冒頭部分で明らかにされているので、書いてしまいますが、最初のシーンから、思っていたのとは違う展開だった(※以下、冒頭約5分のネタバレがあります)。

 

 まず、映画は主人公のマークが逮捕されるシーンから始まる。病院の集中治療室で治療を受けるのは、彼の友人であり、レイチェルの弟であるジョン。

 「あれ!? 襲われるのは、マークがお熱なレイチェルの恋人じゃないの!?」とびっくり。マークが凶行に及んだ相手は、親友のジョンだった。

 

 この時点で、何らかの意図が裏で蠢いているんだろうなー、とは想像した。これは……アレだ! 死んだと見せかけて、姉のレイチェルが黒幕、真犯人のパターンや! などと。

 実は「想像を超えた展開」というレビューを見かけていたので、予め自分なりに見通しを立ててから観に行ったんですよ。先に挙げたような、レイチェルによる自演説とか、諜報部のエージェントは嘘っぱちで、誰かが成り済ましているとか。あるいは、マークによる被害妄想だとか。

 

 物語の展開を追っていて感じたのは、マークが『ひぐらしのなく頃に』の主人公っぽいな、と。

 親しい人間の死によって、強い殺意と疑念を抱き、壊れ、徐々に凶行へと向かっていく様子が、まさに『ひぐらし』の展開を彷彿とさせたので。だから、「実は妄想なんじゃね?」と。

 

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 結末は、僕の想像の斜め上を行ってました。

 

 ただ、言われてみれば、「なんで思いつかなかったんだー!」と叫びたくなるようなものでもあり。割と本気で驚いた、というか笑った。そうくるか!と。

 “実話を元にした作品” 、というバイアスに歪められた感じは否めない。そういう展開はあるかもしれないけど、「いやいや、まさかそんなことやる人が現実にいるわけ……ええええええ!?」ってな格好で。

 どこまでが事実なのかは分かりませんが、とんでもないことを実行に移す人が10年も前にいたのだなーと。某ゆうちゃんも真っ青やで。 “事実は小説よりも奇なり” とはよくいったもんだ。

 

「監視社会」よりも怖い、ネットの匿名性

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 物語が進む中では、「いつも誰かに視られている」「いつも誰かに聴かれている」といった意味合いの言葉が、所々で挿入される。それが、主人公の疑心暗鬼を強めていく役割を持っているのだろう。

 

 本作品が示しているのは、そのような「監視社会」よりもヤバいもの。四六時中、個人の行動を見て聞いて、それがデータとして残ること。それよりも、怖い、なにか。

 ネットの匿名性をもってすれば、人の意志すら意のままに動かせるという恐ろしさ。それは、昨今見られる、不特定多数に流され、大衆の世論が形成されるといったものではなく、もっと小さなコミュニケーションにおける問題点。匿名って、やっぱり怖いのね。

 

 どの情報が正しいのか。
 誰を信じればいいのか。
 ソースは? そうだと確信できる?
 ――そもそも、その人は、本当に、この世に存在する人なの?

 

 見えない相手――匿名の誰かを信じることの恐ろしさ。もう何年も、10年以上もネットに親しんできた僕らからすれば、何を今更、な問題提起だけれど。でも、やっぱり……うへえ。

 そんな「ネットの匿名性」について、再考させられるような作品でした。いやはや、ひっじょーにおもしろかったです。

 

 

 

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