ぐるりみち。

平成生まれのフリーライターのブログ。本・映画・マンガ・アニメの各種レビューに、旅行・グルメ・街歩き日記など。

「考えさせられる作品」を好む人、嫌う人

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photo by Mountainbread

 

 徹底的な「娯楽性」のみを求めるか、付加価値や「気付き」を求めるか。

 

「考えさせられる作品」

 映画や小説、ドラマやアニメ、広い意味での物語作品のレビューや感想を見ていると、「考えさせられる」と作品の評価が、たびたび目に入る。

 メッセージ性の強い物語に触れたときや、作品から何らかの気付きがもたらされたとき。笑いや感動といった単純明快な感情とは別の、言葉では説明のしづらい想い。「よくわからないけど、心を揺さぶられた」「どういうことなのか、自分で考えたくなった」そんな感じ。

 

 もちろん、これだけでは何の意味もない感想だ。「考えせられた!」だけでは、どのように考えさせられたのかが分からないし、実際に、その人が何かを考えるに至ったのかが読み取れない。

 試しに検索してみたところ、こちらの記事が見つかった。厳しい言い方だけど、ほぼそのとおりだと思う。感想に具体性を持たせるのは難しいけれど、それでももうちょっと踏み込んで語ろうとしてもいいんじゃないかな。いやー、考えさせられますねー*1

 

 「考えさせられる」という作品評は、アニメで言えば『新世紀エヴァンゲリオン』に端を発する、いわゆる「セカイ系*2の作品群に多いような印象がある。

 「セカイ系」そのものの定義が諸説あるので何とも言いがたいけれど、キャラクターの心の機微や関係性を物語の中核に据えつつ、彼ら彼女らの変化が、狭くはコミュニティや社会、広くは世界に影響を及ぼすような――そんな作品のことだと言えると思う。

 つまるところ、「考えさせられる作品」とは、「なんかよくわからないけど、印象的な、心を揺さぶられる作品」や「自らの生活に関係のあるテーマやメッセージ性を含んでおり、気付きを得た、意識させられた作品」のことと言い換えられるのではないだろうか。

 

わけわからん、めんどくさい、つまらない

 そのような作品には熱狂的なファンがつきやすい一方で、それらが苦手だ、という人もよく見かける。ネットのレビューを見ると、「つまらない」「よくわからない」「面倒くさい」といった否定的な意見が目に入ることは決して珍しくない。

 例えば、『エヴァンゲリオン』はもう20年も続く人気コンテンツだが、熱狂的な信者と同様に、否定的なアンチも相当数が存在している。否定的な理由としては、話の未完成っぷりやキャラクターへの嫌悪感など、さまざまなものがある。

 だけど、もっと単純な話、その「訳のわからなさ」を受け入れられるか否か、という部分が基準になっているとは考えられないだろうか。テレビ版放送当時、自分が子供のころの印象としても、エヴァが好きなのは「なんかよくわからんけど心惹かれる」人で、嫌いな人は「訳がわからんからつまらん」と言って、他のロボットアニメを見ていたようなイメージが強いので。

 

 一方で、人間関係について密に焦点を当てたり、人の生について語ったりするような物語に関して、「つまらない」「めんどくさい」と苦手意識を持っている人もいる。

 例えば、『人間失格』や『こころ』といった文学作品。登場人物に感情移入ができる人ならば、 “考えさせられ” ながら読み進めることができるが、そうでない人にとっては苦痛でしかない。仮想のキャラの心情に興味なんて持てないし、物語展開がよほど劇的で魅力的でなければ、最後まで読み切ることは難しいと考えられる。

 

 最近のアニメや小説の感想を見ていても、そのような人は少なくない。キャラクターの性別に関係なく、恋愛や人間関係でうまくいかずに不和が生じている展開を見ると、「こいつめんどくさい」「理解不能」といった突っ込みが降り掛かるように見受けられる。

 未完成な登場人物、うじうじしている主人公など、自分の思うように動かないキャラクターに対してやきもきする気持ちはわからなくもない。……けれど、そういった人間模様が大好物な自分としては、「そこまで忌み嫌わなくても……」と思ってしまうのだ。

 

物語にどこまでの「エンターテインメント」を求めるか

 「考えさせられる作品」が好きか嫌いか。そこで好みが分かれるのは、物語作品に求めるものの違いによるものだとも考えられる。

 「考えさせられる作品」が好きなのは、人間関係や考え方、他人の心の動きが気になる人、そういった事象に対して普段から感心を向けている人。嫌いな人は、物語作品はあくまで娯楽であって、自らの日常に関わってくるような要素は必要としていない人。――そう言えるのではないかしら。

 

 映画にせよ、ドラマにせよ、小説にせよ、アニメにせよ、漫画にせよ、それら物語作品は「娯楽」であって、基本的にはそれ以外の何物でもない。そこに芸術性や文化性を見出すことももちろんあるが、それを消費する大衆にとっては、まず第一に「娯楽」としての役回りがある。

 しかし、一口に「娯楽」と言ってもその嗜好は人によってさまざまで、好みとマッチしない場合は多々ある。「恋愛モノが好き」だからと言って、その人がすべての恋愛物語を等しく好むとも考えられない。

 男女1対1の純愛モノが良いのか、エ口要素も含む濃密な関係が読みたいのか、三角関係、もしくはそれ以上の多角関係のドロドロ展開が見たいのか。同ジャンル内においても各々が求める要素は異なってくるし、どれを「考えさせられる」または「めんどくさい」と感じるかは人それぞれだ。

 

 物語作品において、正義と悪がはっきりしていたり、起承転結が明確だったり、入り組んだ人間関係を含んでいなかったり。余計なことを考えず、最後まですっきりと読める、観られる作品を好む人。

 正義とは、悪とは何ぞ、と問いただしたり、最後にびっくり仰天の超展開が待ち構えていたり、複雑な人間模様がエッセンスとして取り入れられていたり。メインの物語とは別に、または同時進行で、よくわからない、考えさせられる作品を好む人。

 

 どちらがいいという話ではなくて、物語が多種多様であるように、それに触れる読者・視聴者側にも、いろいろな受け取り方があるということ。当たり前と言えば当たり前のことではあるけれど、なればこそ「他人の感想を読むのが好き」という僕のような人間もいるわけで。

 自分とは別の視点による気付きを得ることもあるし、レビュアー本人の人柄も見えてくるので、読んでいておもしろい。物語に求めるものの違いによってもまったく違った観点の感想を知ることができるため、それは最高に刺激的で興味深い体験となる。

 「娯楽は娯楽」と割りきって楽しむのも悪くはないけれど、いろいろと考えるのが好きな自分は、これからも「考えさせられた」を話していきたい。そして、1人で「考えさせられたわー」と満足するよりかは、他人と何を「考えさせられた」かをシェアしていければ、もっと楽しいと思う。

 

 

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*1:ブコメの“「いままで何も考えてなかったけど、考えなきゃいけないと思った(まだ考えていない)」の省略形”になるほど、と

*2:セカイ系 - Wikipedia